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13階段  作者: WAIai
9/29

1話の終わり

しばらく貴明は何もする気も起きなかった。朝起きているのか夜起きているのかさえ分からない。ただ、酒をくらっているだけの壊れた人間のようだった。

「仙人か…」

ボソッと呟く。Aの興奮した顔が忘れられなかった。あんなに仲が良かったのに、隠し事をされたようでつまらなかった。

「だから不思議な術が使えるのか?」

扉を見上げながら、舌打ちする。早く元の状態に戻りたかった。

「…Aに会いに行くか」

Aだけが頼りな気がして、貴明は立ち上がった。



Aの家に着いた貴明は、チャイムを鳴らした。しかし、出てくる気配がない。

「…眠っているのか?」

玄関のドアは簡単に開いた。鍵もかけずに物騒なと思い、少し苛ついた。貴明がここに来るまでに、どれほど苦しんでいるか分かっていないAが憎かった。

「入るぞ」

一言かけてから入ると、貴明はヒッと声をあげた。玄関を開けると、柱からAが首を吊っていたのだ。

「おい!」

慌てて声をかけるが、体が動かなかった。

動け、自分。

そう鼓舞して、何とか体を動かすが、Aの体に触れて愕然とする。Aはもう生きていなかった。末期の癌を抱えているといったが、まさか自殺するとは思わなかった。頭の中にAの笑顔が浮かぶ。しかし、目の前にいるAは既に血の気はなく、うつむきがちだった。

「おい! おいってば!!」

体を揺さぶってみるが、Aは動いてくれない。話かけてもくれなかった。

仙人候補になるんじゃなかったのかよ。

貴明は愕然として座り込む。生きているうちに仙人候補になるんじゃなくて、死んで候補になれということなのだろうか。だとしたら、仙人は憎き相手だと思った。しかしー。

「…何だ、これ」

足元に紙切れを見つけ、手にとってみる。その瞬間、貴明は真っ青になった。

「何だ、これ!!」

保証人の欄に貴明の名前が書かれて印が押されていた。いつの間にこんなものを用意したのか。その前に、なぜ自分の名前と印が押されているのか信じられなかった。

勝手にできるものなのか。

正直な感想だった。しかし、それ以前にAに裏切られたことが大きく心臓をえぐった。

まさか、まさか、まさか。

Aの心の声を知りたかった。それなのに、何も聞こえてこない。最悪の状況だった。

「どうしてーーーーーー」

声がかすれた。この前、会った時のAの顔が浮かぶ。その時にこのことが心の中に分かっていれば、と後悔しても遅い。

因果応報ー。

妻殺しの責任だろうか。神だか、仙人だか知らないがどうして貴明だけ苦しめられるのだろうか。貴明は紙を破ろうと手にかけたが、パトカーの音が聞こえてきて、止める。「ひ」とまた小さく声が出た。

どうして、どうして、どうして。

貴明はAの遺体の前に、膝を崩れ落ちさせた。自分の人生がもう終わった気がしてならなかった。



1話、終わり。

読んでくださって、ありがとうございます。

続いて、2話が始まります。

ただ、登場人物が変わります。

お楽しみにお待ちください。















































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― 新着の感想 ―
[良い点] 1話、終わりお疲れ様。ハラハラした展開で、あっという間に読めたよ。その後、貴明がどうなったか、気になるよ。2話も制作しているんだね。頑張ってね。楽しみにしてるよ((o(´∀`)o))ワクワ…
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