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向かうは、魔法都市『マジックフォレスト』

~リダの宿屋『七色のランタン』~


 宿につき、二階の部屋に荷物を置くと、俺たちは一階の食堂に向かった。


 食事はバイキング形式だったので、取りあえず旨そうな肉と、スープ、後はパンみたいなやつを取ってきた。

 最初はルナと同じものを取ろうとしたのだが、なんというか、トカゲっぽいやつとか、紫の卵みたいなやつを取ってたのでやめた。

 ただ、最後にルナがとっていたプリンは俺も取った。あ!あるんだ!と嬉しくなって取った。味もよく似ていた。

 酒もあった。

 ルナは普通に飲んでいたが、いいんだろうか……。なんか娘に酒を飲ましているようで気が引ける。

 まぁ、大人にならない小人族なんていうのもいるようだし、そこまで目立ってはいなかった。


 「いやぁ~、旅かぁ~!胸が躍るなぁ~~!」

 「ヒュー!今日は飲むぞ―――!」


 ルナはご機嫌だ。


 「ルナは、昔旅人をしていたんですか?」


 「なんだミズキ、敬語はやめろ敬語は。」


 ぷはぁ~。と少し酒臭い。可愛いんだけどなぁ……。


 「ルナは、昔旅をしていたのか?」


 「んー、二十歳ぐらいまでは、世界中を旅してまわったな。」

 「雲の上や海の底にある街も行ったし、溶けない雪の降る街なんてのも面白かった。それに魔界に行けば特に変わった場所ばかりだぞ。マグマのど真ん中に街が出来てたりな。」

 「まっ、俺が行ってないところは、お前さんの前居た世界くらいだろうよ!がははは!」

 「俺は役に立つぞーーー!大船に乗ったつもりでいろ!ふはは!!」


 このジジイ、ご機嫌である。


 一頻りジジイ(ルナ)の与太話を聞き終えて、飯を食って部屋に戻ると、ルナが話し始めた。


 「魔法都市に行きたいと言っていたな?まず、あそこには魔術師がいないと入れんぞ。結界があるからな。それにあの街は定期的に森の中を転移しているから、見つけ出すには中々骨が折れる。」


 街が森の中を転移?街ごとってこと?そんなことあるんだろうか…。


 「ルナは、魔法は使えないの?」


 「俺は、魔法はからっきしだ!」


 少女は、がははと笑った。

 もうちょっと、女の子っぽく笑ってほしいものだ。


 「ねえルナ、魔法都市『マジックフォレスト』について詳しく教えてくれない?」

そう言うと


 「読んでみるか?」


 と言ってルナは、一冊の本を俺に投げ渡した。随分と古い本だ。


______________________________


 魔法使いの街 「magic forest」


 この街では、魔法が信じられている。

 それは、昔この街で大魔法が使われたからだ。


 使った魔女の名は、ウィンミル。


 彼女は一夜にして、何も無い森の中で、不思議な街を作った。

 木は一晩で大樹と化し、岩石は一夜にして小石になる。

 魔女の眺める水晶玉の様に、その街はことあるごとに形を変える。


 それがこの街、「magic forest」


 魔法使いの去ったその街は、今は魔女や魔法使いの格好をしている子供たちが暮らしている。

 実際に魔法を使えるものはいないが、誰よりもみな魔法に強い憧れを持っている。

 それはこの街を作った人が魔女だったという伝説が、今も残っているからだ。


 そして、もうひとつ。


 この街が、何よりも、幻想的で不思議だから。


 「俺もこんな街を作りたい。」 

 「私もウィンミルのように。」


 飛ばない箒、曇ったガラス玉、真っ黒な三角帽子は子供たちの民族衣装。

 お手製のカボチャ電灯に照らされるオレンジ色の街。

 魔法使いの作ったこの街には、魔法好きの魔法の使えない魔法使いが暮らしている。


 だけど、その中にたった一人、街を作った本物の魔女ウィンミルの血をひく者がいることを、今は誰も知らない。



 冒険家『クロス=マーシャル』


_______________________________


 「童話か何かか?」と尋ねると、


 「いや、実話だろう。そいつの書いた本は大体が実話だ。」


 そうルナは言った。


 「今より約千年前、魔女ウィンミルの大魔法により、闇の大森林の奥地に突如出現したという古代都市。初めはその魔女一人だったが、森に迷い込んだ子供たちが、そこに住み着き暮らし始めた。魔女が攫ってきたって説もあるが、まあそれはいい。」


 「当初魔法を使えるのは、ウィンミルだけで、そのウィンミルも、誰にも魔法を教えることなく、わずか10年程でその都市を去ったと言われている。」


 「その都市が、魔法都市と呼ばれるようになったのは、それより五百年後、魔女リーフレットが現れてからだ。彼女は、魔女ウィンミルの血を引く者だった。」


 「古代都市に残された石板と、魔女ウィンミルの残した手記を基に、ただ一人魔法を習得し、その術、魔術を人々に広めた魔術師の祖といわれている。」


 「マジックフォレストが、魔法都市として知られ始めたのはそれからだ。」


 「今は、魔術学校なんてのもあり、魔術の研究も進んでいる。そこに行けば、お前を召喚した奴に会えるかもな。」

 

 「そしたら、まずは魔術師を探すところからだな。」


 俺がそう言うと、


 「任せておけ、俺に当てがある。」と言って、ルナはベッドに倒れこむようにして横になった。


 「まずは明日だ。商館に行って荷物を整理して、馬車を貰い、砂漠を抜け、闇の大森林の入り口を目指す。」


 「俺はもう寝る。良い子は寝る時間だ。」


 ふぁあと欠伸をして、ルナは眠りについた。

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