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裏で起きたこと ~前編~

 俺の名前はエス。前世は日本人男性のかく 鋭利えいり

 十五歳の誕生日に浮かれて死んだあと、エスとして魔界に生を受けた。

 最初は奇跡だと思った。

 死んじゃった俺がまた赤ちゃんとして生きれるなんて。


 でも違った。


「日本? どこだそれ。ここは魔界っていって、魔族たちの住まうところだ。お前も立派は魔族だぞー」


 魔界語が少し理解できるようになった俺に、お父様であるザックは衝撃の事実を口にした。これまでも言われてたのかもしれないけど、言葉が理解できなかった俺は、ここを海外だと思っていた。


 死んだと思ったら転生して、転生したと思ったら、魔族。


 日本に戻ろうと決意したのはエスの六歳の誕生日だった。


「来年からは遂にイェーニット小等部だなー。エスが生まれてもう六年。短いねー」


 お父様は俺の頭を撫でる。俺はこの六年めちゃくちゃ長かった。

 急に王子と合わせられるわ、魔王と一対一にさせられるわ、冬の英雄スクイブと結婚させられそうになるわ。


 この魔界に理不尽な処刑制度があると知って、俺は日本に戻ろうと計画する。


 最初はまあ、うまくいかなかったものだ。

 脱走を試みてジーと手を組んだらお父様に返り討ちにされた。ジーと一緒に漢字練習を頑張ってした。少し手伝ってあげたのもいい思い出だ。そのあとお父様に見つかってジーは三倍になったけど。


 五回目にもなると、気絶術を使った。床に思いっきり頭を打って、脳だけを日本に帰そうと努力した。脳だけじゃどうにもならないが、当時の俺は必死過ぎて考えが至ってなかった。

 十回目でアールを倒すことに成功した。

 十五回目には転移陣をスクイブに書いてもらい、そこに日本の住所をいれたけど、発動しなかった。


 そして運命の二十回目に、日本に帰ってこれた。セイカとして。




「来るんだぁ! エス!」

「やーだー! 行かない―!」


 聖華の自室でゆったりしていたら急に床が光り、魔法陣が現れた。そこから一人出てきた。そして今の状況に至る。これまでのことが走馬灯のように頭に浮かび、脳は現実を見せる。


「なんで魔王様がここにいるんだよ!」


 そう。転移陣から出てきたのは魔界の魔王だ。オレンジの髪に金色の目。目が少したれ目。雰囲気だけ優しい。どう見ても魔王だ。

なぜ彼のような人が人間界に、それもセイカの家に来たのか。


「こらこら暴れるな。もうすぐで愛しの故郷に帰れるよー」


 魔王は懐かしいように思える魔界語を話す。


「帰りたくないわ! あんな地獄!」


 セイカは掴まれた腕をぶんぶんと振るものの、何も変わらない。


「叔父さん! 叔母さん! ハーリー! 助けて―!!」

「無理だよ。みんな、嘘の用事に夢中だからね。この家には今、君しかいないんだよ」


 魔王は魔術具の縄でセイカをぐるぐる巻きにする。お父様によくやられていたような楽しいものではなく、セイカを捕まえることしか考えていない。


「サイテー。ろくでなし。他人の罰じゃなくて自分の罰を決めろ」

「あはははは、この私以外に誰が魔界を治められるというんだ。ほら早く転移陣に乗りなさい」


 セイカは転移陣を消そうと部屋中の床を見るが、どこにも転移陣など書かれていない。


「ないじゃないか! このほら吹き野郎!」

「え? あ、踏みつぶして消しちゃった、てへっ」


 気持ち悪い笑みでセイカに近づき、縄を解いてくれる。何のつもりだと聞くと魔王は笑みを深くした。


「いや、強制的に連れられてきましたって、上に報告しづらいなと思って」

「魔王のお前に上なんかあるのかよ」


 セイカは三歩後ずさりする。


「あるんだな。それが」


 魔王は二歩セイカに近づく。

 セイカは魔王から四歩遠ざかる。


「君から魔界に行きたいと願ったことにした方がいい報告になりそうだ」


魔王は杖を一振りしてセイカの後ろに来る。セイカは視界から魔王が消えたことにほっとしていたが、後ろからすごい殺気を感じ振り返ってみると優雅に転移陣を描いている魔王がいた。


「いるのかよ」

「いるよー。ちょっと待っててね。もうちょっとで書き終わるから」


 転移陣は複雑な魔法陣だ。でもそんなに時間がかかるだろうか?


「こいつおっそ」


 彼が魔法陣を書き始めて五分は経った。

 書いているのは不格好な転移陣だ。線はガタガタ。記号は間違っている。どこに行きたいのか、存在しない座標を書いている。これでは発動しないだろう。


「どこ行きたいんだ?」

「うん? 魔王城だよー」


 魔王は転移陣を描く手を止めない。セイカは呆れた。


「ちょっと貸して」


 魔王は素直に杖をセイカに貸す。


「普通の転移陣でいいんだな?」

「うん、書いてくれるのかい? セイカちゃん」


 セイカは名前を知られていることに驚かず、スラスラと今まで見てきた転移陣を描いた。最後に魔王城の座標を付け足した。完成だ。


「うわー! すっごーい! ありがと、エス」

「いや、いい……え? いまエスって……」

「ほら! 行けぇっ!」


 セイカは魔王に抱っこされて転移陣に吸い込まれた。

 そこで魔王が言っていた意味が分かり、後悔した。セイカから転移陣を描いてしまった。ほんっと人を操るのがうまい。流石悪魔だ。




「ただいま戻りました。エス様」


 人間界でセイカになったエスのお世話をしている花ことハーリーはお買い物から帰ってきた。


「あれ? またベランダですか?」


 セイカの部屋に入り、見回すハーリー。部屋には誰もいなかった。

次回 裏で起きたこと ~後編~

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