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第6噺「戦場で最も多くの人間を殺し、単独での竜討伐数が大陸一の魔法使いである、あの」 「そうーー、あの殺戮人形だ」

 イングラード帝国領内、プリエラ村。

 帝国内でウェール王国に最も近い場所に位置するその村は近年、過疎化が進み去年には遂に住民数が100を切り、普段は活気などと言う言葉とは縁遠い程に静かな場所だ。しかし今日は何時もと大分様子が違う。村中には大勢の人間が往来し、周囲には200を越えるテントが張られいまだかつてない活気に溢れ返っていた。


 そんな異常でしかない外の状況とは逆に、無数あるテントの中でも一際大きなテントの内部、そこは喧騒とは程遠い何処か重々しい空気だけが内部を支配している。

 半円状に並んだ椅子に座っている四人の男女、左から


 まるで尋常外に隆起した筋肉を見せる事を拒む様に、頭部を除いた全身を覆う鎧を身に纏う巨漢の男性。


 2mを越える長身で引き締まった細身の肉体を持つ、何処か飄々とした印象を受ける男性。


 視線だけで人を殺せるのではないかと思える程、獰猛な瞳で炎のように真っ赤な髪を靡かせる重装備の女性。


 凛々しく端正な顔立ちでありながら、一切の表情を表に出していない四人の中では最も軽装備な女性。


 一見統一感の無い四者四様の出で立ちだが、一つだけ彼らに共通しているものがある。

 それは四人が身に纏う服や防具だ。白を基調として所々に青のラインが入っているという、戦闘服にしては些か清涼感すら漂うそれは珍物であると言えるだろう。


 四人は呼び出されこのテントに集まったのだが、全員揃っても呼び出し主は現れずかれこれ十分程、誰一人喋る事無く沈黙を貫いている。

 それによって生まれているこの重々しい空気に耐え兼ねたのか、真っ赤な髪の女性、リーダリア・ティンゼンティが口を開く。


「あー、今回の私達の任務はウェール王国領土にある世捨て村の制圧で良いんだよな?」

「違う。その村に逃げ込んだ元帝国兵共の粛正だ」


 誰に聞いた訳でもないリーダリアの言葉に、やや食いぎみに返答したのは巨漢の男性、ヴァンバッハ・フェリトリフェだ。


 投げ放った釣り針に堅物と称されるヴァンバッハが引っ掛かった事にリーダリアは思わず顔をしかめる。「お前じゃないんだよ」という言葉を込めた視線を向けるが、真面目過ぎるそのオスゴリラは気に止める事なく次のワードを放出する。


「貴様が言った事はあくまでもののついでだ。優先すべきは村にいる元帝国兵を皆殺しにする事だ」

「そりぁ表向きは、だろ?そんなもんは今回の件について王国側に説明する時の言い訳でしかないって、昨日副団長が言ってただろうが。そんな事も覚えて無いのか脳筋野郎」

「・・・何だと?」

「おいおい勘弁してくれよ。こんなにも近い距離で話をしてるのに聞こえてないのか?歳のせいでついに耳が遠くなったのか?それともご自慢の筋肉が耳の中でも隆起し始めて、鼓膜が押し潰されてのんか?」

「貴様、俺に喧嘩を売っているのか?」

「お前は質問する事しか出来ないのか?言語理解する能力は皆無なのか?言外に死ねよ、ゴリラーマンと言ってるのが伝わんねえのか?」

「貴様、表に出ろ」

「やだね。人語を多少理解出来ているとはいえ、戦う事しか思考出来ねえ知性の欠片も無い巨大猿なんかと、じゃれあってる時間など私には無いからな」


 放つもの全てに敵意と嫌悪感しか含まれていない言葉を、リーダリアは隠す事なくヴァンバッハにぶつける。それを受け額に青筋を浮かべるのは人として当然の反応なのだが、「おっ、暴力振るうの?口で勝てないからって、力で解決しようとしてんの?流石ゴリラ」と言わんばかりの顔をされ、口論しても勝てない、殴ったら別の意味で負けると分かっているヴァンバッハは強靭な自制心をもって、余りにもあんまりな言われなき悪意に両拳を血が出る程強く強く握り締め耐える。


