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僕と私の秘密の約束  作者: 卯山
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日常から非日常へようこそ


『夕ちゃん、約束よ?』


あぁ、これは夢か。小さい頃遊んだことのある可愛い女の子。

確か名前はめぐちゃん。

実は僕の初恋の女の子だった。だけど彼女はある日突然引っ越してしまいどこに行ったのかもわからず泣いて過ごしたのを思い出す。これは別れ際のあの子の言葉だ。


『私達が大人になったら絶対結婚しようね』

その言葉を残し彼女は僕の前から消えた。あれからずっとその言葉が頭に、そして心に残って離れない。





チュンチュンと雀が鳴き出した頃日の光でようやく目が覚めた。

「ふわぁ~~、昨日は遅くまで騒いだからな~」

ゴキゴキと首が鳴り遊んだ疲れが残っているようだ。

「でも、4月になったら名門校に入れるんだ。今まで以上に頑張らないと‼」

顔を洗いに行こうと部屋から出る。

「…………何か胸が重い? それに下が軽い??」

流石におかしいと思い自分の身体を見てみると、そこには、本来ならあるはずのない胸の膨らみがあり、そして下半身にあるはずの膨らみが無くなっているのに今気付いた!

「え? ………………えぇ!?」

(何!? どういうこと!? 何であるはずの無いものがあって、あるはずのものが無いの!?)

もう頭の中がパニックになってくる。

「と、とりあえず洗面所‼」

バタバタと駆け込み鏡の前に立ち自分の姿を映す――するとそこにいたのは平凡な顔の僕ではなく、肩まで少し伸ばした髮の目がパッチリとした女の子が呆然としているのが映っていた……。


「な、な、な、」

「あら、おはよう夕夜」

不意に我が姉、桜井 美景(28)が現れた!

「うわあっ!? って姉さん、驚かせないでよ‼」

「仕方ないでしょ。あんた何度呼び掛けても反応しないんだから」

「え、そうなの? ごめん……」

「まあ嘘だけど」

「…………」

姉の嘘はわかりずらい――――じゃなくて‼

「姉さん‼ 何で僕が弟の夕夜だって分かるの!?」

僕だって分からなかったのに何故姉が分かるのかが不思議でならない…………というか怪しい。

姉は大手製薬会社に勤めており、昔から実験と称しては僕を実験台にしてやっていたからとても疑わしいのだ。

まさかと思うが…………ありえることでもある。


「それは分かるわよ。だって」

ごくり

「私が開発した、飲んだだけで性別が換われる『ミラージュ』をあんたに飲ませたんだもの。効果抜群ね、これなら発売出来そうね」

「――やっぱりか‼ ちょっと、姉さん‼ あれだけ僕を実験台にしないでって言ってるよね!? 今回なんてヘタしたら危険なものじゃないか‼ それに元に戻れるんだよね? 僕、来月から高校なんだよ? まさか無いなんて言わないよね!?」

今回はハッキリと言わしてもらう。それに、今回のこれは流石に酷すぎる(いや、毎回酷いが)来月に迫った高校入学までやっておく事があるのにこんなんじゃそっちに集中出来やしない!


すると姉が僕の方を向き言った。

「そんなもん無いわ」

「……………………」

「でも、試験的なやつだからすぐ効果が薄れて元に戻れるわよ」

「…………本当に?」

「えぇ」

そうか、戻れるのか! そうだよね、いくら姉さんが横暴だからって元に戻れないなんていう薬飲ませる訳ないよね!

元に戻ったら何からするかな~っと。




数時間後…………



「――――姉さん」

「何よ」

プルプルと手が震えるのが分かる。これは、怒りで震えているのだ。

「何よ、じゃないよ‼ 姉さん言ったよね? すぐ効果が薄れて元に戻れるって! 今、夕方の5時なんですけど!? 全然戻る気配すらないじゃないか‼」

もう不安と怒りでごちゃ混ぜになってる。


「夕夜……」

「うっ……」

ポンと姉さんが優しく肩を叩く。

「? 姉さん……」

ニッコリと姉さんは微笑み

「諦めよう」

「馬鹿――――――――――っ‼」


これが僕の中学卒業して春休みの初日に起こった出来事です。


そう、僕が私になってこれから起こる出合いになんてこの時は思いもしなかった。

というかこれから女として生きる僕には不安しかない!

