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第一章 花咲く双子の庭
王都ローゼリアの春は薔薇の香りに包まれていた。
白と黒の二輪の薔薇が宮廷の庭園で対照的に咲き誇る。
それは、王家に仕える名門ディルフィーノ家の双子姉妹を象徴していた。
姉のルシアは金髪に青い瞳、笑顔が眩しいほどに美しく、誰からも愛される令嬢。
一方の妹のセシルは黒髪に紫の瞳で、大人しくて物静か。
表舞台にはほとんど現れず、影のように姉の後ろに控える。
侍女達が主人に隠れてヒソヒソと囁く。
「今日もルシア様は王子様の舞踏会にご招待ですね」
「でもセシル様は……どこか不気味ですものね。あの目の色と言い……まるで呪っているみたい……」
セシルは耳に入って来たその声を聞き流した。
──私は呪ってなどいない。
ただ、姉が笑う度に胸が張り裂けそうになるだけ。
幼い頃。
二人は同じベッドで眠り、同じおもちゃで遊んだ。
だがある日を境にルシアは『光の令嬢』として育てられ、妹のセシルは『影の令嬢』として、王宮の隅に追いやられた。
「セシル、あなたは姉の盾になるのよ」
と、母は冷たく言い聞かせる。
「誰かが悪者を演じなければ王家は安泰を保てない。貴方はその役を果たす為に生まれたの」
──悪者。
その言葉がセシルの心に深く刻まれた。




