2話の⑤
外に出ると、雑音がひどくなった。
ー何あれ。変なの。
ー誰か助けてくれないかなぁ。
心の声があちらこちらから聞こえてくる。凛はヘッドホンをして音楽を流しているのだが、声は聞こえなくならなかった。
ーでも…。
勇気を出して会社に向かっているのだったが、階段のことは誰も口にしなかった。目立つはずなのに、皆に見えていないようだった。
ひとまずはホッとするが、どうやったら階段が取れるのか謎だった。引っぱったり、押したりしたが、無駄だったのだ。
会社に着いた。凛は深く息を吐くと、決意したように中に入った。
相変わらず、凛は意地悪されていた。それに心の声も聞こえてくる。
ーうざいんだよ、この女。
ーもっと早く仕事してよ。
直接言われるよりもショックだった。相手が平気でそう思っているからだった。
「あ!!」
コーヒーの粉をこぼして、凛は慌てる。皆の視線が突き刺さってくる。
ー何で、私だけ。
惨めだった。目頭を拭くと、雑巾を取りに向かう。すると、給湯室から声がしてきた。友子のとりまき達だった。楽しそうに雑談している。2、3人だろうか。また馬鹿にされると思い、胃を痛くしていると、心の声が聞こえてきた。
ーこの子、化粧濃いのよね。ちゃんと、鏡を見ているのかしら。
ーこのおばさん、嫌い。悪口でも広めようかなぁ。
凛は愕然とした。仲が良いと思っていたのだが、そういうわけではなかったらしい。利害関係なのかと知ると、どこかホッとした。しかし、神様は凛に味方してくれるようで、思いがけないことを耳にする。
ーお局、不倫しているのよね。
「…は?」
思わず口をついてでたので、手をあてて殺す。良いことを聞いたような気がした。
「あの人、凄い人よね。テキパキ働いて」
「カッコいいわよね」
表面上はほめているのだが、心の声は別のことを教えてくれる。
ー部長と不倫しているのよねぇ。だから、あんなに偉そうにできるのかしら?
ー不幸にならないかなぁ? 楽しみ。
あれだけ持ち上げておいて、心の中では、友子を見下しているようだった。
凛はそのことを暴露すれば、今の状況から抜け出せるかもしれないと思ったのだ。
ーこの力、厄介だけど、使えるかも。
期待に胸をふくらませると、雑巾を取りに行く中、どうするか考え始めた。




