凍えてぇ担任
エスのふりをしたジーは無事レーシェンファースに送り届けられた。
さてここでイェーニット学園の説明をしよう。
まず、イェーニット学園は北西の国の中のウァルティーニにある。わたしのいるレーシェンファースは南東。めちゃくちゃ遠い。そういう人たちのため、学園のそばに寮がある。わたしはそこに入ることになっている。まだ一日目なので寮に入ったことはない。そして、わたしは天候のせいで馬車が遅れて、入学式の後に来た。荷物を運ぶ馬車はもっとかかるらしい。
……転移陣書いてやろうか。
次に、イェーニット学園は魔界中から貴族たちが集まっている。どういうことか。それは王子、姫がいるのだ。魔界はザックリ四つの国に分かれている。(わたしの所はアダーステルト国内のレーシェンファース。地理が難しいぞ)アダーステルト国の王の子供達。他国の子供達。そして、王地の王たちの子供達。
……つまり、イェーニット学園は高度な教育機関であると同時に、婚約者探しの場でもあるということだ。(お父様の言葉を一部引用)お父様はわたしに好きに婚約者を選んでいいと言ってくれた。なんて優しい精神。
そしてイェーニット学園は自分で講義を取るのだ。主要科目と自分の取りたい講義を一定数以上取って単位を取得し、留年・退学を避ける。そういう仕組みらしい。(七歳の子供に何が出来ようか)インテリは勉強科目を多く取り、運動科目を避けて進級ラインを超える。お父様は暇だったから友達と何個も科目を取っては授業中に爆睡するというバカな時間を学生時代イェーニットで過ごしたとのこと。
……バカにもほどがあるだろうが。
最後にイェーニット学園には小等部だけで三十人の教師がいる。人数は男女混合クラスが三クラスで一クラス十五人。全部で四十五人だけ。なのにもかかわらず、教師が三十人。何個かは一対一講義か? と思うほどに数が合わない。
……もしかしたら教師という肩書だけの公務員か? あ、イェーニット学園は私立か? わからん。
以上の事からイェーニット学園はちょっとやばいということが分かる。
そんな学園にわたしは通う。最悪かよ!
「おい、エス」
……ちょいちょい、わたしみたいな高貴なお方を呼び捨てにいてんじゃねえよ。ガキ。
そんなことを思いながらわたしに声をかけた男の子のほうを向いてあげる。
「なんでしょう?」
そこには高そうな服を着た小さいガキが。顔つきがお母様に似ている。もしかしたら冬の英雄野郎が前に言っていた「レーシェンファースの姫」というお母様の呼び名と関係があるのではなかろうか。わたしが口を開こうとした瞬間、ガキが話し始めた。
「お前生意気だったな。流石ザックの……ザック様のガキ……ご子息だ」
こいつ、お父様の事になると言いなおしてるぞ。もしかしたら怖いのか?
「ありがとうございます。お父様の子供だなんて。早くこのことを手紙に書かないと」
わたしは徐に机から紙とペンを取り出す。するとガキの顔色が青く変化していく。
「あなたの名前、教えていただけますか? 手紙に書きたいので」
その言葉を言い終わるかどうかの時にガキは廊下へと走って逃げてしまった。
「ただ名前知りたかっただけなのに」
「彼はレーシェンファース領の王の二人目の子供。エイ・レーシェンファースですよ」
わたしの独り言が会話文になった。急に隣のかわいこちゃんが話しかけてきた。ずっとこちらを見ていたので何か思うところがあるのではないだろうか。
「そうなんですか。エイ……お母……叔母様の名前によく似ています。そしてあなたは?」
「あたしはビー。ここの国の姫です」
ここってことはウァルティーニ王国の娘。めちゃくちゃに高貴なお方―。でも自分のことを姫って言うの良いねぇ。お高く留まってる。
「あら? あれはうちのクラスの担任でしょうか」
ビーは廊下の人影を指差す。人影は先ほど出て行ったエイを掴んでいた。
「うっ。急に寒い」
わたしは二の腕をさする。ビーもクラスメイトも同じことをしていた。
……なんかとっても嫌な予感がする。まさかね。この寒さ。
「我輩はスクイブだ。初めましての生徒もいるだろう。これから六年このクラスを受け持つ。覚悟したまえ」
やっぱり! 冬の英雄だ! 寒いよ! 冬の元凶!
「まあ。あたしも昨日の入学式来れなかったので担任の先生が気になっていたんですの。まさかスクイブ卿だったとは。驚きと寒さが止まりませんわね」
優雅に笑ってる場合じゃないから、ビー!
スクイブは持っていたエイを床に落とす。気絶しているようで何の反応もない。
「久しぶりだな、エス」
ひいっ! スクイブに目、付けられた!
まさか、担任が凍え丸スクイブだったとは。
思いもしなかった。
次回 初講義はマンツーマン




