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竜王の妃。  作者: 雨神
第一章。
4/15

1ー2

ぶるんっ、と体が震えたことに、自分のことながらに深森は驚いた。


身震いした体、腕に反射的に手を添え擦りながら辺りを再度見渡す。そう言えばこの見覚えのない世界と深森の服装は合わない。


深森の着ているものは明らかに夏。詳しく言うなら夏の制服。高校三年生、華やか年頃らしくしっかりとミニスカートだったりする。


が、ここの季節……深森の肌が感じているのは明らかに深い秋だった。もう冬が秋の扉を叩く寸前までに近い、冬に近い秋。


つまりーーーー夏服ではすっごく寒いと言うことだった。


深森と言う可哀想な子を具現化したような子が何かを呟き空回りしたことよりも寒い。とにかく寒い。


摩擦熱で狼煙を起こせるのではないかと思えるほどに全力で自身に熱を与えようとする深森はついには足踏みすらはじめた。


たむたむたむ。

たむたむたむ。


寒さから必死に意識を反らすために深森は空を仰ぐ。


どこまでも深い深い、遠い青。まるでそれは限りのない海のようで、深森が先程まで居た、


人混みだらけで

ゴミだらけで

汚れ、

線を引かれてしまっているような


そんな空とは全く違って見えた。


「……?なんだろ、あれ」


郷愁。そんな言葉が深森の中を過ったか、はたまた深森の辞書にきちんと登録されているかは定かではないが、深森は空から、空に建築されているそれに目が入った。


たむたむたむ。

たむたむたむ。


明らかに異常なそれ。


普通ならば持っていたものを落としてしまったり、空いた口が塞がらなかったりするだろうに、深森の寒さに反抗するための足は止まらなかった。


深森がいかに本能に忠実な人間であるかがよくわかる瞬間である。


ひらりと揺れる紺のスカートが深い秋風に揺れるがそれを手で押さえるような乙女心は深森にはなかった。スパッツをスカートの下に履いているからと言ってこの堂々とした態度は端から見て如何なものだろうか。


それを言ってくれる者がいなかったのだろうか、と言う疑問を抱くのは恐らく野暮なのだろう。獅子に何故うさぎを食すのかと聞くのと同じくらいに無意味レベルは高い。


それに深森でなくともこの世界への不思議は慣れるまでか、知り尽くすまでは終わらないだろう。


深森の褐色の瞳が疑問をぶつける場所は正しく“空”だった。


深森が見上げた空にあるのは、大地に降ってきそうな柱が四本。


柱は明らかに“空に根付くようにそびえ立っていた”から深森は我が目を疑った。


たむたむと足踏みは驚きで少しずつ緩みはじめ、止まるか止まらないかでの速度になっていく。もう足は殆ど上がってはいない。


空を見て、また地に戻る。


空にそびえ立っているはずの四本の柱は、同じようにまた地にもそびえ立っている。


「……?……え、うん?…お?あれ………んんんん?」


見間違いか?

見間違いだろう。

そうに違いない。


だから目を擦ってみた。


ごしごしごしごし。

ごしごしごしごし。


………………。


深森は再度、空を仰いだ。


やはり、空には根付いているかのようにーーーーーーーー柱が、四本。


…………。


「あはははははははは。あはははははははははははははははははははははは……うわぅっはっはははぁっ!」


そうして深森の常識はあっという間に崩壊して、受け入れられない事柄にフィルターをかけるべく天肥ゆる程に大笑いを迸らせた。


豪快に。しかしからっからに渇いた大爆笑を。


もう何が可笑しくて、何が楽しいのかなんかさっぱりわかりゃしない。


ファンタジーお馴染みの森の動物たちや少しばかり不思議形態の者までが深森を遠巻きに見ては不思議に、もしくは少しの怯えを織った表情で草の垣根や木の影からこっそりと見ている。


が、大笑いと言う拒絶フィルターを全力でかけている深森はそれに気づかない…………否、それを見ないために必死なのである。


やはり深森はあらゆる意味で可哀想な娘だった。


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