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戦闘術

 二年生になって初めての講義、戦闘術。


 字面で選んだ講義だけど、服を騎士服に着替えさせられるぐらい本格的。

 生徒は十五人。女子はわたし一人。でも同い年はわたし以外に二人いる。


 今年からの転入生でお父様に顔が似てる男の子。

 あと一人はレーシェンファースのわがまま王子、エイ。


「みんな着替えたな? 講義を始める」


 ザ・体育会系のマッチョ先生が同じく騎士服で校舎から出てきた。


「戦闘術ということで君たちには校庭に集まってもらったが、戦闘術が初めてのやつはいるかー? 手を挙げろ」


 わたしと転入生だけが手を挙げる。エイは一年の頃に戦闘術を受けていたようだ。


「お、二人か。どうりで見たことのない顔だ。名前言ってみろ」


 わたしは男の子と目を合わせ、わたしから口を開く。


「二年、エス・ウァニュです」


 続いて彼も口を開く。


「二年、シー・ウァニュです」


 ……ん? ウァニュ? こいつわたしの親戚じゃね?


「お、家族で来てくれたのか。よろしくな、戦闘術を教えるキン・ニリークだ。……よりによってウァニュ家かよ」


 せんせ? 聞こえてますわよ?


「いきなり剣を持つと危険だから剣の扱い方を説明しよう。見てろよ、生徒諸君」


 キンはそう言って腰から剣を抜く。真っ赤な剣は日の光を反射させ、みんなが目を背ける。


「ちゃんと見ろよ! 単位あげねーぞ?」


 理不尽だろ。反射してるんだってば。まぶしいのよ。


「うっ」


 どうやらシー・ウァニュは光に弱いようでうずくまってしまった。


「だいじょうぶ?」


 わたしもしゃがんで彼に手を差し伸べると彼は顔を上げる。

 シーの目は白に近い金色の美しい目だった。髪も肌も真っ白で天使のようだ。


「大丈夫。ありがとう、エス」


 シーはわたしに寄りかかりながら立ち上がる。


「よーし、わかったか? お前ら!」


 わたしたちが友情物語をしている間にキンは剣の説明を終えたようだ。運が良かったのか悪かったのか。


「じゃあ一人ずつここにある剣を取っていってくれ! これは学園の物だから丁寧に使えよ!」


 生徒は返事と共に剣を取る。エイも上級生に交じって剣を配っている。

 シーもわたしも剣を取ると結構な重さに驚愕しながら元の位置に戻る。


「君のも持とうか? 僕は力があるんだ」とシーは囁く。

「馬鹿にしないで、そんなに重くないし。逆にあんたの持ってあげようか? ひ弱に見える」わたしは剣の柄の部分で彼のお腹を突く。


「シック、大丈夫か?」


 エイがやってきた。


「エイ? この状況はとてもじゃないけどシックとは言えないよ?」


 わたしが冗談交じりに言うとエイは真顔で返した。


「シック、彼の名前だ。友達になるなら覚えとけよ」


 エイはキンの元に剣の持ち方を聞きに行く。


「え? あなた、シーじゃないの?」


 彼は静かに頷く。


「ごめん、本当の名前はシック・ウァニュ。ザック・ウァニュの兄の息子で、君とは従兄弟……かな」


 彼は剣を構えて小さく笑った。


「わたしの、従兄弟。そうなんだ。よろしくシック。上品な名前ね」

「……そう? だね。」


 シックはよくわからないというように首を傾げたが剣は降ろさなかった。


「決闘でもするつもり?」


 わたしも剣を構える。

 シックは少し笑ってわたしに剣を向ける。わたしは焦って剣を剣で払う。

 剣のぶつかる音に周りの生徒は注目する。


「わ、わあっ!」


 シックの剣は勢いよく飛んでいき、離れた地面に刺さった。

 わたしは予想外の自分の力に驚いていると周りから拍手が聞こえる。


「初めてでこれはすごい! みんな、エスに拍手!!」


 キンが言うまでもなくすでに拍手が起こる。


「やるやんエス。それでこそ俺の友にふさわしい。シックは……これからだ」


 エイは鼻を鳴らしてシックの剣を回収してくれた。


「うぅ……僕は男でエスは女の子なのに」


 シックは涙目で膝から崩れ落ちる。


「次から頑張ってね。わたしはもう戦闘術は受けないから」

「あ、否定しないんだ。やっぱり女の子?」


 シックは暗い笑みでわたしを見る。


……あ、やべ、わすれてた。わたし、男の子設定で学園入ったんだった。


「あは。ジョークだと思って受け流したのに。シックもホントは女の子?」


 わたしはシックを立ち上がらせ、笑顔を作る。


()()()()?」


 あ、確定演出。自分で作っちゃった。


「……そうだよ、誰にも言わないでよ」

「もちろん。エスみたいな魅力的な人が男なんて信じられないから。僕と結婚する?」


 なにこいつ。八歳にして女口説き始めた。


「わたしもう婚約者いるから。あなたとは違う人」

「そう。残念」


 シックはわたしのおでこにキスをして剣を返しに行った。


「魔界はキス好きだね。ビーもシックも」

「え! お前、ビーとキスしたの!? やっばー! そっちだったのかよ!!!」


 独り言がエイに聞かれていた。


「頬にね。もう黙って」


 わたしはエイに砂を投げる。


「ぐっ、ごほっ!」


 砂が口に入ったようで必死に吐こうとしているエイを横目にわたしは講義を終えた。




「あの反応じゃエイもわたしが女だって気付いてる」

「そうね、結構前に気付いていたわよ? 彼」


 わたしとビーは寮の食堂で語り合っていた。


「そうだったの? へー」


 わたしはオムライスを口にしながら今日一日を振り返る。


「濃厚な日だったなぁ」


 ビーもわたしと同じオムライスを食べて笑った。


「なになに、恋でもしたの?」


 ビーは本当に目ざとい。


「うん。前は言えなかったけど、好きな人が出来たみたい」


 ビーは目を見開きながらわたしを揺さぶる。


「相手は誰よ! 婚約者がいる女を虜にする罪なオトコは!」


 わたしは頬を染めて口を開く。


「お父様」

次回 魔王候補

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