3話の⑦
洋介が入院している最中、心の声が聞こえてくる。
ーくそ、誰も見舞いに来ない。
ー暇だな。病院ってやることがない。
年齢は洋介が一番若いようだった。やはり、階段は見えないらしく、誰も洋介に注目していなかった。ただ、逆に洋介が注目する人がいた。
ーくそ、また株が下がった。
隣の30代くらいの男性の声だった。スマホで何か見ている。洋介は株に興味をもった。なぜなら、彼はずっと数字をおっているようだった。
ー手軽に稼げるのかなぁ?
男を横目で眺める。今度は嬉しそうに口を上げる。
ーよし、回復した。しかも、こことここの会社は買いだな。
ゲームしているかのように楽しそうだった。お金のない洋介でもできるかもしれないと声をかける。
「あの…」
洋介の声は無視をされ、男はスマホをくいるように見つめる。周りの音を気にしていないようだった。
洋介は立ち上がると、男の腕を叩く。
「あのさ、お兄ちゃん」
「…何?」
ようやく洋介に気づき、男は顔を向けてくる。どうやら、隣に自分が居るのも、今気づいたようだ。
洋介は単刀直入に言う。
「株ってどうやってやるの?」
「…。何で知ってるんだよ!!」
顔をしかめられたが、洋介は動じなかった。ここは嘘を言う。
「お兄ちゃん、寝言で言っていたから」
「…ああ、そういうことか」
洋介の言ったことに納得したらしく、男はスマホを一旦、置く。
「子どもには無理だ」
「…何で?」
「口座が必要だからだよ」
「口座…」
お金を稼ぐチャンスだと思ったのだが、面倒くさいようだ。ひとみに頼んでも無理のような気がする。
ー良い案だと思ったのに。
ここは諦めるしかなかった。悔しそうに唇を噛む。
「ほら、早くベッドに戻れ」
シッシと手を振られ、洋介は元に戻った。男はスマホを持つとまた操作し始める。
ーよし、ここは買いだ。
男の声が聞こえてくる。教えてくれれば、洋介でもできそうなのだが、彼はケチなようだった。それにこれ以上聞くのは、怪しまれそうだった。
ー心の声聞こえると楽かも。
頭の上に触れる。重くもないし、鏡で覗くたび、無くなる心配はないらしい。
ーうーん。…まっ、いいっか。
洋介はベッドに横たわる。もう少し、お昼だった。病院生活は快適といえば、快適だった。3食ちゃんと栄養を考えた食事が出てくるし、何よりも美味しかった。
ー今日のメニューは何かなぁ?
楽しそうに口元に笑みを浮かべ、目を閉じたのだった。




