初講義はマンツーマン ~前編~
入学式に来れなかった生徒達がスクイブに部屋に案内された。そこから部屋の扉までが凍り始めた頃。
「入学式での話はこのぐらいだった。質問はあるか?」
……やっと話が終わったよ。全然聞いてなかったけど。
「さて、ここからは昨日来れなかった理由を聞こう」
スクイブはポケットからメモ帳を取り出し、胸ポケットからペンを出す。
「まず、ビー・ウァルティーニ。貴様はこの領地のものだろう? なぜ遅れた」
スクイブはわたしの隣のビーを睨むように見る。ビーはそれに対抗するように目を光らせてスクイブを真正面からみる。
「はい。昨日はあたしのお兄様のバースデーパーティーでした」
「は?」
ビーの言葉にスクイブは固まる。わたしも「は?」と口に出してしまった。当のビーは笑っている。この状況を楽しんでいるのか。
「どういうことだ。昨日何をしていたんだ」
「だから、昨日はお兄様のバースデーパーティーに参加していました。そこから入学式に間に合うはずでしたが、お兄様がもっといてくれ、と。同じ家に住みながら会える時間は夕食のみ。そんな妹と交流を持ちたかったのでしょう。わたしはもちろん承諾しました」
……何言ってんだ。このお嬢様。
「何言ってんだ。お前」
冬の英雄であるスクイブでさえ理解できないのならわたしはボーっとしておこう。関係のない話なのだから。
「先生が話せとおっしゃたのでしょう? あたしは従ったまでですわ」
不服そうな顔をするビー。
「お前は無理だ。出ていけ」
「ありがとうございます」
ニコニコで出ていくビーにスクイブはため息を吐いて次はわたしに向き直った。
「エスは何故遅れた」
……やっと来たか。
「わたしはお父様の予定通りにレーシェンファースを出発しましたがなんとかの魔物が出て一日立ち往生しました。だから入学式に間に合わず、今日の朝に着きました」
「そう……か」
おやおや、スクイブ。わたしのことを疑いで? やめときたまえ。これはお父様の用意した品書きだ。君がこの先喋る言葉すらわかっているのだぞ。
「じゃ、エスは返れ。次はお前だ」
あれ?
「え? わたしはもう帰っていいのですか?」
「? いいが」
ぬぬぬぬ? お父様の誤算!
「あ、そうだ。エス」
「? なんですか」
スクイブは懐から一枚の紙を出しわたしに差し出した。
「これはお前の取れる講義をまとめたものだ。先のことを考えて取っておいた方がいい講義がある。赤で丸付けているものを取っておけ」
「はあ。貰います」
わたしは首を傾げながら紙を取り部屋から出ていく。そしてコートを脱ぎながら疑問が浮かぶ。
……なんで急にやさしくなったの? 真意が知りたい。
ギュッと紙を握る。わたしは丸の付いた講義に目を通した。
「よく来てくれた。エス」
「あなたが呼んだも同然です。スクイブ先生」
わたしはまんまとスクイブの罠にはまった。まさか初講義がマンツーマンだなんて。
次回 初講義はマンツーマン ~後編~




