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教えてくれYO!母のことWOW!

 先日会ったシシー・ウァニュが言うにどうやらわたしの母親メルはシシーの父の不倫でできた子供とのこと。彼は既に亡くなって詳しく聞くことは出来ない。こういうときはどうすればいい? 簡単だ。わたしの父親、スクイブに聞きに行けばいい!

 職員室で昼食を食べているスクイブに凸り、真剣なまなざしで話があると言ったら面談室に連れて行ってくれた。


「はあ? メルの出自? 詳しくは知らんが……ウァニュ家を誇れるような血じゃないと言っていたな」


 ウァニュ家を誇れない、確かにウァニュ家当主の不倫でできた子供は正妻の子とは同じ扱いじゃないだろうけど。それとも不倫した男が婿入り?


「他に知ってることはないのですか?」


 スクイブは少し考えて眉を下げた。


「……メルもこの学園の出身だ。まだ倉庫に入学時の書類が残ってるはず。バレたら停学どころじゃないが、それでも行くか?」

「もちろん」


 バレたら退学、スリル満点のスクイブと倉庫探検が始まった。卒業生の個人情報を全て持っていると考えたらヤバイ学園だが、そのおかげでメルのことを知れるのだ。感謝しないといけない。そして時間があったらザックとスクイブのプライベートな情報もゲットしよう。もしもの時の弱みを握れる。


「うわぁ、広いですね。どの棚にメルの書類が?」

「年代からしてここら辺だ、ウァニュ家だからWの場所にあるはずだが……あぁ、あった」


 スクイブは一つのファイルを取り出して中を見る。ザック宅で何年か前に見たメルの写真と同じ人物が制服を着ている。何度見ても髪と目の色だけ茶色にしたらセイカ時代のお母さんにそっくりだ。他人の空似だといいが。


「家系図の欄、見るか?」


 スクイブは聞いたこともない欄の書類を見せてくれた。


 父ウォルバー・ウァニュ―母シュリフィーユ・アップルバウム(旧)

           |

      娘メルフィーユ・ウァニュ


「え、これだけ?」


 わたしは普通の親子の家系図に戸惑い、他のページも見る。しかし家系図はこれで終わっている。スクイブは首を傾げながら別の棚に移動した。


「ちょ、待ってくださいよ!」


 こんな広い場所に一人でいたら怖い。スクイブの後ろをついて行き彼が止まって取り出したファイルの名前をのぞき見する。シシー・ウァニュ、これはシシーのファイルなのだ。


「おい、これを見ろ」


 スクイブはシシーの家系図の欄を見せてくれた。そこにはさっき見た名前が。


 父ウォルバー・ウァニュ―母ドルチェ・バーグ(旧)

            |

        長男シシー・ウァニュ


「父親の名前が同じですね、シシーの言っていたことは本当だったのですか。それより入学時期が五十年は違いますよ、ウォルバー・ウァニュはシュリフィーユ・アップルバウムと再婚したのでしょうか」

「あ、あぁ、そうみたいだな。あとシュリフィーユはお前の実の祖母だそ」

「知ってます」


 それからわたしとスクイブはシシーの息子であるジークとザックの家系図を興味本位で見た。


 父シシー・ウァニュ―母マッカベリー・バッジ(旧)

           |

 長男ジーク・ウァニュ 次男ザック・ウァニュ


「クソッ、ザックは普通の生まれか!」


 なぜかスクイブが落ち込んでいた。わたしはその隙にスクイブのファイルを探す。スクイブの苗字は……あれ? スクイブの苗字ってなんだっけ? わからなくてSの場所を探したら普通にあった。名前の欄もスクイブとしか書かれていない。学生時代のスクイブも相変わらず顔が怖い。

 えーっと家系図の欄は……、


「あれ? ない」


 どのページを探してもスクイブの家系図はなかった。親の連絡手段の欄の書類もない。なぜだろうか。わたしは不思議に思ってすべてのページを細かく見ようとするがスクイブがザックのファイルに飽きてこちらに来ている。急いでファイルからスクイブの書類を全て出し、ポケットに突っ込む。


「エス、もう帰るか?」

「え、えぇ」


 わたしはスクイブと別れ、寮に戻って無断で持ち出したスクイブの書類を読み始める。


「経済的困窮……英雄の素質あり……編入……親他界……親他界!?」


 食堂で昼食をとりながら見る内容じゃなかったと後悔しながら読み進めると、どうやらスクイブがイェーニット学園に入学する前の年に両親が他界しているようだった。わたしの祖父母にあたる人だ。なぜ亡くなったのか、なぜ両親ともになくなったのか気になる。


「エス、遅いお昼ね」ビーが社会学の教科書を持ってわたしの隣に座る。「何を見てるの?」


 次の講義は一時間後なので間食を食べに来たのだろう。わたしは書類をビーに見せてステーキを飲み込む。


「スクイブの個人情報、裏ルートでゲットしたの。秘密だよ」


 ビーは軽くうなずきながら目を動かす。そして書類を何枚かめくって首を傾げる。わたしは不思議に思い、一緒に見てみるとそこには記事が挟まっていた。

『デルフィーノ一家毒殺事件』犯人は家計に困った下働きのエスキュー・ヴェルニ、その後共犯のエスキューの婚約者と共に死刑。デルフィーノ一家は傍系のルイ・デルフィーノが当主に。


「えっ……」わたしは息を呑む。「うそでしょ」


 デルフィーノ家の毒殺事件でスクイブの両親が死んだ、最初はデルフィーノがスクイブだと思ったけど……。

“髪の毛掴む乱闘の方が何倍もマシだ”わたしを皮肉った三年の表彰者の名前がマイル・デルフィーノだった。“スクイブの経済的困窮”

 つまり、スクイブの親はエルキュー・ヴェルニ。デルフィーノ一家毒殺事件の犯人。

 わたしの祖父母は殺人犯なのだ。


「信じられない」


 ビーも理解したように両手で口を押さえてわたしを見る。その眼差しは親友に向けるような目ではなく、殺人犯に向ける憎悪の目だった。

次回 迷える親ヒツジ

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