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大根おろし
生きることは大根おろしに似ている
すり減らして すり減らして
そうしながら 私達は生きていく
いつか終わりが来るまでずっと
自分自身を削りながら
そう思いながら 私は買ってきた大根を見つめている
すこしひん曲がったその大根が
私の心を映し出しているようで 少し笑ってしまった
どうしたのと 不思議そうな顔を覗かせる家人に
なんでもないのよ と上辺だけの笑みを浮かべる
消えない暗い思いを悟られないように
夕飯の献立を 焼き魚だよと伝える
添えられる その白い雪のような身が
まるで私自身のような気がするから




