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「それ、あいつがつくってるんだよね?」
昼休み、私は意を決して桐島君に話しかけた。今日の午前中、起きている時間を総動員して考えた、渾身の一言目だった。
「俺の家、共働きなんだ。親から昼飯代はもらってるんだけど、毎日出来合いの物だと飽きちゃって。そんなこと言ってたら、あいつがつくるって言ってくれたんだ。毎日弁当つくるの大変だろうに。どうせ自分の分もつくるからって言ってさ」
桐島君はとても饒舌に、ちょっと嬉しそうに答えてくれた。
きっと布施は、素っ気なく、
「どうせ自分の分もつくんなきゃいけねえから同じだよ。気にすんな。コンビニ弁当ばっかじゃハゲるぞ」
とか言ったんだろう。
桐島君の横顔を見ていたら、そんな布施の姿がぼんやりと浮かんだ。
今日の桐島君のお弁当箱は黒色だった。そう言えば昨日は青っぽいやつだったはずだ。二人は毎朝会っているけど、毎晩は会っていないっていうことだろうか。
そんなことをふとした拍子に詮索してしまう自分が嫌になって、私はバカみたいに頭を振って、要らない考えを追い出した。
しかしどうしても心は言うことを聞いてくれない。私が桐島君を好きだということを、布施は喋っていないだろうかと今度は心配になってきた。もちろん今さら桐島君に私の気持ちを知られたってどうしようもないのだが。
授業中、そんなモヤモヤを私が何とかやり過ごしていたら、
「おい、田中、斉藤、お前ら授業中だぞ、どんだけ仲良しなんだ?あー、お前らそっちなのか?」
という教師の声が頭に響いた。途端に教室に笑い声が起こる。
私も、少し前までなら一緒になって笑っていた。でも今は笑えなかった。目の端でこっそり桐島君のほうを窺うと、いつものように穏やかに笑っているのが見えた。
その笑顔が自分に向けられているようで、途端に胸が苦しくなる。八つ当たりだとはわかっていたが、先生の顔をむすっとに睨み付けることしかできなかった。




