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僕と私の秘密の約束  作者: 卯山
3/20

乙女心は複雑なり




七斗『ごめん……ちょっと一人にして欲しいんだ』


夕夜「七斗君……」





選んで下さい

A 彼の言う通りそっとしておく

B 「傍に居たいの」と彼に抱きつく

C 黙って彼の傍にいる




コントローラーを持ちながら考える。

そして導き出した答えは!

「…………A」

ポチ


「それから彼は私の前から消えてしまった……。あの時私は彼に何をしてあげれば良かったのかわからない」


~BADEND~




チャララ~ タタッタ~~ララ~~




バッドエンディングのスクロールが画面に流れている。

しかも何度も聞くバッドエンドの曲もだ。


「…………んもおおお――――――!! 何でバッドなの!? だって、七斗も一人にして欲しいって言ってたのに、そうしたらいなくなるとか訳わかんない!!」

コントローラーを放り投げてジタバタと暴れる。


何故こんなことをしているかと言うと……

由梨と由良に言われた後、自分の気持ちが友達の好きなのか恋の好きなのか分からないとハッキリ言ったら

「……じゃあ恋愛初心者の夕夜ちゃんにこれ貸してあげるからやってみて」

と渡されたのが、携帯ゲーム「彼と秘密のアリス」と言ういわゆる乙女ゲーを借りた。


結構人気作らしくネットではソールドアウトしていて初心者にも易しいらしいが――――僕からしてみれば難易度が高すぎる。

というか、恋愛初心者である前に僕、男なんですけど!


何で乙女心を分からなきゃいけないのかと思うけど、二人が進めてくれた物だし……というわけでプレイしているのだが、全然HAPPYENDに行けません!!


「攻略本も借りたけど」

チラッと分厚い本を見るが手は出さない。

(だって、せっかく二人が貸してくれたゲームなんだから自力でやらないと意味ないし……頑張ろう!!)

そういえば、他にもあったので由良ちゃんに聞いたら


「これは夕夜ちゃんには難し過ぎるから駄目」

「え、各自のルートに行くのが難しいってこと?」

彼女は首を横に振る。

「これね、選択肢を選ぶのに制限時間があるの」

「…………」

そりゃ無理だなと思った。

というか、何故選択肢を選ぶのに制限時間が必要なんだ!? ゆっくり選ばせてほしい。最近の乙女ゲーは奥が深いというかなんというか…………。

ちなみに僕がやっているコレは主人公はふしぎの国のアリスとして現実世界からウサギによって落とされてしまう。

目が覚めた世界は赤の世界で住人達もいるが全員変人。

そして、その住人達は主人公が知っている人達と瓜二つで戸惑うばかり……一体彼らは何なのか?

という彼らとの謎を解きあかしながら彼との絆も作るという乙女ゲーなのだ。

まだルートに入って序盤で苦戦しているが、僕が最初に選んだのはふしぎの国の帽子屋役の 春日 七斗を攻略している。

決めてはただ、どこかで聞いたことのある声の声優さんがやっているということで決めた。


由良ちゃんに言ったら、その声優さんは今人気急上昇なのだとか。だけど、顔はメディアにもイベントにも出さないのでそこもミステリアスで素敵! とのこと。よくわからん。


「う~……そろそろ寝るか。明日は朝礼もあるし」

コントローラーを定位置に置いてベットに潜り込んだ。


「良い夢が見れますよーに」

せめて夢だけは幸せなのを見たい。

そんなことを思いながら深い眠りに誘われた。




◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆




『夕夜』


んん? 誰だ? 僕の名前を呼ぶのは…………?

薄ぼんやりと影のような物体が僕を呼んでいるのがわかる。


『夕夜、ここにいるよ』

すると、さっきまでぼんやりしていたのがハッキリと形になった。

それは男性で今僕が攻略しているキャラの服装、イカれた帽子とスーツを着て立っている。


え……貴方は……七斗?

もしかして夢にまで出てきたのかと内心呆れる――――がそうではなかった。


『違うよ。きっと近いうちに俺達は出逢うことになる――――きっとね』


『だから、それまで待っていて。俺の夕夜』


『――――――』


そして彼は僕の前から消えた。そこには何もなかったかのように…………。








「待って!! 貴方は――」

ガバッと勢いよく起きたところで夢だったのだと気づいた。

だけど、妙にリアルな感じの夢だった……。

七斗に声がよく似ていたが容姿は七斗と一緒でイケメンだがただならぬ色香を漂わせていた。

そして――――


『近いうちに俺達は出逢うことになる』

そう言った。


「いやいやいや! 夢だし、夢中でやってたから夢にまで出てきただけだよ! うん、きっとそうだ!!」

そうでなければあんな意味不明なもの見たりしないしね!


