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恋に恋するロストボーイ

「今日は部屋で読書するのに何でそんなドレス着るんですか? 偉い人に会うとか?」


 きつくコルセットを絞めるジーとドレスを準備するアールを睨む。アールの手にはお母様が五分かけて悩んだ特注品の真っ赤のドレスが。



「今日は部屋で読書するのに何でそんなドレス着るんですか? 偉い人に会うとか?」


 きつくコルセットを絞めるジーとドレスを準備するアールを睨む。アールの手にはお母様が五分かけて悩んだ特注品の真っ赤のドレスが。


「偉い人に会うのは嫌ですけどわたしは赤が似合う」


 結局勘弁し、わたしは一階の客間へと移動する。中にはだれもいないが廊下から部屋が妙なくらい整っていた。ジーが頑張ったのだろうか。


「ねえ、誰に会うの? まだ来ないなら頭の飾り一個取ってくれない? 多すぎるとバカに見える」


 わたしはソファに座ってアールを呼ぶ。でもアールは気まずそうにお母様を見つめるだけで何もしない。


「はあ、わたし男装しなくていいの? メルの遺志で男として生きなきゃなんでしょ?」

「エス、もう自由に生きていいのよ。ちゃんと女の子として学園にも登録していいし、婚約者だって……」

「到着されました!」


 ジーが水晶玉のようなものを持って叫ぶ。わたしには見えないが何かが映ってるようだ。


「アールはエス様の衣装を整えて。エル様、へまは許されませんからね」


 ドアがノックされる。ジーがゆっくり扉を開ける。そこには、綺麗な恰好をした少年がいた。



「初めまして、ウァニュ家の御令嬢。私はレナード・キューイ、あなた様の婚約者としてお呼びいただいて光栄です」

「は?」


 ん、んん!? 婚約者?


「あのお母様?」


 エルに鋭い視線を向けるが顔を逸らされた。アールもジーも同じようにわたしをイラつかせる。


 目の前の、レナード・キューイ少年は染めた感じのある金髪に琥珀色の目。顔は頭良いのか悪いのか伝わらない微妙な顔。そして年齢は十六ぐらいか。わたしまだ九歳なんだけど。いや、見た目で判断してはいけない。大人っぽいだけかもしれないし。


「レナード様、何年生ですか?」

「中等部三年、十五歳だ」


 おおう、予想通りの政略結婚。


「キューイというとアダーステルト国の貴族ですよね、失礼ですがわたしは嫁入りする気は……」

「あ、婿入りです」


 ……?


「えーっと、レナード様が、わたしの婿養子に?」

「はい、その通りです。ですからレナードとお呼びしてください」

「……ご実家は?」

「兄上が継ぐと決まりました。先日中央騎士団を退職して中央所属のウァニュ家からニャリーン令嬢をもらいまして。そんなときこの縁談話が、運命かと思いました。キューイ一家はウァニュ家と仲が良くて、仕事でもザック様と何度もお会いしておりました」


 話が一つも入ってこない。なんで急にこいつと結婚しなきゃいけないの!


「そうなんですか、楽しい時間は過ぎるのが早いですね。またお会いできることを願っています。では」

「え? あ、では」


 半強制的にレナードを帰宅させ、エルに詰め寄る。


「ごめんなさいね、でもあなたのためなのよ」


 は? わたし結婚したいなんて一度も言ってないけど。


「あなたが女の子として普通に生きられるようにって、お兄様も。でも確かにちょっと会うのが早かったかもしれないわね。もう三年くらい待ってもらいましょう。あれから何年か経つからもういいかと思ってたわ」


 ……ん?


「お母様、どういうことですか?」

「え? えぇと、何年か前にエスに報告したばかりだから、てっきり心構えしていたのかと」

「!?」


 お、思い出した。そういえば一年の終わりごろに婚約者が出来たと報告があった。手紙だけだしあれから二年近く経っていたので忘れていたが、当時七歳にして既婚者になってたんだ。


「そうでした、婚約の記憶がなくて。なしにできます?」


 わたしの言葉にお母様は固まる。


「婚約を、なしにするの? まだわからないかもしれないけど魔界では……ちょっと、待ちなさい!」


 長くなりそうなのでそそくさと部屋を出る。アールは困惑してるがジーはすぐについてくる。


「エス様、少々わがままが過ぎますよ」

「そうですか? 急に婚約者を決められてたんですよ。ジーはそこら辺自由にできるかもしれませんが……」

「エス様、好きな人います?」

「はっ!? なんですか! 急に!」


 ジーの真面目な顔からまさかの言葉。わたしは足を止め、ジーに向き合う。


「いません、まだ九歳ですし」

「そうですか。じゃあレナード様との結婚は避けられないでしょう。相手がいるなら別でしたが」


 ん? わたしに恋人ができれば強制結婚は免れる?

 これはもう、相手見つけるしかないでしょ。

次回 見えない本性

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