タイガー&ドラゴン/わたしの話を聞け
「いいですか? これからわたしの話すことは真実です」
「はあ」
「気のない返事ですね。そんなんじゃ言いませんよ?」
「聞くさ」
スクイブはめんどくさそうに机に乗せた足を戻した。
わたしは机が壊れそうな勢いで足を置く。
といっても、エスは7歳の子供なので机が壊れることはない。スクイブへの威嚇にはなるだろう。
「わたしは人間です」
スクイブは予想してたのか、そこまで驚かなかった。
「でもお前は魔族と魔族の子供だぞ? 母親はエルフで父親はハーフエルフ」
おいおい。お父様も知らない情報を出してくるな。
「へー。初めて知りましたー。でも、わたしは転生者です。中身が人間なのです」
「へー。初めて知ったー。でも、お前魔界法知らないだろう?」
なんだそれ。
「知りませんね」
スクイブは右手で腰から杖を取り、一振りした。
すると、左手に分厚い本を持っているではないか。
魔法で本を作ったのか、取り出したのか。アッパレ魔法。
「ここを見ろ」
スクイブは何ページかめくってわたしに見せてきた。
わたしは椅子から立って、スクイブの隣に座る。そして言われた通りその部分に目を通す。
『ベロベロバーバーインガオーホーピロピロビーンポンスカポススカディーイェイ』
おっと意味不明な文字。
「読めません。翻訳していただけます?」
「これは、
『人間界からの転生者は見つかり次第、魔王城第六塔に一生幽閉する。転生者を知っていて黙っている者も同罪とする』
と書いている」
意外と普通のこと書いてんな。予想通りじゃねーか。
「だから何なのですか?」
わたしは顔を顰める。
スクイブはわたしをじっと見つめる。
「我輩に、話すな」
は?
「は?」
「は?」
意味が分からない。
なぜこいつも意味わからなさそうにしてるんだ!
「何を言ってるか分からないのですが?」
「だーかーらー。我輩はお前の共犯にはなりたくないと言っているのだ」
は?
「は?」
「はあ」
なぜおまえがため息を吐く! こっちがしたいわ!
「つまり?」
わたしはスクイブを見つめる。
「つまり、お前が我輩に話すと、我輩はお前の秘密を知っていることになる」
わたしは頷く。
その通りだ。だがそれが?
「そして、お前が転生者であることがばれた場合、我輩も処分される」
わたしは頷く。
「なるほど。自分は幽閉されたくないので喋らないでください、ということですか」
なんだべこいつ。
自分がどんだけかわいいんだよ!
わたしはそこでいい案を思いついた。
わたしがここで喋ったら、スクイブは処分を受けるのでは。
うん。
どうせならこいつも幽閉組に入れよう。
(今のところ、お父様ザック、執事アール、第二執事ジー、お母様エル)
「あの、スクイブ先生」
「あ?」
「わたし、前世は人間の聖華だったんです……」
「は? おいっ!」
スクイブはわたしの作戦が分かったのか、わたしの口を押さえようと手を出してきた。
わたしはスクイブのみぞおちを殴る。
「うがっ!」
「それで、死んだと思ったら、エスになってたんです。驚きでしょう?」
スクイブは話こそ聞いているものの、立ち上がる気配がない。
やりすぎか? いや、ちょうどいいか?
「で、エスになって気づいたんです。これ、転生かなって。いやーキセキだなー」
こんぐらいでいいかなっと。
スクイブに目を向けるとあら大変。青白くなっているではないか。
「お前、話しやがったな」
スクイブはお腹を押さえながらわたしを睨む。
「わたしの話を聞いて下さり、ありがとうございます」
わたしは部屋から出るべく、ドアノブに手を掛ける。
「これで一緒に入れますね。スクイブ先生♡」
次回 ちゃんと講義




