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きせいちゅ

 イェーニット学園、春の休暇。三年に上がる前の夏の休暇ではビーと学園内のホテルに泊まり、三ヶ月前の冬の休暇ではシックのお屋敷に滞在。そして春の休暇は帰省だ。

 休暇は三週間あるが外出許可をもらえたのは一週間だけ。一週間のうち最初の四日間はレーシェンファースのザック宅、三日間はイェーニット学園の近くにあるスクイブ宅。わたし的にはレーシェンファースに帰れればいいが、スクイブは実父の自分より義母を優先するのが許せなかったのか、彼の家にも行くことになった。



「外からこの屋敷を見るなんて新鮮です。本当にレーシェンファースに戻ってきたんですね」


 スクイブの犯罪魔法(転移陣)でここまで来たため、馬車で何週間のところを3秒まで短縮できた。馬車酔いが激しいわたしにとっては最高だが、馬車代を事前に払ってくれたお母様には申し訳ない。お金ももうスクイブの懐に入ったし。


「エスちゃん! 早かったわね、おかえり」


 屋敷の門を開けるとエルが出迎えてくれた。後ろには扉を開けるアールとジーがいた。わたしはエルの気が済むまでハグに答え、アールとジーにも軽く抱きつく。


「お……大きくなりましたね、エス様」


 アールが小さくなったと思ったらわたしが成長したのか。ビーともエイとも目線が変わらなかったからわからなかったけどちゃんと成長してるんだ。


「馬車でお疲れでしょう。エス様、部屋に行ってお茶にしませんか?」

「あ、うーん……」


 ジーの言葉に移動すると察したアールとエルがわたしの後ろにくっつく。しかしジーはわたしの前に行き、玄関を開けて部屋まで案内してくれる。きっとわたしが自分の部屋の場所を覚えていないことに気付いたんだろう。変わらず気配りができる。学園まで連れて行きたかったよ。


「どうぞお座りに。アップルティーですか?」

「いや、氷の入った普通のアイスティーがいいな」


 わたしがそう言うと三人の顔が凍る。まあ、ちょっと前までシロップとアップルティーの半々が好きだったけど今は冷たいお茶が好きだ。シロップの甘さにはうんざりしてしまう。


「そのぉ……私魔法が苦手なもんで、氷は作れません」

「生憎わたくしも氷は作れないわ。山へ行ったら雪が取れるけど、どうする?」


 あれ、氷って魔法で作るんだっけ? 学園では常にあったから分かんないや。


「じゃあ普通のアイスティーでいいです。ここら辺に山があるのですか?」

「馬車で半日の場所です、結界があるので入れないと思いますけど」


 アールがお茶を作るジーを手伝いながら答える。エルはわたしの隣に座ってアールの姿を見ていた。二人の恋はうまくいったのだろうか。レーシェンファースのお姫様とただの執事。うまく行きようがないけどそれを超えるのが愛だからね。わたしの部屋の前でキスをしていた二人には結ばれてほしい。


「半日ですか、四日も滞在するんですし取りに行けません? それか冷凍庫は?」


 わたしはアイスティーとは呼べない温度のティーを飲みながらジーを見つめる。


「冷凍室ならありますけど……氷を作るには温度が低いと思います。お肉も三日で腐ってしまいますし」

「冷蔵庫でもないじゃん。山の結界は壊せる?」


 お母様は首を傾げて執事二人を見る。


「どうでしょう、ザック様が仕掛けた結界なので。書斎に結界に関しての書類が残ってるかもしれません。行ってみますか?」

「わたしがそれを聞いて行かないと思う? 書斎まで案内して」


 薄手のカーディガンを羽織って部屋を出て「早く来い」とジェスチャーをするがみんなは動かない。ビー達なら笑顔で先陣を切ってくれるのに。


「書斎には鍵がかかっていてその鍵はザック様だけが持っています」

「つまり、こじ開ければいいと?」

「つまり! 入っちゃ……」

「離宮? それともザックの寝室の隣ですか?」


 アールと口論すること数分。離宮の三階“閉ざされた書斎”に案内された。



 三年間閉ざされていたからか開けるのに魔術を三つも使った。ザックのことだから魔法で施錠してあると思ったら普通の鍵だったらしい。スクイブの言葉を引用すると、開けて下さいと言っているようなものだ。


「荒っぽくなったわね、学園でどのような子とつるんでいるの?」


 お母様は母親らしい質問をする。ちなみに血のつながりは薄い。


「ウァルティーニ国の娘とお父様の甥とここの王子」


 予想より豪華な友人関係だったのか三人は静かになった。わたしは書斎に侵入して机の上を指で一撫でする。三年閉ざされていたのにホコリは溜まっていない。不思議。


「さーて、機密文書はどこにあるかなー?」


 一番怪しいデスクの鍵付き引き出しを魔法で開けると、中には二枚の写真と二枚の書類が入ってあった。


「ん? 誰だこれ」


 ジーが駆け寄り目を見開く。


「エス様の生みの母、メル様ですよ」

「あ、そう。わ! もう一枚はわたしとザックのツーショットだ! ザックったらわたしの事大好きかよ! まあ実際そうなんだろうけど」


 わたしのテンションの高さにドン引きした三人は少し離れた客間に移動した。9歳の子供が立ち入り禁止の部屋を探索するのだ、テンションが上がって普通。


「さーて、書類は何かな?」


 写真を机に置いて引き出しから書類を出す。

“養子縁組届” “養子離縁届”


「あ、ダメなやつだこれ」


 書類をそっと引き出しに戻す。魔界は提出分と自分用で二枚書類を書くからな、あんな感じで保管するのか。


「……」


 わたしはザックの()()で、もう()()でもないんだな。

次回 幸せの在りか

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