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べたーっ、と木に張り付いて深森を凝視する金髪ツインテール少女は“喚ばれた”者がどんな者であるかを…………後に叱られること覚悟で“さかさまの城”から抜け出てきたのだ。
気のせいだと言う可能性をきっと誰もが提示するだろうが、この世界においてそれはあり得ない。
別の世界からやって来た者を関知出来るのが同じく別の世界からやって来たものが察知出来るのは道理。
その道と過程を知っているし何より匂いが記憶に刻まれている。
刻まれたものは安易には消えないし“こちら”で生きると決めて、忘れようと強く意識したからこその深い刻みになったのは少し前に少女が悟った真実だった。
少女の中に切なさが吹き込んだが、深い瞬きを行うことで和らげて、息を吐くことで解け流した。水のように。霧のように。
迷い……ではなく、切なさを払拭するかのように勢いをつけて強く瞼を開いた。
少女はただ眺めるためだけにここに来たのではない。ただそれだけの為に後ほど厄介な相手と喧嘩をすると言うのはあまりにも少女にとってデメリットでしかない。
デメリット……でしか、ないのだが……
あまりにも、目を反らしたくなる現実しかなかった。
「……!そうか……!わかった……!」
かっと瞳をぎらりと鋭く光らせた深森にびくりと肩を震わせた少女。しかしやはり深森は少女が少女の存在に気づくことはない。
少女はびくびくとしながら深森の様子を伺い見る。次は何をしでかすのだろうか?と最早深森は少女の中では珍獣の扱いだった。だがそれに「酷い」と言う者はここにはいないし、仮に第三者がいたとしても少女の抱いている感想に首を横に振る者はまずいないだろう。