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手下は怖いよ 〜いつ寝返るかわかんない〜

「はあ? わたしを殺した殺人鬼は元の姿戻って今地下室に監禁されてる?」


 スクイブは曖昧に頷く。


「あ、いやあ、さっきまではザックに監視させてるが、逃げられているかもしれない。だから“今”は違うかもしれない」


 ……うざっ。


「そーですか。訂正はどうでもいいですから殺人鬼が誰か教えてくれます?

 ずっと気になっていたのです」


 スクイブは黙る。


「黙ってないで教えてください。わたしの知ってる人ですか?」

「いや、面識はないと思う」

「んじゃあいいです。どんな人なんですか? なぜわたしを二回も殺したのです?」


 スクイブは怪訝な顔を隠そうともせずため息を吐く。


「まだそんなこと言っているのか?

 彼はループなんて知らないと言っているし、まだ実行すらしていない。殺人鬼でもないんだぞ?」


 はあ? なんそれ。


 どういうこと? わたし、お父様の姿をしたやつに二回も殺されてんだよ?


 わたししか記憶がないの?

 他のみんなには無かったことになってるの?


 普通、殺人鬼と被害者の記憶が残るんじゃないの?

 殺人鬼が自分を殺人鬼だと思ってないって何?


「スクイブ先生、そいつは嘘をついているはずです。彼にわたしを殺した記憶がないとは思えません」

「はあ。聞いてみるは聞いてみるよ。言っとくが嘘発見器なんてないんだぞ」


 だろうな。さすがの魔界でもそこまでは望んでない。


「エス」

「はい、なんですか?」


 やけにスクイブが真剣そうにしている。


「我輩の手下になれ」


 は?



「つまり、その殺人鬼と話して情報を得ろと?」

「あぁ。お前相手なら話してくれるかも知れぬ」


 いや、無理でしょ。相手殺人鬼よ?


 しかしスクイブはわたしを抱っこして地下室に連れて行った。

 ほぼ誘拐。


「頑張れよ」


 一つの扉の前でスクイブはわたしを降ろして扉を開ける。


 深くフードを被った男がいる。


「うそでしょ……あなたが?」


 そこには監禁パーティー、杖選びのとき、わたしを助けてくれた

 救世主がいた。



「久しぶり、お嬢さん」


 やけに安心感のある声だ。


「何でここにいるのですか?」

「意識が戻ったんだね。どこにいたのかな?」


 質問を質問で返すな!


「職員室のソファーに横になってました。起きたらスクイブがいて、ここに連れてこられて、今」

「そっか。Sは優しいね」

「わたしが優しい? もぉ……褒めても何も出ませんよ!」


 救世主はポカンとした顔になる。

 え? わたしなんかやった?


「Sはスクイブのことだったんだが……」


「なるほど……スクイブ……S……。スクイブ優しいですよね! あははは」


 うわー、自分のことだと思ったー。わたしエスだし。Sとエスの区別は口語じゃ分からんて。


 あ、こんなことしてる場合じゃないね。

 なんで殺人鬼になんてなったのか聞き出さないと。


「あの、救世主さんの名前って何ですか?」


 わたしを殺そうとした動機の前にジャブとしてこんぐらいは聞くべきよね。

 救世主さんの表情は見えないものの、顔が引きつってる気がする。名前はまずかっただろうか。


「じゃあ、君は……自分の名前を知ってるかい?」


 だから質問を質問で返すな!


「もちろん知ってますよ。エス・ウァニュです」


 胸を張って言うと救世主さんの大きいため息が聞こえた。


「エスはイニシャルのSでしょ? 君は自分の名前も。執事たちの名前も。なーんにも知らないんだね」

「え? 執事な名前って、知ってますよ? ジーとアール……これもイニシャル!?」

「でしょ」


 うそ。わたしに誰も本名教えてくれてないの?

 あ、お父様のザックは普通に名前だね。スクイブも。あと実母(って言われた人)のメルも。


 あぁ、お母様のエルはイニシャルだわぁ。

 親友のビーもエイも。

 わたし、騙されてた。


「うっそ……」


 悲しいわー。

 みんなに騙されてたなんて。


「悲しいよね、エス。みんな最低だね。僕だったらそんな思いさせないのに」


 救世主はわたしに近づいて頭を撫でた。


「僕の名前はアクラビーチ・セド

 君の味方だよ」


 そう言ってセドはわたしをぎゅっと抱きしめた。



 わたしはスクイブの手下として救世主さんから話を聞き出す任務をしていた。

 でも救世主さんはわたしの味方だと言ってくれている。


「スクイブの言いなりになったと見せかけて

 本当は僕の手下なんだ」


「ほうほう」


 セドは続ける。


「どう? 僕に寝返らないかい?」


 味方になってくれの間違いだよね!


「もちろん。スクイブにはなんと言えば?」



「どうだった、エス。聞き出せたか?」

「はい。聞きます?」

「もちろん」


 わたしはセドから言われた通りにスクイブに話した。

・名前はアメリー

・年齢は永遠の十七歳

・嫌いな食べ物はパパイヤ

・好きな食べ物はペヤング

・エスを襲おうとしたのは可愛かったから

 うん。ペヤングについてはわたしも気になったよ。でもそう言えって言われたんだもん。しょーがないよね?


「そう、彼が言っていたのか?」

「はい。そのまんま」


 スクイブは何分か固まった後、ニコリと笑った。


「教室に戻ろうか。もうすぐホームルームが始まるよ」


 こうしてわたしの嘘はバレず、普通の日常が戻ってきた。

 あの反応はバレてると思うけどね。


 そういえばお父様ってどうなったんだろ。

 会わなかったな。

次回 黄金のザック

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