 明らかに最初より空気が悪くなり、何時それが決壊してもおかしくない状況になってようやく細身の男性、フォルゲン・アルカルアが火花を散らす二人の仲裁に入る。


「まぁまぁ、二人共一旦落ち着きましょう」

「これ程までに侮辱され落ち着ける筈が無いだろう」

「その気持ちは分かりますが、兎に角冷静に。リーダの言う事にいちいち反応していたら身体が持ちませんよ?それに彼女は怒るヴァンを見て楽しんでいる節がありますし、心を乱すのはどう考えても失策です」

「しかし」

「しかしも何もありません。一般兵は部隊長である僕達を見て育つのですから、ヴァンがそんな簡単に怒るのは良ろしくありませんよ」

「はっ、怒られてやんの。流石、手間の掛かる野猿だな」

「はいそこ、喜ばない。それとリーダは少し、いえ最も口を慎みなさい。その勝ち気な性格には戦場で幾度となく助けられているので止めろとは言いませんが、平時の時ぐらいは抑えて下さい。所構わずそれを撒き散らすのは子供がやる事と同じですよ」

「ふん、貴様は子供だそうだ」

「はい、いちいち口を挟まない。リーダ、そんな事ばかりしていると何時か周りが敵だらけになってしまいますよ?そうなると困るのはあなただけでなく、仲間である僕達も被害を被る訳ですから、自重して下さい」


 優しく諭す様に怒るという器用な事をするフォルゲンにそう言われ、こんな時だけ二人は仲良くバツの悪い顔をする。


「分かりましたか?」

「・・・了解した」

「・・・わーたよ」


 最後に若干きつめの声で返答を求められ、反省の色を見せつつ渋々ながら二人は言葉を返す。

 そんな何時もの光景(リーダリアの心無い言葉にヴァンバッハがわざわざ反応し、噴火まで後一歩という所でフォルゲンが仲裁に入る一連の流れ)を「飽きずに良くやるなぁ」と軽装備の女性、ララリス・ストラトスは我関せずという風に無表情で眺める。


 何だかんだでテント内に漂っていた重々しい空気が緩和された事で、四人は張っていた緊張を解き始める。

 そう皆、緊張していたのだ。ある者は激しい憤りを抱き、ある者はかつて友だった者の事を思い、ある者は強者と戦える事を喜び、ある者は言い表せない複雑な感情を胸に秘め、今回の作戦に臨んでいる。


「なぁ、疑問に思わなかったか?」


 唐突にリーダリアがそんな事を言う。お前のその発言に疑問を抱いたよ、と三人は眉を細める。


「世捨て村って住人は百程度しかいないんだろ?しかもその内戦えんのは約半数の五十人ぐらいらしいじゃねえか。いくら何事にも万事を尽くす帝国と言えども、そんな連中を相手にするのに一個騎士団を向かわせるのはおかしいだろう」


 帝国には十二の騎士団があり、一つの騎士団の構成人数は約三百人だ。ここにいるリーダリアや他の三人も当然その騎士団員で、部隊長というそれなりに地位の高い役職につき各々が五十人程の部下を持っている。

 その上にはもちろん団長、副団長がいる訳だが、一部隊の長を任される彼らはかなりの実力を保持していると言えるだろう。だからこそ、リーダリアは納得がいかない。


 たかだか五十人を相手取るのに一個騎士団、つまり三百人もの戦力をぶつけるのは些かどころか、かなりやり過ぎと言える行為だ。ゆえにリーダリアは疑問というより、最早不満に近い言葉を洩らす。


「私の部隊だけで・・・ってのは流石に無理だろうけど、フォルとララの部隊も合わせた編成なら十分勝てるだろうが」


 任務後に「敵が弱かった」等と愚痴を洩らす事はよくあるが、任務前から不機嫌さを顕にするリーダリアは珍しい。何時も嬉々として戦場に向かう彼女にそんな感想を抱きながら、「何故サラッと俺を外したんだ」と嫌味無く至極自然に仲間外れにされたヴァンバッハは何とも言えない顔になる。


