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紫紺ハルシネイション

作者: もちあざらし

ある雨の日にあった、僕と紫陽花を見つめる少女との不思議なお話。

この2人の関係を、皆さんも想像しながら読んでみてはいかがでしょうか。

鮮やかに咲いた紫陽花から、雨の雫が流れ落ちる。

まるで僕の心を代弁する様に。

昨日から梅雨に入ったらしい。

低く垂れ込んだ曇り空から止めどなく落ちてくる雨粒は、淀んだ僕の傘に当たって、ぽつぽつと音を立てた。

「よりにもよって今日が雨か」

溜息をついて僕は立ち上がる。

路面から跳ね返る雨は、裾を重く濡らした。

まるで僕を引きとめようとせんばかりに。

このままここに居ても仕方が無い、そうして紫陽花に別れを告げて振り返る。

ふと視界の端に写ったのは、紫陽花とは対象的な紅。

ゆっくりと近づいてくる紅は、僕の目の前で動きを止める。

「綺麗だね、紫陽花の花」

「うん、そうだね」

濁った僕のとは対象的な、紅の唐傘を持った君が笑いかける。

「ねぇ、いつもここにいるね」

「そうだね」

僕は淡々と返事を返す。

「今年も綺麗に咲いたなぁ」

「あぁ、綺麗だね」

君を見るたびに募る想い。

君と言葉を交わすたびに増えていくこの感情。

それは、長い時間をかけて層の様に積み重なってしまった。

臆病な僕のまるでミルフィーユのような想い。

君と一緒にいられたら。

君の手を握れたら。

「ごめんね、もう行かなきゃ」

そう言って、悲しそうな表情を君は浮かべる。

「また、来年も会えるよな」

「君が想い続けてくれる限り、私は逢いにくるよ」

そう言ってうっすらと透け始める君の体。

「またね」

淡く溶けていった君。

梅雨が見せた幻は、紫陽花だけが知っている。




今日は少女の命日でした。

紫陽花の碧と少女の血の色で染まったあの日を、僕はまだ引きずっているのです。

そして毎年のように少女に会いに訪れては、涙を零すのでした。




短編いかがでしたでしょうか?

気に入っていただければ幸いです!

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