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親友探しの夢日記

作者: こし餡
掲載日:2025/10/23

ある日、親友に呼ばれて家へ向かった。

玄関の鍵は開いていたのに、肝心のあいつの姿がどこにもない。

何度か連絡を入れても返事はなかった。

仕方なく部屋で待たせてもらうことにした――そのとき、机の上に一冊のノートが置かれているのに気づいた。

表紙にはこう書かれていた。

「夢日記」




4月3日

夢を記すノートを買った。表紙は青く、海の底のように静かだ。

昨日、SNSで「夢日記を続けると夢を自在に操れる」と誰かが言っていた。馬鹿げている。でも、最近の自分にはそれくらいしか楽しみがない。

会社を辞めてから三ヶ月。昼夜の区別も曖昧になってきた。だからせめて、夢の中だけでも秩序を保とう。

夢は記録すれば定着するという。現実より確かに残るものがあるかもしれない。


4月4日

夢。

知らない街。夕暮れ。灰色の猫がこちらを見ていた。目が金色で、まるで言葉を話せそうだった。

猫が言った。「忘れなければ、思い出になる」

そこで目が覚めた。

意味はよく分からない。だが、なぜかその言葉が頭から離れない。


4月7日

三日分、夢を見なかった。眠っても真っ暗。

夢日記を続けるには「見る」ことが必要なのに。

ノートの空白が怖い。まるで自分の存在が削られていくようだ。


4月8日

夢。

またあの猫が出てきた。今回は廃墟の教室にいた。黒板に「きみはどっち?」と書かれていた。

猫が笑う。「夢を書くと、夢に書かれるよ」

そこで目が覚めた。

ノートを開くと、確かにそこに「夢を書くと夢に書かれる」と、黒いインクで書かれていた。覚えがない。

ボールペンのインクも減っていないのに。


4月9日

一晩中、ノートを見ていた。

書いていない文字が、ページの隅からじわじわ滲んでくる気がした。

まるでノート自体が夢を記録している。

夢を見るのは、俺だけじゃないのかもしれない。


4月11日

夢。

部屋に知らない人が立っていた。顔がない。

俺のノートを読んでいた。

ページをめくるたび、指先が黒く染まっていく。

「君の夢はよくできてる」

そう言って、そいつはノートに指を押しつけた。

目が覚めると、ノートの6ページ目に黒い指紋の跡がついていた。


4月13日

最近、夢と現実の境が曖昧になってきた。

昼間、外を歩いていたら猫の声がした。振り向くと誰もいなかった。

でもその瞬間、金色の光が視界を走った。

まるで夢の中の光景を切り取ったような感じだった。


4月15日

夢。

海の底に沈んでいた。水の中なのに息ができた。

海藻の森の奥に、小さな机と椅子が置かれていて、その上にノートがあった。俺のノートだ。

ページを開くと、「現実」と書かれていた。

そこに波が押し寄せ、文字がにじんだ瞬間に目が覚めた。

起きてノートを見ると、同じページに同じ文字があった。水の跡も。


4月17日

母から電話があった。「最近、声が違う」と言われた。

俺は笑ってごまかした。

でも確かに、自分の声が少しずつ変わっている気がする。

録音して聞いてみた。低く、湿ったような響き。

自分の声じゃない。


4月20日

夢。

俺はまた廃墟の教室にいた。黒板には「きょうも夢を見てる?」と書かれていた。

猫は机の上に座っていた。

「君、もう半分はこっちにいるね」

俺は「こっちってどこだ」と訊いた。

猫は笑った。「どっちが現実か、まだ決めてないの?」

目が覚めた。

ノートの端に猫の毛が一本挟まっていた。金色。


4月22日

眠るのが怖くなってきた。

でも眠らないと、ノートが何かを「失う」気がする。

起きている間、ノートの中で夢が進行している気がするのだ。

試しにページを破ってみた。

夜、夢にノートが出てきた。破いたページの部分に黒い穴が空いていた。

中から手が伸びてきた。俺の手に似ていた。