だが、姉は平然としていた。

これからどうしようと頭を悩ませる僕に姉は「これ渡しておくわね」と言いながら渡されたのが、今度入学する予定の名門校『星影学院』の学生証だった……。

しかも、今の僕の姿のやつ。


「姉さん、これいつ撮ったの?」

「秘密」

と言われ、次に制服も渡され、女子に必要なあれやこれやをドサッと渡された…………女の子ってこんなに大変なの!?

僕、絶対やっていけない。


「私も教えるし、あと母さん達にも一応伝えておいたから。あんたが女になったこと」

早いな、行動が……そうか、母さん達も知ってるのか。


母さん達は今海外に住んでいて、母は大学の教授、父は姉と同じ薬品会社の開発チームで働いている。姉は父に憧れてそっちの道に行ったけど本当迷惑はかけないでほしいよ。


「母さん達写メ送ってって喜んでたわよ」

うちの家族馬鹿ばっかりだ‼

「あと」

グッタリしている僕に姉は優しい声で言う。

「具合が悪い時とかすぐに言いなさい。ちょっとおかしいなって思った時も言いなさいよ」

「姉さん……」

そんなに僕のことを心配して――――?

「研究材料になるからね」

だと思いました~~~~~~!





そして、あっという間に入学式…………。

心臓がバクバクしてぶっ倒れそうだ。しかもスカートがスースーするし、よくこんな丈で女子は不安じゃないな…………パンツが、いや、ショーツが見えてしまう!

「夕夜、大丈夫?」

「夕夜ちゃん、具合が悪かったらちゃんと言ってね?」

僕の両隣にいる幼馴染みの双子の女の子、右の目に泣きボクロがあるのが由梨ちゃんで左の目に泣きボクロがあるのが由良ちゃんだ。

二人は幼稚園からずっと一緒に過ごしてきた程仲良くしてくれ、僕が困っている時は助けてくれ、僕がイジメられた時は相手をボコボコにしてくれたりと何かと格好いい幼馴染みである。

結構二人は容姿が似ていて入れ替わって親達を困らせていたけど僕は二人が入れ替わってもすぐ分かるので皆が分からないのが不思議だったのを覚えている。


高校も彼女達は僕と同じ高校に行くことになり結構喜んでいた。

こんなことにならなければ…………。


「大丈夫よ、あれだけ準備もしたんだから胸張って行きましょう」

「そうよ。夕夜ちゃんは誰よりも可愛いわ、安心して!」

「いや由良ちゃん、別に可愛いとかはいらないんだけど……」

「何言ってるの! ブスと美人じゃ扱いが全然違うのよ? 天と地程の、いいえ、月とスッポンなのよ!?」

怒られた。まあ男でもそういうのはあるけどね。


「そうね~、夕夜は昔から女顔だったから女性になったことで更にモテるんじゃない?」

「? 僕モテたことないよ?」

そう、生まれてこのかた告白されたこともないし異性として思われたこともない。(言ってて哀しい)

すると何故か彼女達は哀れみの目で見てくる。

そりゃあ、寂しい奴だけどさ、仕方ないじゃん‼


「まあ、とりあえず教室に行きましょう」

「そうね、そうしましょう」

「あ、うん」

外に貼り出されてたクラス表を見たら、幸い二人と一緒のクラスだったので良かった!

そして自分のクラスの前に立つ。いざ、出陣‼(?)


