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やり返しのループ三度目

 朝起きて頭が痛くなった。

 特に心当たりがない。


 昨日夜遅く起きていたわけでもないし、今日だって起きたのはいつもと同じ時間だ。


 ベッドから降りてスリッパを履こうとしたら頭に大量の記憶が流れてきた。


 起きて

 食堂に行って

 ビーとエイと話して

 二人を講義室まで送って

 お父様を見つけて

 走って走って

 お父様に追いつけて

 お腹が熱くなって

 ナイフが刺さってて

 死んじゃって


 また起きて

 食堂に行って

 ビーとエイと話して

 二人を講義室まで送って

 お父様を見つけて

 別方向からお父様とスクイブ先生が来て

 どんどん離れていくのお父様と区別をつけるために

 目の前のお父様にクイズ出して

 急に記憶が戻ったと思ったら

 背中が熱くなって

 ナイフが刺さってて

 ナイフをグイグリされて

 また死んじゃって


 え?

 なに急に。


 これ、なんなの?

 わたし、死んでたの???


 じゃあなんで記憶あるの?


 死に戻りってこと?

 いままで死んでなかったから死に戻りって分からなかったの?

 いやいや。転生者じゃないんだから。あ、わたし転生者だわ。

 何があっても死んで戻れるって最強じゃない?

 もちろん痛みはあったし、お父様に裏切られたショックもある。


 なんか。

 このことも二回目で考えたような気がする。


 わたしが今するべきことは、ビーとエイと呑気に喋りながら朝ごはんを食べることではない。


 スクイブに協力を頼んで、偽お父様にやり返しをすることだ。



「頭打ったか? 冗談でもキツいぞ」


 やーっぱ信じてくれないか。

 わたしは朝一番に職員室に行きスクイブに全てを話した。


「冗談なんかじゃありません! 同じ朝を二回過ごしたんです! そして二回死んだんです。あなたなら信じてくれると思ったのに!」


 わたしはスクイブを睨む。

 彼はすごく困り顔でわたしを見た。

 そりゃそうか。わたしだって同じこと言われたら困るわ。


「急にこんなこと言ってすみません。でも嘘じゃないんです、信じてください」


 スクイブはわたしから目を逸らす。


「ザックがお前を殺すなんてことはない。あいつ以上にお前を愛してるのはいない」


 スクイブは話終わるとわたしの額にキスをした。親が子にやるように。


「なんですか、急に」


 わたしはスクイブから離れて適当に椅子に座る。

 スクイブも自分の椅子に座った。


「お前の行ったことが本当ならザックは二人いるんだな?

 一人は本物。もう一人は殺人鬼?」

「そうなりますね」


 わたしは頷く。


「その殺人鬼はなぜザックの姿をしている?」


 しらねえよ。


「さあ、わたしにはわかりません」


「お前に近づきやすいからか? それともイケメンになりたいとか?」


 だからしらねえよ。


「どうでしょうねー。わたしにはさっぱり」


 スクイブは眉間に皺を寄せて少し考える。


「思い当たる人はいるか?」


 わたしを刺すような思い当たる人物ねー。いるか?


「いませんね。わたし、恨まれるようなことしてないので」

「じゃあ怪しい奴は?」


 ……そういえばお父様が救世主さんを怪しんでたっけ? いやいや、わたしを助けてくれた方だ。そんなわけがない。


「いません」

「……そうか。では、現場に行くとしよう。犯人がいるかもしれぬ」


 は? こいつ死にたいのか?



「ここです。天体の講義室がある第一校舎と寮の間の中庭の廊下。あっちにお父様が歩いていくのを見てわたしは追いかけたんです」


 わたしは夢に見た光景を思い出す。


 いつも起きる時間が七時半。

 講義室に二人を送ったのが1限目の講義が始まる十分前、八時二十分。

 講義の始まりの鐘が鳴った直後にお父様を見つけた。


「スクイブ先生、今何時ですか?」


 スクイブは高そうな腕時計を見て言った。


「八時二十五分だ」


 スクイブは不思議そうにわたしを見て中庭に入る。

 わたしから遠ざかっていくスクイブを追いかけようとした、その時。


「うそ……もう……」


 目の前からお父様が歩いてきた。


「おや、エス? ここにいたんだな」


 お父様はどんどんわたしに近づいている。

 このお父様が偽物だとしたらわたしはまた殺されて同じ朝を迎えてしまう。それだけは避けないと。今回はスクイブもいるし大丈夫だ。

 ……まずはこのお父様を本物かどうか確認せねば!


