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東西南北。それぞれの地に場を司る“竜王”が住んでいる。
東を司る竜王。
西を司る竜王。
南を司る竜王。
北を司る竜王。
ひとつの広大な国に、四人の竜王。
ひとつの国に竜王は四人も要らないと言う国民もいることもあり、四人の竜王は他の竜王を降ろし自分がこの国を統一しようとしているのが今の現状。
竜王それぞれには特殊な能力があり、それを制御するのが、
「東西南北、それぞれの竜王の片割れーーーー“竜王の妃”なるひとで、私も」
「おつかい幼女可愛いね」
「幼女違うからっ!て言うか何回目!?私はあと何回ほど同じ話を繰り返さなきゃいけないのっ!?」
たしたしたしたしっ。と金髪ツインテール幼女こと、陽菜からのお叱りは既に何度目だろうか。
陽菜からのお叱りに飽きもせず深森は安定の現実逃避を図っていた。いや、図ると言うほどの賢さは深森にはない。十中八九、ただ聞く気がないだけだった。
寒い森の中に二人向かい合ってちょこんと正座をし、陽菜の話を数回聞いても未だ理解の遠い事柄でしかないと深森は自分のこの世界への拒みっぷりに正しいと言う評価を置いている。
深森は本を読んでいた人間ではないし、加えてテレビもあまり見てこなかった現代には中々珍しい少女だ。
そのため、もちろん流行にも疎いし本や映像の中で華々しく彩るファンタジーな世界なんて全くと言っても過言でないくらい無知。
そんな深森と言う少女がいきなり「ここはファンタジーな世界ですよ」と言われたところではいそうですかと頷けるわけがない。