「お、おはよう‼」

…………しーん

(うわーん‼ 最初から駄目だ僕‼ もう嫌だ…………)

どよーんとしていたらある女の子がこっちに来る。

そしてニッコリと

「おはよう! 私、白川 華って言います。これからよろしくね‼」

リーンゴーン(鐘の音)

「運命の出会い!?」

「いや、ただの授業開始のチャイムだから」

「夕夜ちゃん、正気に戻って」


そんなことをしていると彼女の後ろから――――イケメン二人がこちらに来た。

「華、勝手にどっか行くなよ。心配するだろ?」

こちらは黒髪サラサラのイケメン。

「吉良がうるさいからあまり心配かけるな」

こちらは焦げ茶色の髮で、まあ同じくイケメン。


…………まさか出会って早々失恋?

「も~、吉良は心配しすぎ! 恵君もだよ」

「あ、あの」

「? あ、貴方の名前教えて貰っても良い?」

はっ‼ そうだった、僕も名乗らなくては。ま、まだ彼らが彼女の彼氏と決まった訳じゃないし‼(超動揺)


「ぼ――じゃなかった、私は桜井 夕夜で」

「私は羽山 由梨。由良の姉です」

「私は羽山 由良。由梨の妹です」

「「よろしく」」

二人も続いて挨拶した。

「わぁ‼ 凄く似てるね‼ 双子なの? それに夕夜ちゃん、て何だか男の子みたいな名前だね~」

ぎっくう

(つい最近まで男でした。なんて言えない)

「よ、良く言われる。親が男の子欲しかったみたいでこの名前なの。姉もいるよ」

内心ダラダラと冷や汗が出てる。


「そうなんだ。でも、私格好いい名前で好きだな、夕夜って」

ドキュ――――――ンッ‼

「ど、どうしよう! す、す、すすす好きだって言われた‼」

「いや、名前が格好いいってだけだから」

「夕夜ちゃん純粋だから」

二人は呆れた目で見てくるがそんなの気にしない‼


だがそんなささやかな幸せを壊す奴がいた。

「女で男の名前って俺だったら嫌だね」

黒髪サラ夫だった。(アダ名命名!)

「…………」

お前もか!? ってあれ? 何かじっと見られているのですが……な、何か気に障るような事言った? いや、言ってないよね? だって僕、挨拶しかしてないし!?

うわ~めっちゃ見てるよ!


「おい」

「ひゃい!?」

裏返った……。オワタ


「……お前、めぐと言う名に心当たりないか? 黒髪の少女と遊んだことは?」


「え」

めぐって…………めぐちゃんのこと?

彼女は彼の言う通り黒髪の少女だ。だけどそんな子いっぱいいるだろうし……。

「…………約束をしていないか、その子と」

「!? な、何で……あ」

しまった‼ うっかり言ってしまった。……でも、何で彼が知っているんだ?? 僕は誰にも言っていない。由梨ちゃんや由良ちゃんにさえ。だとすれば彼女が?

考えれば考える程分からない。


「何の話? 夕夜ちゃんと知り合いなの、恵君て」


『恵君』? も、もしかして…………

「あ、あの……」

「何だ?」

「も、もしかして、恵君て――――めぐちゃんなの?」

こそっと皆に聞こえないように彼にだけ囁くように聞く。

(どうか、どうか勘違いであってくれ‼)

「あぁ(こくり)」

「………………マジで」


僕の初恋は高校デビューで儚く散りました。えぇ、木っ端微塵にね‼ (泣)


ほけ~っとしていると痺れを切らしたのかサラ夫がイラだたしげにこちらに向かって言ってくる。

「そろそろ授業始まるぞ。ほら、行こうぜ」

二人を促し行こうとする背中がチラッと振り向きベエッと舌を出し、ふんっとそっぽ向いて自分達の席へと行った…………。


「な……」

(何なんだアイツ――――――!?)

そして片方のめぐちゃん、いや、恵君に気付くと彼はフッと微かに笑い、彼の唇に人差し指をやり『シーッ』とジェスチャーして席に行った。


「………………」

(こっちも何なんだ――――‼)

僕の高校生活、これからどうなって行くのだろうか? めっちゃ不安しかない。




そんなやり取りをしていた僕を後ろで見ていた双子は密やかに話していたことを僕は全然気付かなかった。





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