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13階段  作者: WAIai
18/29

2話の終わり

しかし、人生は甘くない。

「あー、疲れた」

凛はアパートに帰ると、まずはくるみに触れようとした。くるみは幸運の神様のようなものだった。

「くるみ様? くるみ様?」

呼びかけるが、いつもの反応がない。具合でも悪くしたのだろうか。

心配になり、凛は部屋へ上がる。いつもなら、ベッドの辺りに居るのだが、それもない。

ーいない! どこ!!

凛は焦って部屋という部屋をあさる。だが、くるみの姿はどこにもない。

「そんな…」

外にでも出たのかと思い、窓を確認するが鍵はかかっている。

凛は武者震いをする。幸運が逃げた気がしてきた。

「くるみ様!! どこに居るの?」

テーブルの下やトイレを確認してもいない。

凛は呆然として、その場に崩れ落ちる。

ーそうだ! 階段!!

凛は洗面台に向かい、鏡をのぞく。階段はまだあった。そのことに安堵したはいいが、今度は不安が増してくる。

ー私、大丈夫かしら?

その予言は当たるのだった。



「ー別れよう」

久しぶりの休日にカフェで彼とくつろいでいたら、突然、言われた。

「どうして!!」

「ごめん。今の君、好きじゃないんだ」

彼ははっきり言うと、カップを持って立ち上がった。

凛も立ち上がろうとしたが、彼の背中がそれを拒んでいた。

「まさか…、どうして…」

泣きたい気分だった。あんなに仲睦まじかったのに、急にふられたのである。

凛は混乱した。思い当たるとしたら、くるみがいなくなったことだった。

ー運が逃げてる。

その通り、凛は不幸になりつつあった。ちやほやされて傲慢になった分、相手側から怒りや蔑みの言葉を心の中でぶつけられるようになってきたのだ。

さすがにまずいと思い、優しくしようと思ったのだが、上手くいかない。上手い言葉が出なくなっていた。

ーまさか、元の自分に戻るんじゃ…。

嫌な予感がして、カップを見下ろす。情けない自分の顔が浮かんでいた。

凛は首をふると、一気に飲み物を口にする。

「まだ大丈夫、まだ大丈夫、まだ大丈夫」

何の根拠もないのにひとりごちた。



やったことは返されるもので、凛は出社すると、自分の机を見る。1枚の紙があった。そこには、凛がお金を横領していると書かれていた。

「そんな!! バカな!?」

大声が出た。周囲の人間の悪意の視線が向けられる。今の凛に味方は居ないようだった。

ー早く捕まれよ、ババア。

ーどこかへ行け。

酷い言葉が飛んでくる。凛は紙を丸めると、床に投げつけた。それからいたたまれずに、会社から飛び出す。タクシーを止めると、自宅アパートに帰ったのだった。

「くるみ様!! くるみ様!!」

呼んでもどこにも居ない。凛はその場にへたり込んだ。

「…私、また不幸になるのー?」

弱々しい声になった。もちろん、応える人間は居ない。

凛は世界で一人ぼっちになった気がした。涙が溢れてくる。

「私のせいだ…」

そう言うと、子どものように泣きじゃくるのだった。



「ー人間とは愚かだが、面白いものだ」

若い仙人はそう言うと、くるみの頭を撫でてやる。中華風の着物を纏い、長い髪を結っている。

「さてと…」

仙人は立ち上がると、くるみが甘えるように足にすり寄ってくる。

「帰らなくていいのか?」  

正直に聞くと、くるみは「にゃあ」と答えてきた。主人の元に帰る気はなさそうだった。

「そうか。お疲れ様」

そう言うと、側に立つ男性の方を向く。自殺したAだった。

「ああいう結末で良かったのか?」

「後悔はありません」

はっきり答えると、Aはくるみを抱き上げた。不思議なことに、ここでは実体でなくても触れられるのだった。

「それでは行こうー」

仙人は歩き出す。その後ろからくるみとAがついて来る。

ー幸せになれるのは、ごくわずか。

仙人は薄く笑うと、扉の中に消えていった。



2話、終わり。

読んでくださって、ありがとうございます。

続いて、3話が始まります。

また、登場人物が変わります。

お楽しみにお待ちください。





































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