 あれ程辛辣な言葉を投げ掛けられ激怒していた彼が、意外にもショックを受け肩を落としているのを横目に、フォルゲンがその不満に答える。


「確かにリーダの言う通りですよ。・・・普通なら、ね」

「・・・その言い方だと、まるで世捨て村は普通じゃないって言ってる様に聞こえるな」


 フォルゲンのその意味深な言葉に、今度はリーダリアだけが眉を細める事となる。

 するとそんな彼女を見て、今まで沈黙を貫いて来たララリスが、


「リシュン・アレメルリオ」


 と呟く。表情を変えぬままに、唐突に口を開いたララリスに驚きリーダリアは思わず彼女の方を見る。視線が向けられた事を横目でチラリと確認したララリスは、坦々と機械的に尚も言葉を発する。


「レイネル・アインローリー、グレン・ソルニックス、クロウス・ベルバドム。・・・少なくとも、あの村には四人の化け物がいる」

「なっ!?」

「私とフォル、リーダの三部隊だけでは荷が重過ぎる。だから、一個騎士団・・・蒼天騎士団全員に今回の任務が与えられた」


 紡がれたその事実を前に、リーダリアは驚き困惑を隠せない。

 誰が予想出来るだろうか?平行する二つの山脈の間に位置するこれと言った特徴の無い小さな小さな村に、一戦級と言っても過言ではない実力者達がいる事など。


 レイネル・アインローリー。おそらく彼女の名を知らない者など、この大陸にはいないだろう。『雷帝』の異名を持ち、叶う筈の無い夢と決して折れる事の無い信念を掲げ、幾多もの戦場を渡り歩き、その手で誰一人殺す事無く勝利を掴み続けた元独立魔導局『無限光』所属の魔法使い。


 グレン・ソルニックス。魔法に関わる者達から『死神』と畏怖され、狙われたらその姿を確認する前に死ぬとすら言われる程の卓越した暗殺技術を持ち、見た目とは裏腹に「柔の極地」と絶賛される剣術を使い、真っ向勝負においてもその実力を遺憾無く発揮するスコトリア共和国の元傭兵。


 クロウス・ベルバドム。戦線から離脱してもう数十年と経つが、当時は高い耐久性と一撃の馬鹿げた重さを武器に、自らの肉体が傷付く事などいとわず単身敵地のど真ん中まで突貫するという、とてもじゃないが戦術とは言えないかなり強引な戦い方を好んで選び、自身の血と大量の返り血を身に纏って帰還する事から『赤鬼せっき』と呼ばれていたウェール王国の特殊部隊所属の元兵士。


 そして、


「リシュン・アレメルリオ、・・・彼の事は当然知っていますよね?かつての紅玉騎士団団長にして、元帝国最強の魔法使いです」

「戦場で最も多くの人間を殺し、単独での竜討伐数が大陸一の魔法使いである、あの」

「そうーー、あの殺戮人形マーダードールだ」


 フォルゲンの問い掛けに困惑しながら出したリーダリアの解を、凛とした声が割り入り遮る。

 テントの外から発せられたそれを聞き、四人は思わず驚く・・・事無く、そこにいるであろう人の顔を瞬時に思い浮かべ直ぐ様椅子から立ち上がり、背筋を伸ばし敬礼する。その直後、何とも良いタイミングで入ってきたのは何処と無く奇妙な二人組だ。


 腰にまで到達した光沢のある長い髪、無邪気なという言葉が良く似合う顔立ち、軽装処か防具を何一つ着けていない上に大胆と肌を露出させた服装、全体的に活発で明るそうなイメージを植え付ける女性。


