なんでこなかったの?
「ジー! なんでこなかったんですか!」
わたしはお父様の部屋でジーを叱る。
「うぅ、すみません。ぼく長旅無理で……」
ジーは泣きじゃくる。わたしは王宮のパーティーでジーがいないことを忘れていた。だって、ジーって金髪で目立つけど、いつも静かだしちがう馬車で付いてきてるのかと思ってたし。
まあ? パーティー始まっても気づかなかったのは後悔してるよ?
「ジーが来なかったせいで……来なかったせいで……お父様はこんな重症に!」
お父様、ザックは帰って来てからベッドに寝たきりだ。帰って来て二日間も経っているのに。
「ああぁぁぁ! ザック様がこんな重症になるなんて! 行けばよかったあぁぁぁぁ!」
頭を抱えて倒れ込んでしまったジー。わたしはそんなジーの肩を叩き、ベッドを指差す。
「そんなに後悔するようならお父様を診てあげて下さい。あなたにとっても大切な御父上でしょう?」
「っ! 聖女様!」
ジーはわたしに可愛い子犬の目を向けた後、お父様のいるベッドに駆け込んだ。
……ふふっ、わたしのこと聖女だって。洗脳かーんりょ。
ゆっくりソファーに座り、ジーが入れてくれた紅茶飲んでいるとベッドの中の話が聞こえてきた。
「大丈夫ですか!? ザック様! お父様! 起きて下さ……」
急にジーの言葉が止まったことに少し疑問を抱きながら話を聞き続ける。
「え? なんて言いました?」
「……気づかれた……」
お父様ははっきりと『気づかれた』といった。どういう意味だろうか。誰に何を気付かれたのか。
「あいつに全部……こっちが先を行ったらあっちが追い越してくる」
何言ってんの。お父様。意味不明。
わたしは聞き耳を立てるのをやめて、机の上に雑に置いてある写真をみた。
「だれだろ? これ」
そこにはお父様と隣に並んでも見劣りしないほどの顔立ちの綺麗な女性が立っている。
ブロンドに紫の目の女性。
「誰に何を気付かれたのですか? ぼく関係あります?」
「ない」
「あっ、じゃあいいや」
「ちょいまてー! お前に関係なくても、話すから! 聞いてよ!」
ザック様はぼくにしがみついて離さない。ぼくはため息を吐いてベッドで寝ているザックの隣に座る。
「はいはい聞きますから。どうぞ話してください」
ザックはジーを撫でながら話し始めた。
「私さー、十代の頃、親に婚約者決められたって言ってたじゃん?」
「そうですね」
ジーは相槌を打ちながら撫でられる頭を気にしながらザックの話に集中する。
「その婚約者の話をエスの誕生日でしたのよ。エスと二人っきりになった時に聞かれたから」
「はあ」
「ま、その話は一回置いといて」
「はぁ」
はよ話せと思うジー。
「私さー、王宮に何回も行ってるじゃん?」
「そ、そうですね」
「その理由知ってる?」
ジーは少し考える。
「魔王様の仕事の補佐……」
「女に会いに行ってるのだよ」
ジーは自分の言葉を遮った挙句、女性に会いに王宮に行くザックを軽蔑する。
「その女性は誰ですか? 王宮ですから結構くらいの高い貴族か……その貴族に仕えている貴族でしょうか? あ、でも、王宮に住む貴族女性は魔王の親族で既婚者か未成年しかいませんね。……うわっ! 犯罪者!?」
ジーは口を押さえてザックを見る。ザックは静かに、とジーを睨む。
この反応はあたりだろうか。
「あっちから誘ってきたもん! すっごい可愛いもん! ちょっとぐらいいいじゃん!」
「よくありませんよ! 相手既婚者か未成年でしょう!? 犯罪です!」
「すっごい可愛いって……まさか……」
「そう。魔王夫人と」
「え!? 魔王夫人!? あの!? 魔王夫人!? うっそでしょ! 信じられない! バカじゃないの!?」
ジーはベッドから降りてソファーのエスの隣に座る。
「うままま。……ん、ジー? なにが信じられないんですか?」
「ザックとの話なのでお気になさらず」
エスは素っ気ないジーの態度に疑問を抱きながらお茶を飲む。
「あー、美味しー」
「なんでエスちゃん、わたくしの部屋にこなかったのよ」
「きっと忙しかったのでしょう。それかジーが伝え忘れていたとか」
二人は廊下を歩く。その廊下にはエスの「うままま」という声が聞こえてきた。
先ほどのエスの様子を少し開いていたドアから見るお母様エルと執事アール。(二人はカップル♡)
「やだ、エスちゃん、おっさんみたいな顔してる」
「ジーもだらっとしてる」
二人は顔を合わせた。
「こんなだらだらしていていいのかしら」
「こんなだらだらしていていいんでしょうか」
二人とも同時にため息を吐いた。
「「もうすぐ学校なのに」」
次回までだらだら回です。
次回 きいてったら、きいてよ!




