1-4
めでたくご友人の許可が出たそうで、私は桐島君と二人きりの下校に備えていた。
まず、陽子に「今日ごめん、一緒に帰れなくなったー」と伝えた。陽子は「あとで報告してよね」とニヤニヤ笑って人差し指と親指を立てていた。相手のハートを射抜け、という意味だろうか。
次に、どんな話をしようかとセリフを考える。恋する乙女は孔明もびっくりの策略家なのだ。
下校イベント。これは学生の恋愛において、最重要ポイントの一つだ。下校イベントのない少女漫画なんて読んだことがない。もちろん少女漫画なんて陽子に借りた何冊かしか読んだことはないが、重要なのは間違いない。
不良に絡まれてるところを助けに来てくれる、なんていう非現実的なイベントはリアルで起こるはずがないのだから現実的に、そして堅実に、好感度を積み上げていかなければならない。
しかし問題は、どうすれば好感度が上がるか、ということだった。
授業終了のチャイムが鳴り響き、担任が気だるそうに帰りのホームルームを済ませる。
うちの担任はホームルームが短いところも素晴らしい。廊下や通学路が混みだす前に帰れる。
「じゃあ、いこうか」
いつもの淡泊な声で、桐島君は私に言った。気分はまるでお城に誘われるシンデレラだ。
私は弾みそうになる声を抑えて、「うん」と小さく頷いた。
二人きりの帰り道。どこを見たらいいかわからない私はあたりの風景に目をやった。
新緑の季節。桜が散り、木々が青い葉をつける。少しだけ熱気を持った風が坂道を吹き抜ける。普段は気にも留めないが、恋をすると景色が違って見えるというのはこういうことを言うのかもしれない。
私は自転車を押す手にぐっと力を入れた。
お読み頂きありがとうございます。
感想やアドバイスなど頂けたら嬉しいです、
よろしくお願いいたします。