 身嗜みってなんだと言外に言う寝癖を直していない頭髪、お手本の様な完璧な微笑みの仮面を張り付け、くりっとした瞳と真ん丸とした顔の造形はとても成人した者のそれでは無く、意図せずしてあまりに小さな体格と相まってどう見ても子供にしか見えない男性(?)。


 ちょっとそこまで買い物に行ってくる的な空気を身に纏い、テント内に充満する緊張感ある雰囲気を見事にぶち壊しながら歩く凛とした声の持ち主、ゼタニア・カリフォリカは、入って来るなり直立不動の四人を見て整った顔を歪め台無しにする。


「はぁ、お前らのその従順っぷりは尊敬に値するが、私には気楽に接しろと言った筈だが?」


 不機嫌さを隠さずゼタニアにそう言われ、四人は「んな無茶苦茶な」と揃って叫ぶ。・・・声に出さずに心の中で。困り果てた彼らを見かねた小柄な男性、ティオルフ・ジングンジが怒る彼女を宥める。


「いやいや、無茶言って彼らを困らせたら駄目だよニア」

「何故困る。この中では私が一番若輩者なんだぞ?年上に対してなら分かるが、自分より年下の小娘ごときに敬意を払う必要など何処にある」

「確かに君が一番若いけれども・・・。ニアはここの、蒼天騎士団の団長なんだよ?上司に対して気楽に馴れ馴れしく接するのは無理だよ」

「私はお前らより地位が高い。だが、経験の浅い未熟者でもある。つまりチャラだろう?」

「何でそうなるのさ。実力も素質も自身より格上の人を敬う気持ちに、そもそも年齢は関係無いよ」

「理解出来んな」

「うん、しなくていいよ。そういうものだと思ってさえいてくれれば」

「副団長のお前は良くて、部隊長の四人は駄目なのか?」

「そこ?本当は僕だって敬語とか使いたいよ。部下に対して示しがつかないしね。でも、そうしたら君が怒るだろう?」

「当たり前だ。幼馴染みであるティオにまで他人行儀を振るわれたら、悲しみと怒りの為に発狂するぞ」

「君の中ではどれ程年齢に比重を当ててるの?そんな事で発狂しないでよ」

「地位より大切な物があると私は思う」

「良いこと言っただろ?的な顔してるけど、今の状況ではただの異常者発言だからね?」


 そんな何時もと変わらない、とてもこれから戦場に赴く者の会話とは思えないリラックスムードを拡散させる上司達を見て四人は思う。


((((今日の団長も、いつも通り狂った方に平常運転してるな~。そして副団長、何時もありがとうございます))))


 何処までも自由奔放なゼタニアに呆れ感心し、あやし続けるティオルフに感謝する。そんなヴァンバッハ達が所属しているこの蒼天騎士団は数年前に新設されたばかりのもので、かなり異質なものになっている。


 ゼタニアが先程から口煩く言っている年齢に関して言えば、上からヴァンバッハ、フォルゲン、リーダリア、ララリス、ティオルフ、ゼタニアの順になる。しかし騎士団内での地位の高さになるとゼタニア、ティオルフ、他四人は同列とほぼ逆順になってしまう。


 如何に実力主義の帝国と言えども、ゼタニア程若い団長は他にいない。

 それもその筈、あのリシュン・アレメルリオですら十八歳でようやく団長になったと言うのにゼタニアは五年前、当時まだ騎士養成学校に通っていた時に偶然来校していた皇帝陛下にその実力を見出だされ、十六歳という若さで騎士団団長に抜擢されたのだ。


 当初ヴァンバッハ達はゼタニアに対して、そのあまりの年齢の低さに、実戦経験が一度も無い事に、初めて顔を合わせた時に見せた幼さ残る彼女の笑顔を目にして不安を抱かざるえなかった。


