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13階段  作者: WAIai
12/29

2話の③

次に目覚めた時、若い男性が立っていた。韓流スターのように顔が美しく、20代前半に見える。

「…ここは?」

乾いた声が出た。慌てて喉に触るが、血は出ていない。包丁も側になかった。

「ーお前はなぜここに来た?」

男性の言っている意味が分からなかった。子どもみたいに首を横に振ると、男性が優しげに言ってくる。

「お前はまだ来るのが早い。だが来たからには、力を与えてやる」

「力…?」

「そう力だ。人の心が読める能力を与える」

「へ?」

とぼけた声が出た。人の心が読めるなんて、あり得ない。のろまとバカにされる自分にもそれくらいの嘘は分かった。

「ふざけ…!?」

怒鳴り返そうとしたが、喉は痛くなかった。包丁で首を切ったはずなのに。

すると、「にゃあ」と声がした。側にくるみが居たのだ。

「お前…」

凛が手を伸ばすと、くるみは甘えるように寄ってきた。凛も優しく撫でる。

「猫がいいかもな」

男性は意味不明なことを言い、凛の額に触れてきた。嫌悪感はなかった。

「…何これ!!」

階段の数は13段。不吉な数字だが、怖いとは思わなかった。凛が怖いのは生きている人間だった。それ以外は、普通に冷静だった。

「あなたはーーー」

誰なのか。聞くと、男性ははにかんだように笑う。

「私は仙人だ。信じるも信じないのもお前次第だ」

「仙人…?」

夢を見ているのかと、顔をつけるが、まぼろしではないようだった。

「あっ、これ」

くるみが仙人と名乗った男性の元に駆け寄る。男性はかがむとくるみの頭を撫でてくれる。

「お前が呼んだのか?」

くるみは「にゃあ」と鳴いただけだった。気持ち良さそうに目を細めている。

「お前、この猫を大事にしているんだな」

男性に話しかけられ、頷く。すると、男性がくるみを抱きかかえ、階段にのせる。頭が重くなるかと思ったが、全然そんなことはなかった。

「ー行って来い」

男性が促すと、くるみが階段を駆け上がっていく。凛も目でそれを追った。階段の先には扉があった。開けられるのだろうかと心配していたが、くるみは平気で器用に扉を開ける。

「中にー」

「しっ」

男性が人差し指を唇にあてる。内緒のようだった。

「すぐに戻ってくる」

宣言どおり、くるみは戻ってきた。しかし、凛は驚く。毛並みが黄金色をしていたからだ。美しい体だが、どうして輝いているのか不思議だった。

「お前のためだ。大切にしろよ」

男性はくるみを出迎えると、凛に手渡してきた。凛は軽く頭をさげ、受け取る。いつもの重さだった。見る見るうちに、輝きが強くなり、凛と一体となっていく。

「ちょっと…!!」

「大丈夫だ。力を与えた」

何のー。言葉になる前に、くるみの姿は凛の中へと消えていく。体に触れてみるが、不審な箇所は無かった。力を与えたというのはどういうことなのだろうか。

「では、よしなに」

男性はそう言うと、凛の目の前が真っ暗になった。凛は訳の分からないまま、なすがされるしかなかった。



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