「久しぶりですね、お父様。お説教なら短めにお願いします」


 わたしは一歩後ろに下がりながらお父様の様子を伺う。

 ザックは変わらず私に歩いてくる。


「久しぶりだな。お前に用はなかったがここに来るなら会おうと思って。怒るつもりはないからいつも通りおいで?」


 ……やばい! 偽物だ!

 ほんとのお父様もわたしのことが大大だーい好きだけど「おいで?」は言わないよ!


「近づかないで! あそこにスクイブもいるから! わたしになにかしたら、ただじゃ済まないわよ!」


 わたしは使い方もわからない杖を腰のベルトから取り、構える。


「使えるのか?」


 偽お父様はわたしの杖を掴めるほどに近づいて来ていた。


「エス! 大丈夫か!?」


 中庭にいたスクイブがお父様に気付いて叫んでくれた。偽お父様はわたしのほうに向かって来ているスクイブを見た。

 偽お父様の一瞬の隙。わたしは覚悟を決める。


 わたしはお父様の股間目掛けて思いっきり足を上げる。


「グハッ!」


 お父様は倒れた。


「ザック!? 大丈夫か!」


 スクイブはお父様に駆けつける。


「スクイブ、これは偽物ですよ! 気を付けてください!」

「いや、これは本物のザックだ!」


 ……え。


「歩いてくるザックがミニターを見ていた。我輩がザックのメールに返信したのを読んだのだろう。

 よって、こいつは本物のザックだ」


 ……うそ。


「じゃあわたし、本物のお父様を蹴っちゃったってコト……?」


 わたしはお父様に目を向ける。

 彼はまだ蹲っていた。


「あーあ。殺される前に殺しちゃったな」


 スクイブは他人事のように言う。


「そんなこと言ってないでお父様を治してくださいませ! ねえ、スクイブ! 治癒魔術!」

「え? 回復魔法のことか? どけ」


 スクイブはお父様の前に膝をついて腰から杖を出した。

 彼は呪文を唱えることもなく杖から光を出す。


「もう大丈夫だ。立てるか? ザック」


 光はすぐに消え、スクイブは立ち上がり、お父様に手を差し伸べる。


「あぁ、ありがと、スクイブ。助かった」


 スクイブの手を取り、立ち上がるお父様。

 彼はわたしを見ている。睨みながら、わたしを見ている。


「ひいっ!」


 わたしはスクイブの後ろに隠れる。しかしスクイブはわたしを抱き上げてザックの前に差し出した。


 目の前には黒い笑顔のお父様。

 ……これはまずい。

 後ろにはスクイブがいて逃げれる気がしない。


「エス?」


 お父様はしゃがんでわたしと目を合わせる。

 ……終わった。


「どんな理由があろうとも、暴力はいけないんだよ」


 ……あれ、それだけ?

 もっと罵ってくるのかと思ったけどただの注意だ。


「わかりまし……」


 お父様は笑顔から急に恐怖を感じるような顔になった。

 背筋が凍る。


 お父様はわたしに手を伸ばす。


 ……え? もしかしてこのお父様、偽者?


「いたっ!」


 おでこに激痛が走る。

 デコピンだ。

 お父様にデコピンされた。


「なにするんですか! お父様……」


 わたしはとてうもない眠気に襲われる。


 気付いた頃には床に寝転がっていた。

 意識が薄れるとともにお父様とスクイブの声が聞こえた。


「おいおい、ドッペルゲンガーはやめてくれよ」

「恐らく変身魔法だ。エスに近づくため、ザックになったのだろう」

「気色悪い」


「そこを退け、そいつ以外を傷つける気はない」


 セイカ時代でも聞いたこともないほどの爆発音がした。

 それが最後の記憶。

次回

なんでしたっけ? あなたさんの所のお子さん……あ、エスちゃん! そう、そのエスちゃんが、三回くらい化け物に殺されてループしてるんですって。……なーにー!?

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