 この子で本当に大丈夫なのだろうか?・・・と。


 しかしその不安は直ぐに霧散する事になった。

 ゼタニアが初任務を文句の付けようがない程、完璧にこなしてしまったから。遺憾無くその圧倒的な力を爆発させる彼女に魅せられてしまったから。


 ゼタニアの倍近い人生を送っているヴァンバッハは同期の者から、「よくそんな小娘の下でやっていけるな」と馬鹿にされる事が多々ある。だが彼はその言葉に怒りを覚えた事も、気にした事も、ましてや自身より遥かに若いゼタニアが団長であるのに不満を持った事など無い。それはフォルゲン、リーダリア、ララリスの三人も同じだ。


 今は部隊長という地位になってはいるが、四人の実力は他の騎士団の副団長と同等の強さを保持している。そんな彼らを黙らせ、納得させれるぐらいにゼタニアの力は逸脱したものだから。


 そしてティオルフの存在もまた特殊だ。彼はゼタニアから遅れる事二年、元々は別の騎士団に所属していたが二十歳になったのと同時に、蒼天騎士団の副団長に就任した。

 周囲の者は「ゼタニアの幼馴染みである」というコネを使ったと噂しているが、それは事実で無い。何故なら彼は団長になってもおかしくない程の力を持っているから。しかし、その事を知っている者は少ない。


 フォルゲンは昔、実力を隠すティオルフに何故その様な真似をするとかと聞いた事がある。その時ティオルフは、


「実力を知られたら他の騎士団に、異動する事になるかも知れないからね。そうなったらニアの面倒を誰が見るのさ。彼女の暴走を止めれるのは僕ぐらいだよ?」


 そう言って嘆息しながら笑っていた。遠回りにゼタニアが心配だと言うティオルフに、フォルゲンは思わず驚いた。そんな理由で団長の座を蹴るなど、自分では考えられない事だったから。


 そんな事実上、団長格二人と副団長格四人もいる蒼天騎士団が、化け物が四人もいると知った上で今回の任務を命じられたのに不満を持っている者が一人。


「しかしリーダ、まさかお前も私と同じくこの任務に乗り気じゃないとはな。如何にリシュン・アレメルリオ共が強者であったとしても、所詮は過去の栄光でしかなく戦線からどれ程の期間離脱していると思う?その様な連中に、今なお成長し続けている私達が負ける要素などある訳無いのにな」


 実に面白く無いと子供の様にいじける我等が団長様だ。同意を求められたリーダリアは、敬礼した姿勢のまま目線だけで「ですよね~?」と返答する。


 二人の気持ちも分からないでも無い。リシュンとレイネルは八年前、グレンは十七年前、クロウスに至っては三十一年前に戦場から姿を消している。たとえ英雄と呼ばれた者達であっても、それだけの時間を戦士として無駄に過ごしたのであれば相当に力は落ちる。だが、


「そうは言ってもやはり軽視するのはマズイでしょう。クロウス・ベルバドムは数年前まで魔法学校アカデミーの教官をしていましたし」

「グレン・ソルニックスは傭兵としての活動は休止していましたが、暗殺者の仕事は少ないですがいまだに受けているようです」


 フォルゲン、ヴァンバッハが好戦的で弱者と戦う事を嫌がる上司と同僚に釘を指し、その横では我関せずとララリスがぼんやり虚空を見つめている。

 慎重派と過激派と無関心派と、全くもって纏まりの無い幹部達に「勘弁してよ」とティオルフは頭を抱える。


「はいはい、仲間同士で争い合うのはそこまでだよ」


 押し寄せる不安の津波を振り払いティオルフは手を二回叩いて、火花を散らす眼前の馬鹿共に注意を促す。優しい口調ながら少しの怒気と苛立ちが含まれたその声に、五人は身体をブルリと震わせ即座に姿勢を正す。子供な見た目からは想像出来ない程に、怒るとえげつないお説教 (最早拷問に近い)をするティオルフの機嫌をこれ以上悪くするのは得策で無いと、奏でていた不協和音を力を合わせて美しいハーモニーへと変える。


「・・・じゃあ、今回の作戦を伝えるよ」


 ようやく本来の騎士団らしい空気になったのを確認したティオルフは、ゆっくりと理解力の低い者 (ゼタニアとリーダリア)にも分かりやすい様に話始めた。

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