表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13階段  作者: WAIai
23/29

3話の⑤

「う…」

眩しさを感じて目を開くと、真っ白さが際立った。ここはどこだと、洋介は目を瞬かせる。どうやら、自分はベッドで寝ているようだった。

ーどこだ、ここ?

隣にはカーテンがあって、仕切られている。洋介は何がどうなっているのか、思い出そうとする。

ーそういえば…。

男に刺されたはずだと、腹と胸に触れてみる。今度は手が簡単に動いた。2箇所とも何ともなく、ただ頭に包帯を巻かれているようだった。

ーどうなっているんだ?

洋介は身動きする。頭が痛かった。しばらくすると、目が慣れてきて、ここが病院だということが分かってくる。

ー…何で病院?

胸をもう一度触れてみる。包丁で刺された跡はなかった。怪しがっていると、1人の看護師がやってくる。

「あら、起きたの?」

ふくよかな体の女性だった。歳は40くらいだろうか。明るい声で、もう一度言われ、洋介はさすがに起き上がる。

すると、不思議なことが起きた。

ー良かった、起きて。病人のままじゃ、かわいそうだもの。

看護師の口は動いていなかった。洋介はゆっくり目を大きく見開く。

ー何だ、これ。

看護師が喋っていないのに、彼女の声が聞こえた。びっくりしていると、カーテンの隣から聞こえてくる。

ー隣の子ども起きたのか?

こちらも直接話しかけるように、声は普通だった。洋介は戸惑い、思い出す。若い男性のことを。

ーそういえば…、人の声が聞こえるようにするって言ったような。

しかし、傷が無いのか、不思議だった。包帯を巻いているのは額だけだった。その動作を見た看護師の声が聞こえてくる。

ーかわいそうに。階段から落ちるなんて。

「は…?」

階段から落ちたと聞いて、洋介はびっくりする。事実と全然違う。自分は男に刺されたはずだ。それなのに、どうして頭を怪我しているのだろうか。

ー夢の続きか?

頬を抓ってみるが、夢ではなかった。洋介はますます混乱したが、看護師が言ってくる。

「ちょっと、熱があるみたいだから、これを飲んでみて」

差し出されたのはスポーツ飲料だった。洋介は素直に受け取り、口に含む。喉が乾いていたらしく、グビリとどんどん飲んでいく。すると今度は、前から声が聞こえてくる。

ー良いなぁ。俺も飲み物買ってこようかなぁ?

動く気配がした。洋介はスポーツ飲料を飲みながら、考え込む。段々と慣れてきた。子どもだから、慣れるのが早かったのかもしれなかった。

「…あの」

看護師に声をかけると、彼女は笑顔を浮かべる。

「何? 聞きたいことがあるの?」

「ここは…? 病院ですか?」

「そう。病院よ。あなた、アパートの階段から落ちて、運ばれてきたの」

「…」

嘘を吐いているようではなかった。彼女の心の声が同じことを言っているようだったからだ。

洋介は考え込むように、目を細める。この力、便利だと思った。人間は嫌いだが、何が言いたいのか分かり、役立ちそうだった。

「あの、ちょっと…!!」

突然、廊下から慌てた声が聞こえてきた。カツカツとハイヒールの音が聞こえた。

「あんた…」

現れたのはひとみだった。鬼のような形相で洋介を睨んでくる。少しビビりながらも洋介は冷静に言う。

「何? お母さん」

「何じゃないわよ!!」

ひとみの怒りは凄まじかった。心の声が聞こえてくる。

ー金がないのに、この子は全く!! どうしてくれるのよ。

金がない、金がない、金がない。

いつものことだった。

「…ごめん、お母さん」

スポーツ飲料を横のデスクに置くと、洋介は申し訳なさそうに縮こまった。

ひとみはなおも激高し、平手打ちをしてくる。

「痛っ!!」

「何してるんですか!!」

看護師が慌てて、止めに入る。心の声が聞こえてくる。

ー何、この親子。というか、母親、頭がおかしいんじゃないの? 怪我している子どもを叩くなんて。

看護師は洋介の心配をしてくれているようだった。感謝し、叩かれたところを撫でる。熱くて痛かった。母親がもう一度手を振り上げる。

「やめてください!!」

後ろに居た看護師に手を止められ、ひとみは暴れる。若くてカワイイ看護師だった。しかし、ひとみには勝てず、振りほどかれる。

「帰るわよ!!」

いきなり、手首をつかまれ、洋介は何も言えなかった。入院すればお金がかかるのだと分かっていた。諦めの気持ちから、ベッド空出ようとする。しかし、看護師と医師が追加でやってきて、ひとみを止める。

「何してるんですか!? 相手は怪我人ですよ!!」

40代くらいの医師に言われ、ひとみは少し怒りを抑えたようだった。看護師たちが、洋介とひとみの間に入り、壁を作ってくれる。

「検査入院させますから、良いですよね?」

医師の一言に、ひとみが反発する。

「そんな…!! 家にはお金が…」

叫び声は無視され、医師が看護師たちに目配せをする。ひとみを病室から出すように、指示したのが聞こえてきた。

「ちょっと、やめてよ!!」

ひとみが暴れたが、多数の看護師たちには勝てず、病室を後にする。残ったのは、有名な歌手に似ている医師のみだった。

「大丈夫かい?」

本当に心配している声で、洋介はコクリと頷く。医師の心の声を聞こうと、黙ったままでいる。

「2、3日したら大丈夫かな?」

包帯を見つめられ、洋介はそこに触れようとする。しかし、医師が

「やめたほうがいい。痛いだろう?」

と言ってきたので、手を止める。

「あの…」

飲み物で潤しているからか、スムーズに声が出た。医師が穏やかな眼差しで、見つめてくる。

「何?」

「僕、階段から落ちたのですか?」

「そうだよ」

嘘ではなかった。一体、どうなっているのだろうか?

ーあの男の人、仙人って言っていたけど…。     

本物かもしれないと思った。本当に怪我しているのは頭なのだ。

「じゃあ、もう少し休んで」

横になるように言われ、ベッドに横たわる。どうやら、4人部屋のようだった。

ー入院か…。

初めてのことだった。ひとみが言ったように、金がかかるが、仕方のないことだった。

ーお母さんに後で怒られるな。

洋介の心の声はどうやら医師には聞こえないようだった。頭を撫でてくれると、病室から出ていく。洋介も少し疲れたので、目を瞑ることにした。
















 
















































    







































評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