お父様からの手紙
「んじゃ、帰るわ」
「さよなら、お父様。あ、帰るってスクイブの家に?」
「うん」
こいつ居候か? 自分の家があるだろ。
「スクイブの家にいるのはほどほどにしといてくださいね。アールとジー、寂しいと思いますよ」
「心配いらん。二人も私と一緒だ」
おーう。わたしの執事たちも一緒に居候しとんのかーい。
「じゃあお母様も?」
「もちろん」
お母様まで?
困った保護者たち。
「そうですか……。はやく帰ってください」
「? はあ」
ザックは怪訝な顔をしながらも馬車に乗り、すぐに馬車は動き出した。
わたしはお父様の馬車が見えなくなり、校内に戻る。
「エス、ザックは我輩の家に帰ったのか?」
帰るのを待っていたかのようにスクイブが話しかけてきた。
「そうですけど」
わたしはスクイブを睨む。
彼は睨み返す。
「なんだ? 我輩は待ってあげたと言うのに」
「待ってあげた? 誰も待ってなんて頼んでませんよ」
わたしは廊下を歩き、教室の前まで行く。
するとスクイブが教室に入らせまいとわたしの前に立ち憚る。
「いらないのか?」スクイブは手を組む。
「え? なにが」わたしはスクイブの手からはみ出す紙を掴む。
「ゲット〜、なになに、手紙〜??」
スクイブは特に恥ずかしそうな顔をせず、わたしが手紙を開けるのを見ている。
「今開けるのか? ホームルーム、始まるぞ」
「じゃあ帰ってから見まーす。スクイブ先生からの愛の手紙♡」
わたしが精一杯背伸びしてスクイブの耳元で囁くと彼は微妙な顔になった。
小3レベルの算数の講義を二つほど受けた後、寮に戻り、食堂で手紙を開く。
『久しぶりですね。
人間界では思わずノイキャンしたくなるほどの暑さです。
この手紙を読んであなたは不思議に思っていることでしょう。
ここだけの話。
スクイブの家の地下室に人間界に通じる転移陣があるのです。
私がスクイブにいる理由はこれです。
あなたが勝手にスクイブに自分の正体をバラしたので私が人間界で何をしているかは教えられません。
そしてあなたを人間界に送ることもできません。
話が逸れました。
本題はここからです。
あなたの正体を知っている人は他に誰がいますか?
返事待ってる。
ザック・ウァニュ』
なんと。スクイブからの手紙ではなくお父様からの手紙だった。
なんと。お父様は人間界に行った。
なんと。スクイブに言っちゃったことお父様知ってた。
あー、返事待ってるってー。
どうする? 書く?
たくさん書きたいことはあるけど、ねえ?
どうやって人間に馴染んでるのかとか。人間のふりしてなにしてんのかとか。
書きたくなってきたな、返事。
書こうかな……?
いやいや。書かない一択でしょ。
次回 ジーの1日




