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はじまりの村

「意味がわかりません」


鑑定で標示された唯一のスキルが


【自爆】


「使ったら死んじゃうし。てか死んでも使えないし」


ひきつった少年の泣き声が教会に木霊エコーした。




この世界の子供達は、思春期をむかえる10才から13才の頃に、スキルに目覚める。

どうして思春期までかかるかといえば、単純に能力の発動に体が耐えられないという自然の摂理である。


たまに生まれつきスキルを発動させる子供もいるが、そんな子はなまじ能力が優れているぶん暴走しやすく、最悪死にいたる。


例えば、泣く度に回りを発火させたり、無邪気にペットの首をもぎ取る怪力な赤ん坊を想像してみてほしい。


危険な鬼子とし、家族から隔離され「魔奴隷」として洞窟で育てられるが、実際は物心つく前に闇で処分されることが多い。


ごく稀に前世の記憶が残る転生者や転移者とかもいて、「勇者」や「神の代行者」として国や教団に迎えられることもあるらしいが、それはまた別の話。


通常、思春期を向かえた子供は、男の子なら体内でアンドロゲンが分泌され筋肉や骨が強化され、獲物を狩れるようになる。


女の子はエストロゲンが分泌され、体は丸みを帯び、骨盤が発達し子供を産める体となる。


同じように魔素をコントロールするホルモンが分泌され、DNAに刻まれたユニークスキルが発動するのだ。


その為、目覚めの兆候きざしがみられるようになると、教会で能力の鑑定が行われ。能力によって目指す進路が決められることになる。




「旅をしたい」「いつか、あの山の向こうへ行ってみたい」


それが、少年の夢だった。


少年だけではない。村の男の子の多くは、都に昇り戦場で手柄を立てて騎士や貴族になる事を夢見たり、秘境を目指す大冒険者や一攫千金のトレジャーハンターに憧れたりする。


能力に恵まれなければ、生まれた村から一歩も出ることなく、一生を終えることも少なくない。


そこには厳然たる階級社会と冷徹な能力主義が背景にあった。



「ルシフェル、鑑定はどうだった?」


少年の名前はルシアン・フェルメール。12才。

ルシアンは明かりを意味する名前、ルシフェルは旅の目印になる明るい星の名前だ。


いつも想像上の旅の話ばかりするルシアンに父親があきれて、明かり繋がりでルシフェルとあだ名をつけた。


教会の外でルシアンに声をかけたのは、2つ上の兄のジークと、いつも狩りに連れて行ってくれる兄の親友のフロイだ。


2人はもうすぐ村を出て冒険者になる。ルシアンも何年かたてば彼らを追う予定だった。

ジークもフロイもルシアンを可愛がってくれ、いつか一緒のパーティーを組むことを楽しみにしていた。


「・・・・・」


うつ向いて、涙をながすルシアン。


「そうか・・・残念だったな」


ジークが優しく肩をたたいた。


フロイも何か言おうとしたが、声にできなかった。


少年の旅は、旅立つ前に終わったのだ。それはジークやフロイとの別れも意味してた。


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