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或る朝のイット・ガール

 或る朝。

 エスの部屋にスクイブが訪れていた。



「なんですか、スクイブ先生? 今日は学校ないでしょ」


 わたしはパジャマ姿を布団で隠しながらスクイブを部屋に入れる。

 七歳の貧相な体でも狙ってくる奴はいる。


「すまんな。でももう昼になるぞ? いくらなんでも起きるのが遅くないか?」


 スクイブは当然の顔でソファに座る。


「昨日の真夜中までビーの部屋で女子会をしていたんです」


 スクイブは怪訝な顔になる。

 やらかした。


「真夜中まで? 夜十時以降の部屋間の移動は罰則だが」

「……用件はなんですか?」


 わたしはストレートに話を逸らす。スクイブは納得のいかない顔だったが、本題に入る。


「実は、ザックがいないんだ」

「え? お父様がいない?」


 わたしは思ってもいない事に拍子抜けする。


「あぁ。お前には言っていなかったが一週間も帰ってきていない」

「一週間も?」


 スクイブは頷く。


「でもそれはスクイブの家にでしょ? お父様の家に帰ったとかじゃないんですか?」


 わたしは傍にあるカーディガンを羽織り、布団から出る。流石に暑かった。


「いや、ザックの家にもいない。まあ、ザックの居場所は何となく想像つくが……」

「え? 居場所分かるんですか? じゃあなんでわたしに?」


 スクイブは下を向いて眉をひそめた。


「一週間前、学校でザックと話したんだ。そのときザックはエスが中等部を卒業するまでその……」

「なんですか、もったいぶらずに教えて下さい! お父様に何度も手紙を書いているのに、帰ってこないんです!」


 わたしはソファに座りスクイブの肩を揺らす。


「エスの卒業までの八年間。ザックは……人間界に行ったんだ」

「え、え? 人間界に?」


 ちょ、え。どういうこと?

 お父様、八年もいなくなるの? それも人間界に?


 視界が歪む。太ももに水滴が落ちる感覚がした。

 わたしは泣いていた。無意識に。


「ちょっ、エス! おい、ティッシュはどこだ!?」


 スクイブは慌ててソファから立ち上がりティシュを探す。


「うわあああん! うわあああああ!」


 スクイブは探し出したティッシュでわたしの目を痛いほど拭くが、わたしの泣くスピードが勝ち、スクイブは涙を拭くのを諦めた。


 わたしは赤ちゃんのように泣き乱す自分にびっくりしていた。

 わたしの中でそんなにお父様の存在が大きかった?

 わたしにとっては嘘つきで変態でいじわるで、ただの転生先の保護者だったのに。

 お父様がいないことにこんなに感情を乱して、悲しむなんて。


 わたし、お父様の事、好きだったんだ。

 気づかなかった。


「うわああん! おとうさまあぁ!」

「エス、泣きやめよ……あー、めんどくさい」


 スクイブがわたしを抱きしめる。

 わたしもスクイブの背中に手をまわす。


「なんで……お父様はそんなに長く人間界に?」

「わからん。今までも人間界に滞在したことはあるようだが毎回三日で帰ってくる。きっとザックなりの事情があるのだろう」


 お父様なりの事情? それはなに?

 ってか人間界に滞在? バリバリ犯罪者じゃねーか。

次回 歴史学

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