「よし! 顔洗わなきゃ」

顔を洗えばスッキリするよね! さあ、洗面所~!





「おはよう、夕夜」

「おはよう、夕夜ちゃん」

二人がいつも通りに挨拶をしてくれる。いつもの日常風景だ。


「おはよう。由梨ちゃん、由良ちゃん」

「…………夕夜、どうしたの?」

「夕夜ちゃん、何か悩み事があるの?」

二人にはバレバレだった。


「…………実は」

どうせ心配かけるなら話した方が楽だと考え幼馴染みの二人に相談してみよう。


~話し中~


「――て訳なんだけど、どう思う?」

道端で話し込むのもどうかと思ったので教室に着いてから二人に夢のことを話した。


すると二人はお互いの顔を見てから僕を見て

「「ゲームのやり過ぎじゃない?」」

見事にハモった。


まあ、言われるとは思ってたけどね。やっぱり夢オチ…………。


ガックリきてると、華ちゃんがこちらに来た。

「夕夜ちゃん達、朝礼始まるから講堂に集合だって!」

どうやら朝礼が始まるらしい。

「わかった。皆、行こうか」

「うん」

「「ええ」」

ふと気づくといつも華ちゃんの周りにいる二人がいない。

「あれ? 恵君と吉良君はどうしたの?」

「あぁ、あの二人なら告白に呼び出されてるよ」

「へ~そっかあ…………って、えええ!?」

告白!? しかも二人ともって!! ……まあ吉良の方は断るんだろうな、絶対。

恵君は分からないけど……。

「恵君も吉良も彼女作れば良いのにね~? 二人ともいまだにいないんだよ!? 誰か好きな子でもいるのかな~?」

ドッキィッ!!

華ちゃん! ま、まさか吉良の気持ちにき、ききき気づいたの!?

「な~んて、そんなわけないよね~」

あははと可愛く笑う彼女はどうやら全くと言って良いほど気づいてない。流石に吉良が可哀想な奴に思えてきた……。

しかし…………そうか、恵君も彼女いないのか。

ふ~ん…………。


「何ニヤニヤしているの、夕夜」

「!? ゆ、由梨ちゃん! 驚かさないでよ!!」

どうやら気付かぬ内ににやついていたらしい。めっちゃ怪しそうにこっちを見ている。

「ほ、ほら! 早く行かないと遅れちゃうよ!!」

「はいはい」

4人揃って講堂へ急いだ。






「え~…………それではこれから朝の朝礼を始めたいと思います。始めに学院長先生から一言を」

この星影学院は講堂の椅子に座って聞く形なので結構楽で僕は良いと思っている。背中の背もたれが中々良い素材を使っているのかフカフカだし♪


そんなことを考えていたら次はどうやらここの生徒会メンバーが出て来るみたいだ。

……女性徒の黄色い声が双方から聞こえてくるから分かったんだけどね。ちなみに生徒会メンバーには女性徒もいる。

由梨ちゃんが説明してくれたのだけど、かなり美人らしい。


「それでは生徒会の皆さん、宜しくお願い致します」

その言葉の後に続いた面々は皆が言っていた通りイケメン揃いだった。

(へ~……やっぱり皆カッコいい。もしかして判断基準て容姿が良いとかで決まったりしてんの? ……なんて、そんなわけないよね~~!)

そして僕はまた壇上の方へ視線を向けた。

「次に生徒会長の話になります。生徒会長どうぞ」

一層女子生徒の黄色い声が多くなりはじめたが僕はそんな声も気にならない程彼を凝視してしまう。


――――彼が、いたのだ。


あの、夢に現れた帽子屋の格好をした彼が今、僕の視線の先で生徒会長として立っている。


「な……何で」


そして彼は夢の彼と同じように色香を放ちながら微笑む

『おはようございます。生徒会長の 日下部 隼人です』

「!? ……この声!!」

「? どうしたの、夕夜」

「夕夜ちゃん?」


二人が心配する声も僕には分からなかった。だって、気付いてしまったのだ。僕が攻略している七斗の声が生徒会長の声と瓜二つだということに。


『それではこれで挨拶を終わりにしたいと思います。皆さん、よい学院生活を過ごして下さい』

にこやかに微笑む彼に皆ウットリとしている中僕だけが頬を引きつらせていただろう…………。


(これが、夢で言ってたこと? 何でこんなことになってんだ………………)


『巡り会う運命だから』


夢の彼は消える前にこう残していた。


この偶然か必然か分からないがこれからの僕学院生活、波乱がありそうで本当に嫌だ…………。



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