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面会

「…お母様…アール」


 来ることは分かっていた。でも実際に会うと気まずい。

 多分だけど、お母様もアール派だと思うし。いつものわたしじゃない、わたしの事、不思議に思ってたんだよね。


「エス、ごめんなさい」


 お母様がわたしを抱きしめる。わたしはびっくりして尻餅をついてしまった。それでもお母様は離れない。


「お、お母様?」


「ごめんね、ごめんね。疑っちゃってごめんなさい。エスはエスよね」


 わたしは頬が濡れる感覚がした。そこで気づいた。お母様は泣いていたのだ。


「おい、エル、淑女としての振る舞いは忘れたのか?」

「お兄様…」


 やっぱりイケメンさんとお母様は兄妹だったのか。ってことはこの閻魔と呼ばれてるイケメンは叔父って事か。こんな叔父やだな。


「ごめんなさいねエス。急に抱きついてしまって。」

「いえいえ、お母様。良いんです」


 そこに実行犯である、アールが来た。彼はわたしの目の前で跪く。


「エス様、勘違いしてすみませんでした。許してもらえるとは思っていません。けれど……」

「アール、謝罪は結構です。何故このようなことをしたのか、話して下さいませ?」


 イケメンさんも、ジーも、お母様も、アールもわたしが許すと思っていたのだろう。何も考えていない幼児だと思っていたのだろう。みんな表情は変わらないものの、空気は変わった。


「そうだな。何故監禁して私に預けることになったのか、話してくれ」


 イケメンさんはそう言いながらみんなに席を進める。

 それを見て、みんなが席に座る。わたしはジーに座らせてもらう。


「ではまず何があったのか? 私に預ける経緯を教えてもらいたい」


 イケメンはそう言いながらお母様を見る。その視線に気付いたのかお母様が口を開く。


「はい、お兄様。全てお話致します。まずエス様を監禁した事ですが、わたくしがアールにお願いしたのです。もしかしたらと思って…」


「エル様、『もしかしたら』とはなにかも教えてあげて下さい。エス様は何もわかりません」


 ジーの問いにお母様は黙る。

 ……もしかしたらって中身が違うってこと? 違うよね? うん。絶対に違う。


「その……『転生者』ってこと」


 空気が凍りつく。

 ……まさか気づかれていたなんて。

 そこでイケメンは納得したような顔で口を開く。


「なるほど。そういうことがあったのか。まぁ、ここでは人間界からの転生者は幽閉されるからな。親族なら守りたくなる気持ちも分かる」

「えっ…じゃ…あ、わたしは、幽閉……されるのですか?」


 幽閉されるんだ。転生者って。一生を牢屋で過ごすなんて。


「エス、お前は人間界のことを忘れて魔界で生きるか、魔力を絞られる一生を過ごすか。どっちが良い?」

「はい?」


 え? 選択権があるの? 転生者は即、幽閉じゃ無いの?


「私も鬼じゃ無い。選択権をやろう」


 まぁ、鬼のツノ無いけど悪魔ですもんね。魔族ジョークなのかな?


「聞いているのか? エス」

「あっ、はい。聞いています」


 人間界のことを忘れて魔界で生きるか、魔力を絞られる一生を過ごすか、かぁ。

 いや、誰でも一択じゃ無い?


「こんな腐った所で生活出来るわけがありません。幽閉一択です。」

「…腐った…ところ?…」


 ジーが驚愕の表情でこちらを見てくる。わたし的にはそんなに驚くことでは無いと思うけど。


「エスちゃん? 幽閉されたら、わたくし達と一生会えないのよ?」


 エルが涙を流しながらわたしを見る。


「わたしからしたら、家族でもなんでも無いですもの。当然の選択でしょう? エルさん?」


「そ…んな…」


 エルは絶望した顔になる。それとは裏腹にイケメンさんはイケメンらしく満面の笑みでわたしを見てくる。悪魔じゃなかったら、わたしのお婿に欲しいぐらいだね。


「気に入った。エス、いや、セーカ?」


 え? は? いま、ザックさん、わたしの、前世の名前を言ったの? 聞き間違い、だよね? 転生者って事は言われたけど……前世の名前、何で知ってるの?

 わたしは怖くなって俯く。すると、エルが腫れた目でザックを見ながら口を開く。


「お兄様、わたくし、エスと二人だけで話がしたいわ。隣の下の客室をお借りしても良くて?」


 エルは何度か瞬きをした後、ため息を吐いた。


「……あぁ、他の部屋には立ち入らないように。ジー、鍵を」

「はい、こちらに」


 ジーはザックに鍵を渡す。そしてザックはその鍵をエルに渡す。

 鍵を貰ったエルは椅子を降り、扉に向かって歩き出した。

 わたしも椅子から降りようとした瞬間、エルが急に止まった。


「着いて来て下さい」

「分かりました」


 ……分かっていました。


 二人で歩き出す。


 エルは客室まで一度もわたしを振り返らなかった。

次回 アールの思惑

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