幸せの在りか
ザックの閉ざされた書斎には興味深い物が山ほどあった。テディベアの作り方、魔界にあるはずがない英語の本、子供向けの魔界練習絵本。
特に興味深いのは宝石でデコられた箱だ。その箱にもカギがかけられていて部屋中探しても鍵はない。そういえばザックは日頃から十字架のネックレスにジャラジャラ付けていた。その中にこの箱の鍵もあったかもしれない。
わたしは隣の寝室に行ってクローゼットを漁る。コートやスーツ、ポンチョのような部屋着はあるがアクセサリーはない。諦めて書斎に戻ろうとしたら鏡が畳まれたドレッサーが目に入る。引き出しを開けると見事、アクセサリーが入っていた。
キラキラしたものばかりでつい何個か失敬してしまった。でもダイヤっぽいものは一個しか盗ってない、自制心。
お目当ての十字架はなかった。きっと付けているのだろう。
「じゃああれをやるしかないな」
わたしは懐から杖を出して深呼吸する。目を開けると箱は開いていた。さっそく中身を出すと、予想外のものだった。
「手紙!?」
宝石だらけの宝箱に鍵までつけて、入ってるのが手紙!? たかが手紙?
あのザックが手紙を残すのも、文通相手がいるのもおかしい。読まねば一生後悔する! ごめんね、ザック!
宛名を見る。“生涯あなたの味方メルより”おぉ、お母様からだ。中身を読むのに気が引ける。もう引き返せないけど。
“あなたの想いは受け取れません。きっとわたしよりいい人が見つかるはずです”これだけ?高そうな便箋使って書く手紙がこれだけ? うん、ザックはメルに告白したんだろうね、勘だけど当たってる。
二通目を見る。
“今日学園でスクイブと揉み合いになったと聞きました。わたしの事で揉めているのなら今夜ブルーモーテルで会いましょう”
モーテル、ちょっと休憩するのに快適なのだろう。そしてこの日ザックがモーテルに行ったのなら、二人は……。わたしは三通目を開ける。
“昨夜のことはなかったことにしましょう、あなたにそんな気はありません。わたしはこれからの人生をスクイブと歩んでいきます”
まさかの結婚報告。メルは在学中に教師のスクイブと関係してたのか。ってかザックどんまい。四通目を開ける。
“妊娠しました。子供の後継人をあなたに任せたいです。S・J、毎日お腹を蹴る元気な男の子です”
あれ? 男の子? たしかに実母の願いで男として生きてるけど。
箱には手紙が残っていなかった。これで最後だったみたい。
「……見なかったことにしよ」
この後一時間書斎を探したが結界についての書類は見つかることなく夜を迎えた
次回