4月25日

昼間、鏡を見ていたら、鏡の中の俺が一瞬だけ瞬きをしなかった。

ノートを開くと、鏡のページが増えていた。

夢じゃない。だって、破ったページの端が現実でも焦げてるんだ。

つまり、夢の出来事が現実に「転写」されてる。


4月27日

夢。

俺は鏡の中にいた。

外にもう一人の俺が立っていた。そいつが言った。

「こっちは書く側だよ。君は読まれる側」

目が覚める。ノートの1ページ目のタイトルが変わっていた。

「夢日記」ではなく「観察記録」。

筆跡は俺のものじゃない。


4月29日

食欲がない。外にも出ていない。

ノートの文字が増えている。

書いた覚えがないのに。

「猫」「鏡」「指紋」「金の目」「沈む音」――

まるで、俺自身が観察されているようだ。

観察者は誰だ?

もしかして、夢そのものが――


5月1日

夢。

ノートを開く。猫がページの上を歩く。足跡がインクになって残る。

俺が指を伸ばすと、ページが柔らかく沈んだ。

そのまま指が紙の中に吸い込まれていった。

引き抜こうとしたが、抜けなかった。

猫が言った。「もう、こっちの住人だ」


5月2日

現実の右手の指先が黒くなっている。

インクかと思ったが、洗っても落ちない。

指先がじんじんする。

ノートに触れると、痛みが消える。

つまり、俺の体はノートの一部になりつつあるのかもしれない。


5月5日

夢を見ているのか、現実を見ているのか分からない。

ノートの文字が呼吸している。

夜になると、ページが微かに動く音がする。

「カサ、カサ、カサ…」

まるで虫の羽音のようだ。

あれはページをめくる音ではない。

あれは俺の名前を呼ぶ音だ。


5月6日

夢。

ノートの中に部屋があった。机の上にもう一冊ノート。

ページを開くと「現実」と書いてある。

つまり、俺が今いるのは「夢」。

でも、ページを閉じると「現実」が消える。

つまり、夢が現実を飲み込んだ。


5月8日

ノートを燃やそうとした。

だが、火がつかない。

マッチが消えるたび、ノートの中で猫の声がした。

「焼くのは自分の方だよ」

手の甲に黒い文字が浮かんだ。「夢日記」。

まるで焼き印のように。


5月10日

母が訪ねてきた。

俺の顔を見るなり泣き出した。

「あなた、誰?」と言われた。

笑って答えようとしたが、声が出なかった。

喉の奥から、ページをめくるような音がした。


5月13日

鏡を見た。

金色の目をした猫が映っていた。

俺は笑った。

いや、猫が笑ったのかもしれない。


5月15日

ノートに書いているのか、ノートが俺を書いているのか分からない。

ただ、今日も記録を続ける。

なぜなら、書かないと存在が薄れる。

書くことが生きることだ。

生きることが、夢を見ることだ。

夢を見ることが――


5月16日

(文字が滲み、読み取れない)


5月17日

夢。

ページの中に海。

海の底で、金色の猫が微笑む。

「おかえり」

ノートを閉じた瞬間、部屋の中に潮の匂いが広がった。


5月18日

ノートを開く。

中には俺の部屋が描かれている。机、椅子、窓、そして――俺。

ノートの中の俺がこちらを見て、ゆっくりと笑った。

「次は、君の番だ」


5月19日

(記録はここで途切れている)



ページをめくるたび、どこかで猫の声が聞こえた。

遠く、近く、耳の奥で響くように。

気づけば僕は、夢遊病者みたいに本屋の前に立っていた。

手に取ったノートの表紙には、微かに濡れた跡。

まるで誰かが涙を落としたようだった。

帰宅して、最初のページを開く。

ペン先が勝手に動いた。

書かれていた。

「親友を探す夢日記」

書いたのは僕じゃない。

なのに、インクの色は、僕の手の色と同じだった。


最近のAIすごいね、誤字脱字から改行とか苦手なとこ全部やってくれる

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