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バンダナを巻いた男

 俺は気になっている。


 このガムやらグミやらは一体いくらになるんだろう。

 いや待て。そもそも、売れるのだろうか。


 考えてみてほしい。

 リサイクルショップにいきなり入ってきて、板ガム一枚取り出してカウンターに置く。

 そこで「買取お願いします。」なんて言ってみなよ。

 俺なら殴るね。冷やかし王だ。


 いや、きっとこのガムも生まれ変わって素晴らしいアイテムになってくれているに違いない!

 自信を持って行こう!

 冷やかし王に俺はなる!


 そして、俺はドキドキ半分、ワクワク半分、商館へと向かった。


 ここか…。

 『何でも買い取ります(生き物、生もの、法に触れるものは……)』って看板がある。

 カッコ内が気になるが、まぁ、金が入れば何でもよし!

 意気揚々と店に入り、カウンターにガムを叩き付けた。


 「おおお、お前さん、これをどこで……!」

 じじいが早速食いついてきた。


 (「きたきたきましたー!」)

 俺は心の中で歓声を上げた。


 「これは、ブルーアイじゃよ。視力がまぁ、少し良くなる秘薬じゃな。たまに旅人が持ってきおる。まぁ、こんな不思議な紙に包まれているのは初めて見たがな……。」


 ほうほうと頷く。


 「それでいくらになりますかね……。宿代くらいにはなります、よね?」


 そう聞くと、爺さんはまぁ待てと、手を突き出して答えた。


 「そうじゃのぉ、お主も困っておるようじゃし、ちょうどこの手の薬も在庫がなくてな。銀貨10枚で買ってやらんこともないぞ?」


 この街の貨幣制度は、【小銅貨<銅貨<大銅貨<銀貨<金貨】となっており、小銅貨10枚=銅貨、銅貨10枚=大銅貨、大銅貨10枚=銀貨、銀貨10枚=金貨。となっている。

 前の世界の基準で考えると、小銅貨1枚が10円程度だ。


 えーと、ってことは銀貨10枚だと、10万円か!!

 宿に1泊するのに、食事付きで銀貨1枚程度だそうだから、10日は持つな!ありがたい話だ。

 その間に仕事も見つかるだろう。


 「よし、売っ「待ちな!」た!」


 突如後ろからバンダナを顔中に巻き付けた男が叫んだ。


 気付いたら俺の横に立って、爺さんを睨んでいる。


 「おい、爺さん。嘘はいけないな。ブルーアイ!またの名を『千里眼の秘薬』これはSランクのアイテムだぜ?」

 「これを噛めば、その者の視力は飛躍的に上がり、10キロ先までは目を凝らせば見えるようになるはずだ。それに失明者の視力を回復することもできる。」

 「あまりにレアなんで、相場がないと言えなくもないが、それでも金貨100枚は下らないだろう。」


 青年は声を荒らげて、爺さんを責める。


 爺さんもなにやらもっともらしいことを言って青年を黙らせようとしていたが、青年が金色の紋章がはいったキーホルダーみたいなものを見せたっきり大人しくなっていた。


 なんだろう。水戸黄門の印籠みたいなものだろうか。


 えーと、金貨100枚?待てよ~。金貨1枚で銀貨10枚。金貨100枚で銀貨1000枚。ってことは宿に1000泊もできるってことだよな……。

 1泊1万円と考えてみると、1000万円くらいの価値があるのではないだろうか?

 え?すごくね?ブルーベリーガムすごくね?もう金に困んないじゃん。

 てかこのジジイ、人のよさそうな顔して1000万円のものを10万円くらいで買い叩こうとしやがったのか。

 うわー、ないわーーーー。

 商館こえーーー。


 取りあえず、ガムは売らずに商館を出て、バンダナ男に礼を言った。


 「ありがとう、おかげで助かったよ。俺はハヤマミズキ。よろしく。」

 「俺は、ラックだ。よろしく。」


 ラックさん。

 赤・黄・オレンジ、複数のバンダナを顔に巻き付けているため、左目くらいしか見えないが、声の感じから、恐らく二十歳前後だろうか。

 背は俺より少し低く、175センチ位かな。たぶん人族だろう。

 そして、爽やかでいいやつそうだ。

 うん。俺の若い頃にそっくりだ!

 うん……。


 「しかし、商館っていうのはあんなに危険なところなのか?てっきりもっとしっかりした奴らが取り仕切ってるんだと思ったよ。」


 「商館?」


 ラックは首をかしげるようにして言った。


 「お前、この街は初めてだな?ここは商館じゃないぜ。質屋だよ。悪質なやり口で有名なんだ。」

 「俺も商館に向かう途中だったんだが、なんか危なっかしい奴が質屋に入っていくのが見えてね。まぁ、何にせよ良かった。もし商館に行きたいなら、ついでだ。俺が案内してやるよ。」


 ~リダの商館『幸運と天秤』~


 2番街の中央。そこにあった商館は、先ほどの質屋とは比べ物にならないくらい立派な建物だった。

 一階建てではあるが、札幌ドームくらいの広さがあるんじゃないだろうか。

外壁は白を基調にしており、入口には金色の天秤マークが書かれている。

とても上品な感じだ。


 商館に着いて分かったことは、バンダナ男、こいつはかなりの有名人だということだ。

 冒険者ラック=ラダー。


 「わずか10歳の時に、秘法級と言われるお宝『銀竜の牙』と『ガラス鳥の羽』を持ち帰った天才児。」だそうだ。


 秘法級は、F~S級のアイテムの更に上を行く物で、1つ持ち帰れば一生遊んで暮らせる程度の金は手に入るらしい。

 そんなものを10歳の時に…。

 どうやったらそんなことができるのだろうか。

 

 と言うか、10歳の時に既に冒険していたのか。

 俺は10歳の時、何をしていただろう…。

 ド●クエ3とかやってたな。ファミコンで。まぁ、ある意味俺も冒険者だったな。うん。


 しかし、なんだろうな、こいつ。

 一緒にいると不思議と妙に親近感が沸いてくる。

 理由はよくわからないが、どうにも惹かれている自分がいる。

 顔はバンダナぐるぐる巻きでかなり怪しい感じなんだが、なんでだろう。


 ラックの横を歩きながら首をかしげていると、ラックは、実に色んな人から声をかけられていた。


 「ラック!今回はどこに冒険に行ったの?」とか、

 「何と戦った?戦利品を見せてくれ!」とか、

 「ねーねーお土産は?」とか。


 召喚士のことを聞きたかったんだけど、ちょっと難しそうだな。

 ていうか、キリンの獣人がいるんだが!

 ラックの服を引っ張ってるんだが!

 えー、いいなーずるいー。紹介してほしいー!


 「ミズキ!鑑定と売却なら、あっちだぞ!それとこれを持っていけ!ちゃんとした人が鑑定してくれるはずだ」


 そういって、さっき質屋で見せていた金色の紋章(片目の潰れた竜のようなマーク)の入ったキーホルダーを紙に押し付けて、その紙を俺にくれた。


 「ありが…」


 お礼を言おうとしたが、ラックは皆々に連れ去られ、俺の視界から消えていった…。

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