きらきらのむこうへ
おじいさんとおばあさん。
ふたりは一緒に暮らしていました。
ふたりには娘がいました。
娘は子供を産み、ふたりの孫ができました。
おじいさんとおばあさんは孫をとても大切に思っていました。
おじいさんは長いことこの部屋でくらしていました。
いつから、どうしてかはもうわかりません。
ただ、動かない左腕。左足。自分では何もできません。
時々姪や甥がいるのに呼んでも来てくれず、誰も信じてくれません。
すっかりやる気をなくしたおじいさんには会いたい人がいました。
おじいさんの孫の「ゆう」と「ちさ」です。
最後にあったのはいつだろう・・・
ある日おじいさんは熱を出してしまいました。
熱い、のどが渇いた。
そんな時どこからか声が聞こえます。
「来たよ。ゆうだよ。」「おじいちゃんちさだよ。」
すると体がすうっと軽くなり、きらきらと周りが輝きだしました。
こんなに楽になったのは初めてです。左腕も足も動きます。
おじいさんはベッドから起き上がり、ゆうとちさの顔をみました。
「やっと会えた。」
そう思うともう一つ忘れていたことを思い出しました。
おじいさんの奥さん。おばあさんのことです。
「そういえば、おばあさんはどうしたんだろう?」
あの部屋に来るまではいっしょに暮していたのに。なぜわすれていたんだろう。
おじいさんはおばあさんを探しに行きました。
――
おばあさんはベッドにいました。
いつからここにいるのか、なぜいるのかもうわかりません。
ただ、左足がすごく痛いのです。咳も出ます。
呼び鈴をならすと人が来て「痛いのですね。おくすり足しましょうね」とボタンを押します。
するとおばあさんの体につながったチューブに薬が足されて痛みが和らぎます。
ただ、そうするとすごくねむくなります。
時々あらわれる娘が「痛かったら遠慮せず呼び鈴をならすんだよ。ご飯は食べられないなら好きなもの食べていいんだよ。」とお菓子やおばあさんの好きなおかきを買ってきてくれます。
でも最近はそんなに食べたくないんです。これからどうなってしまうんだろう・・・眠りにつくまえに浮かぶのは孫のゆうとちさの顔です。
この部屋にきてから一度だけ会いに来てくれました。
ある日、昼も夜ももうわからない。うとうとと眠っていると、誰かが来て「痛くないですか?」と聞きました。
今日はちっとも痛くないので「だいじょうぶです。いたくないです。」と答えました。
その人は「わかりました。また来ますね。」と部屋を後にしました。
こんな日が続くといいなあ・・・と思っていると、周りがきらきらと輝きだしました。
ベッドのそばにおじいさんがいました。
「おじいさん・・・そんなはずないのに」
おじいさんは出会った頃の若い姿でした。
大好きだった。かっこよかった。おいしいものを知っていて、いろんなお店に連れて行ってくれた。
あの頃のおじいさん、いや、「なりさん」と呼んでいたころの・・・
「みっちゃん。むかえにきたよ。一緒にいこう。」
おじいさん、なりさんがいいました。するとおばあさんは若く、美しい「みっちゃん」になっていました。もちろん足の痛みも咳もなくなり、体が軽くなりました。
二人は手を取り、部屋をでました。
きらきらと輝く空の向こうへ。
読んで頂きありがとうございました。
今年の2月と10月に亡くなった父と母の事を書きました。
父は2023年に2回目の脳梗塞を発症し、左半身麻痺になりました。まだコロナ禍で見舞いにいけず、「高次脳傷害」を併発し、幻覚・幻聴に悩んだ母が介護を拒否し、2年間の施設暮らしを経て肺炎で亡くなりました。
母は2024年に左腸骨に肉腫(骨の癌)が見つかりました。
肉腫は進行が早い為、診断が出た時は手術、抗がん剤適応が無く、専門機関に入院し増えた分だけ放射線を受けホスピス型の介護施設に入所。2ヶ月後に肺転移が見つかり、緩和療法を受けながら亡くなりました。
ふたりの事を忘れない為に。
ケンカばかりのふたりが、きらきらの向こうでは仲良しであります様に。願いを込めて。




