衝動
自分の意志ではどうしようもできないことだってある
何か耐えられないことがあったとき
不安なことがあったとき
まるで世界が私をぎゅっと押し込めて
本当に小さな小さな
丸いボールか何かになってしまうんじゃないかと思うくらい
それくらいの強さで 私の心臓が握りつぶされそうに感じるとき
私には 抗いがたい衝動が沸き起こる
そんな時 私はいつもよりもずっとずっと強く目を閉じて
絶対に それを見ないようにする
本当に 身近に存在して
まだ乾ききってない 水に濡れて 光を反射する
その刃を
その刃先の鈍い光に
私の瞳が囚われないように
そうでなければ
私はその衝動に負けてしまいそうになるのだ
強く握りすぎてうっ血し
血の気が失せた私の手首
そこにその濡れた刃先を押し当て
すっと引いてしまいたい
その衝動が もはや誘惑ですらあると思える
その衝動に耐えるために
私は今日も
代わりに手首に歯を立てるのだ
思い切り
消えないくらいの跡を残したくて
何度繰り返しても 一瞬の安堵の跡は
また 次の衝動が どうせやってくるのが分かってるのに
自分の手首に噛みつく その力が
だんだんと強くなっていることにも気づかずに
今日も私は 衝動に耐える
ずっと ずっと




