千葉編 その1 当たり前の世界
連載化始めます。
これから長らくよろしくお願いします。
こんな世界、ある程度のことして楽しめていれば、それでいいと思っていた。
あの時までは。
いたって普通。並大抵の生活を送る日々。地元高校に入学してそのまま卒業するはずだった。そこそこの給料の貰える仕事に就けるはずだった。
ただ1つ、母親が死んで、父親が行方不明だと言うこと意外は並大抵の高校生だった。
だからと言って別に生活に困ったことなんてない。いじめにも遭わなった。学校にも変わりなく通えた。でも、家庭というものは羨ましかった。叱られたり、家族で旅行したり、おいしいもの食べたり、家族に愛されたり、それが理想だった。夢見ることもあった。自分の家族を、楽しい家族旅行を。
そんな中、この養護施設にやってきたのが成瀬兄ちゃんだった。
成瀬兄ちゃんはここに新しく働くことになった21歳だ。以前、大学に行かないの? と聞いたら「僕はたくさんの子と思い出を作ることの方が好きなんだ」と言っていた。
僕は成瀬兄ちゃんと一緒に今までの時間を取り戻した。2人で食事もした。旅行にも行った。隣の県だけど。それでも楽しかった。いつしか僕達は家族みたいな関係になった。
それでも・・・・・、それでも、家族は羨ましかった。
成瀬兄ちゃんを家族と思えても、家族ではなかった。
僕は何回も泣いた。なぜ同じクラスの有馬にも拓にもきっと成瀬兄ちゃんにも家族はいるのに僕にはいないんだ。僕はなんなんだ。僕はなんなんだ!
そんなときだった。あの電話が掛かってきたのは。
文は読みやすく短めにしようと思います。