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あやまる必要なくない?wow wow

 イェーニット学園の一角、校長室。そこには三人の生徒が集められていた。


「終業式で毎年学年ごとに誰か一人表彰されることは知っているかしら?」


 ティシュー校長は三人の生徒に対して二つの椅子に案内する。生徒たちは一瞬戸惑い、目を合わせる。私が座る、あなたが座る? という目配せではない。私が座る、お前は立ってろ、という圧の目配せだ。

 滑るように自然に椅子を勝ち取ったのはウァルティーニ国の一人娘、ビーだった。


「校長先生、あたくしは去年も表彰されています。それに今年はお父様のチャリティーイベントに参加したり、ホームレスにコートの寄付をしたりしました」


 ティシューはビーのPRを聞きながらメモをする。


「だから、あたくしが適任です。ぜひ今年も」


 微笑むビーに笑いが起こる。笑いの主、シック・ウァニュがビーを押し退けて椅子に座る。


「チャリティーイベント? 貴族同士の金持ち自慢だろ。チャリティーイベントといったら毎月ウァニュ家が主催している絵画イベントはご存知ですよね、毎回お越しいただいてる。今度父に言って、ご贔屓しましょうか?」


 ティシューは一瞬固まる。中等部ならともかく、こんな小等部二年生の話に惹かれるなんて。しかしすぐにビーの言葉で正気に戻る。


「シック!? 先生をお金で買うなんて、信じられない違法行為よ。椅子を返して、出て行って」


 シックの髪を掴むビー。誰もが耳を塞ぎたくなるような悲鳴をシックが上げた後ビーが手を離した。


「大丈夫、シック?」


 ティシューがシックに駆け寄り頭を撫でる。


「そんなに絵が大切ですか」


 ビーは白い髪束を床に捨てながら吐き捨てる。ティシューはその様子を見て憤慨する。


「ウァルティーニさん! 今の行動は見逃せません。シックに謝りなさい!」


 シックは口角を上げる。予想外だけどうまくいった、おまけにビーも落とせて万々歳。しかしビーはシックの想像より弱くなかった。


「あやまる必要なくない? あたくしは席を奪われたから奪い返そうとしただけ。先生も自分の絵を奪われたら髪の毛掴んで振り回すでしょうね、あたくし以上に」

「なんですって?」ティシューは顔を赤くする。「出て行きなさい、今すぐに!」


 ビーは眉を上げて扉を開ける。


「言われずとも」


 そのままビーは出て行った。シックは静かに校長の顔色を伺う。ティシューは扉を凝視していた。すごい形相で。


「校長、次のイベントの招待状も……」

「出て行ってちょうだい、少し考えるわ」


 シックは迷わず部屋を出ていった。


「あの、わたしは?」


 一人残されたエス・ウァニュは震える細い声で尋ねた。ここに呼ばれて終始突っ立っていたエスは気まずそうに眉を下げる。


「あなたも帰って」


 ティシューは忘れてたとでも言うように驚いた顔でエスを追い出す。部屋を去る前にエスは口を開いた。


「今年の表彰、わたしで決定?」

次回 天使が見えた日

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