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ちゃんと講義

エスが「わよ」や「よ」などを使うときはおねえみたいな感じです。

お嬢様ではありません。

 ここ、魔界のイェーニット学園小等部には寮がある。


 六階建ての豪邸。一学年、一階ずつ。

 寮は三つの建物からなっている。女子寮と男子寮。真ん中は共同スペース。食堂、図書館などがある。

 わたしは入ってきてすぐなので、寮にはほとんど物が置かれていない。ウァニュうちからの荷物が遅れていてまだ届いていない。必要最低限のものはある。ベッドとクローゼットと制服とパジャマと体を動きやすくするための魔術具。

 部屋の大きさは七畳ぐらいかな。そこまで広くないね。貴族の寮なんだからもっと広くしろよ。


 わたしが汚くする前の元の部屋はブリティッシュ〜。ハリポタですか? みたいな。


 この寮には小等部しかいないとのこと。

 小等部は六年制。一学年に45人。計270人の生徒がいる。それなら30人の教師も不思議じゃないね。前まで小等部は三年までかと思ったよ。

 学校の棟が一から三年生。四から六年生と別れているからだろう。


 この寮の隣には中等部の寮が。中等部の寮の隣には高等部の寮がある。

 年齢が上がるにつれ、寮が豪華になっている。これは、高等部まで行くしかないな。

 魔界では高校は大学みたいなもので、行かなくても良いらしい。でも、金持ちはみんな行くんだって。わたしも行かせてもらえるのかね?



 そして今日はわたしの初めての〝ちゃんとした〟講義である。

 初講義はマンツーマンで、質問ゲームやらされたからね。あれは講義のうちにも入らんだろ。


 わたしの初講義は「歴史学」だ。

 講師はニャック・ウァニュ。う~ん、わたしと同じ苗字。嫌な予感しかしない。

 もしかしたらお父様のスパイかもしれない。


 それでもわたしは歴史学を選ぶ。だって、魔界の歴史だよ? こりゃ気になる!

 聖華時代、家にあった魔界の本を読み漁っていた。魔界が本当にあるのかどうかとか、よく調べたものだ。

 実際に来てみたけど、そんなに驚かないね。聖華の時、家に魔族来たからね。借金取りみたいだったよ。二十ぐらいで白髪に赤色の髪が混ざってて、ヤンキーか! って心の中でツッコミを入れてたなあ。


 話を戻そう。

 家にあった本は魔界のことがたくさん書かれていたけど、著者は全て人間だった。人間に魔界のことが分かるのかな? って思いながら読んでたよ。

 だから魔界の〝ちゃんとした〟歴史は知らない。


「楽しみだなぁ、歴史学」


 わたしは歴史学の講義室の扉を開ける。


「失礼します」


 中にいるのはほとんどが高等部や中等部の人達だ。

 ちょっと怖い雰囲気。


 スクイブのドゥール学の講義室はただの部屋だった。ソファーが向き合って置いてあって、その真ん中に机がある。それだけの部屋だった。

 でもこの部屋は〝ちゃんと〟教室だ。

 ホームルームが行われるような普通の教室。


「こんにちは。クラスとお名前を教えて下さい」


 教壇にいる若い女の先生がわたしに目を向けている。

 その先生の名札を見てみればあら、「ニャック・ウァニュ」。この人、お父様のスパイかしら?


「えーっと、小等部一年一組のエス・ウァニュです」


 教室が一瞬静かになった。すぐにうるさくなったけど。

 ニャック・ウァニュ先生は顔色を変えることなく紙にわたしの名前を書く。

 スパイじゃなさそうだな。


「はい、エスさんですね。一番前の席にどうぞ」


 席指定されるんだ。

 わたしは言われた通りそこに座る。


ゴーンゴーン


 学校の鐘がなると同時に扉からおじちゃん先生が来た。

 教室は途端に静かになった。


 この先生怖いのか?


 おじちゃんは今にでも棺桶に連れて行ったほうがいいような足取りで教壇に立つ。


「今から歴史学を始める」


 それまで教壇にいた女性教師はそのおじちゃんを支え始めた。

 ただの世話役のようだ。


「今年初めての授業だ。一からしようと思う」


 よかったー。


「まず、魔界がどうやってできたのか。

 魔界は後の初代魔王、ティースト・ウァニュが人間界に亀裂を作ったことから別世界、魔界が出来たと言われている」


 ふーん。本とは大違い。

 本だったら、突然魔界が生まれたって言ってたけど。


「別世界を作り、ティースト・ウァニュは人間界にいた魔族に居場所を作ったことで初代魔王となったが、そのお方はとんでもない変態じゃった」


 おい、じじー! わたしの先祖様を何と!

 ってか、あなたを支えているのもウァニュよ!? じじー、おぬし、結構な敵を作っていますわよ!


「魔王城に好きな女何人も連れて、本妻は作らず、計三十人の子供が出来た。いまでもその子孫が溢れている。

 理由は、ウァニュというだけで名誉ある家だと思い、近寄ってくる馬鹿な女が多いからだ。

 例としてはザック・ウァニュだ」


 それ、うちのパパよ! じじー、それ以上言うと殺されてしまうわよ!

次回 じじー講義 じじー攻撃

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