男にモテても嬉しくない!!
「はあ………………」
ついため息が出てしまう。
それもこれもあの夢が悪い!! 生徒会長の姿で乙女ゲーみたいな妄想を見せられたら「あれ、僕の頭おかしい?」ってなるじゃないか!
あぁ……このままだと胃痛で本当倒れそう。
というか、本当にお腹が痛い……何だ?
とりあえず用をたしにトイレへ行こう……。
「う~ん……この痛み、胃痛なのか? 検査した方が良いよね」
そう言いながらトイレのドアを開きトイレに座る…………がその時驚くべきモノが目に入った。
「――――」
声に出せなかった。なんと、ありえない程鮮血していた。
そして数秒後
「ぎ、ギャ―――――――――――――ッッ!!」
隣近所に響く夕夜の声がこだましたのだった。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆
「――――で? 朝から何大声出してんのよ……」
近所に迷惑かけたからかすこぶる機嫌が悪い姉に僕は泣きながら訴える。
「ね、姉さん! ぼ、僕はもう長くないかも……っ、じれないぃ~~~~!!」
「はあ?」
「あ、朝、トイレ行って見たら、血がドバァ―――っでぇ」
もう言葉にならない!
「………………」
「うっ……うぅ…………」
泣き崩れる僕に姉は近づいてきてこう言った。
「夕夜。それはね、女になったらもれなくなるものよ」
「…………うぇ?」
女性になったらもれなくなる? このものすごい出血が!? 出血多量で死んじゃうんじゃないかってくらいなんだけど!
「大丈夫よ女性は皆これを経験していくものだし。まあ貧血になる子もいるけど死にはしないから」
「そ、そうなんだ! 良かった…………」
姉が言うならそうなんだろう。なんせ姉も女性だし。
「ほら、夕夜生理の時の必需品をあげるから来て」
「わ、分かった!」
そして夕夜は姉の後を追って行った。
この時夕夜は動揺していたからか気付かなかった。
何故男の自分が生理になったのかを…………
◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆
「本当大変だった…………」
朝の出来事で疲れた僕は教室の机に突っ伏していた。
「夕夜、大丈夫? 寝不足?」
「あ、由梨ちゃん、由良ちゃん、おはよー」
今日は二人は朝から部活があった為別々に登校したのだ。
「「おはよう」」
うん、二人とも相変わらずピッタリだ。
「それで? 机に突っ伏していたけど具合が悪いの?」
由梨ちゃんが逃がさないというような視線で見つめてくる。
こうなったら逃げられないことは確実だ。
「あ~……今日の朝起きたらさ」
諦めて理由を話すことにする。……ただし、恥ずかしいので小声で話した。
「――――ってわけなんだけど……って何で二人ともビックリしているの?」
「何でって……」
「ねぇ…………」
二人はお互いを見て困惑している。
(? 何で二人が困惑しているんだろう……あ! そうか!)
「由梨ちゃん、由良ちゃん、大丈夫だよ」
「「え?」」
「ちゃんと姉さんにやり方は教えてもらったから、ちゃんと自分で出来るから心配しないで!!」
二人が困惑していたのは僕が対処出来るか心配だったんだろうと気づいたので安心させるように胸を張って言った!
だけど、二人はまた微妙な感じで見つめられた。……そんなに信用ないのか僕は?
「桜井さん」
「あ、はい」
呼ばれたので振り返ると同じクラスの子が廊下を指して言った。
「隣のクラスの男子が桜井さんに用があるって」
「え……何だろう?」
というかあの男子も見覚え無いんだけど、誰だ?
まあ、とりあえず用件を聞いてこよう。
「ちょっと、僕行ってくるね? 二人とも心配だろうけど僕だってちゃんとやれるんだから信用してよね!」
そう言って二人から離れ教室から出て行った。
そして残された双子は去り行く夕夜の背中を見ながらため息をつく。
「あれ、絶対わかってないわ」
「うん、絶対美景さんが言いくるめたんだろうね」
簡単に騙される夕夜の姿が浮かぶ二人であった…………。
~空き教室~
「それで、話って何かな?」
呼び出されてここじゃ話せないと言われて近くの空き教室に入ったのは良いけど、それから全然相手が話してこない。
早くしないと授業が始まってしまうのに早くしてほしいところだ。
「あの~~?」
「す、好きです!!」
は? 好き? って何がだ?
「桜井さんの事、一目惚れしました!! 良かったら付き合ってくださいっ!!」
「え…………」
え~~~~っ!? い、今、この人僕のことを好きって言ったの!? しかも一目惚れって…………。
「ご、ごめんなさい。無理です」
キッパリと拒否した。
「…………」
「…………」
だって、何で男の僕が同姓と付き合わなくちゃいけないんだ!
しかも良く知らない奴となんて尚更無理だろ。
そしてようやく彼も言われたことを理解したらしい。
愕然としていた。
「あ、あの、大丈夫……?」
いや、言った本人が言うのもアレだけど。ここまでガックリされちゃうと後味悪いじゃん!
そんなことで彼を心配したら、彼は予想外なことを言った。
「優しいんだね……。やっぱり1年でNO2になるだけの人ではあるよね。惚れたのが君で良かったよ」
はあ……? 何言ってるんだろう、この人。というかNO2って何だ???
「それじゃあ、僕はいくよ。手間取らせてごめんね……それじゃあ」
「あ…………」
彼はしょげた背中を向け立ち去って行った。
だがかける言葉はない。
(だって、名前知らないし!!)
そう、彼もテンパってて自己紹介をし忘れたのもきづいてないし、夕夜の方も相手から言うだろうと思ってたらそのまま言わずに終わってしまったのだ。
まあ、次会ったら聞いとこう。気まずいけど……。というかさっきのNo2って何だろう…………。
キーン コーン カーン コーン
考えていたらチャイムが鳴ってしまった!!
「あ!? ヤバイ! これ始業のチャイム!?」
確かこれから始まるのは英語の授業だ。遅れると一ページ全部和訳出来るまで立たされるという先生なので遅れるわけにはいかない!!
――――と、ドアを開けたところで誰かとぶつかりそうになるっ!?
「危ないな」
「え――――?」
前に聞いたことがある艶っぽい声が耳をくすぐる。
いや、聞いたことがあるはずだ。
だって彼は
「急いでいるのはわかるけど、周りを見て歩かないと危ないよ?」
彼はいつの間にか夕夜を片腕で抱き止めていた。
「せ、生徒会長――――」
そう、乙女ゲーの声優さんの声とソックリな学院一人気のあるイケメン生徒会長なのだから…………。
そして思う。これが女の子だったらときめくんだろうな、と。だが自分は男だ。乙女ゲーの主人公ではない。
だから、これは決して運命の出逢いなんかではないと言える!!(誰に?)