2話の③
次に目覚めた時、若い男性が立っていた。韓流スターのように顔が美しく、20代前半に見える。
「…ここは?」
乾いた声が出た。慌てて喉に触るが、血は出ていない。包丁も側になかった。
「ーお前はなぜここに来た?」
男性の言っている意味が分からなかった。子どもみたいに首を横に振ると、男性が優しげに言ってくる。
「お前はまだ来るのが早い。だが来たからには、力を与えてやる」
「力…?」
「そう力だ。人の心が読める能力を与える」
「へ?」
とぼけた声が出た。人の心が読めるなんて、あり得ない。のろまとバカにされる自分にもそれくらいの嘘は分かった。
「ふざけ…!?」
怒鳴り返そうとしたが、喉は痛くなかった。包丁で首を切ったはずなのに。
すると、「にゃあ」と声がした。側にくるみが居たのだ。
「お前…」
凛が手を伸ばすと、くるみは甘えるように寄ってきた。凛も優しく撫でる。
「猫がいいかもな」
男性は意味不明なことを言い、凛の額に触れてきた。嫌悪感はなかった。
「…何これ!!」
階段の数は13段。不吉な数字だが、怖いとは思わなかった。凛が怖いのは生きている人間だった。それ以外は、普通に冷静だった。
「あなたはーーー」
誰なのか。聞くと、男性ははにかんだように笑う。
「私は仙人だ。信じるも信じないのもお前次第だ」
「仙人…?」
夢を見ているのかと、顔をつけるが、まぼろしではないようだった。
「あっ、これ」
くるみが仙人と名乗った男性の元に駆け寄る。男性はかがむとくるみの頭を撫でてくれる。
「お前が呼んだのか?」
くるみは「にゃあ」と鳴いただけだった。気持ち良さそうに目を細めている。
「お前、この猫を大事にしているんだな」
男性に話しかけられ、頷く。すると、男性がくるみを抱きかかえ、階段にのせる。頭が重くなるかと思ったが、全然そんなことはなかった。
「ー行って来い」
男性が促すと、くるみが階段を駆け上がっていく。凛も目でそれを追った。階段の先には扉があった。開けられるのだろうかと心配していたが、くるみは平気で器用に扉を開ける。
「中にー」
「しっ」
男性が人差し指を唇にあてる。内緒のようだった。
「すぐに戻ってくる」
宣言どおり、くるみは戻ってきた。しかし、凛は驚く。毛並みが黄金色をしていたからだ。美しい体だが、どうして輝いているのか不思議だった。
「お前のためだ。大切にしろよ」
男性はくるみを出迎えると、凛に手渡してきた。凛は軽く頭をさげ、受け取る。いつもの重さだった。見る見るうちに、輝きが強くなり、凛と一体となっていく。
「ちょっと…!!」
「大丈夫だ。力を与えた」
何のー。言葉になる前に、くるみの姿は凛の中へと消えていく。体に触れてみるが、不審な箇所は無かった。力を与えたというのはどういうことなのだろうか。
「では、よしなに」
男性はそう言うと、凛の目の前が真っ暗になった。凛は訳の分からないまま、なすがされるしかなかった。




