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Identity
こっち側にいる私は
どんなに手を伸ばしても
絶対に そっち側には行けない
気づくのが遅かった
もっと早く気づいていられれば
きっと今頃は 今と違う私でいられたのかもしれない
今私がある人生そのものを否定するくらい
ものすごく強い気持ちが私を揺り動かしている
どうしても 私はそっちがよかった
――ねぇお父さんはどうして髪を伸ばしてるの?――
無邪気な 純粋な疑問をぶつけてくる私の子
その質問に どう答えようと考えてしまう
そして それは私の妻に対しても同じだ
今の私の家族をどうすればいいか 考え続けている
私は 今の私にできる 精一杯のことを行い続けている
答えの出ないまま 答えを探し続けてる
髪を伸ばしてるのは 女性に近づきたいから
ずっとずっと 髪を短くしなければならないことに 抵抗があったから
せめて髪型だけは許してほしいと 打ち明けられるのだろうか
髪を結ったり 可愛いピンでまとめたりしたいと 言っていいのだろうか
不思議そうに私を真っ直ぐ見る我が子に対して
私は ただ
ただ 本心でもない笑いを浮かべるしかなかった




