表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/63

Gomina Gossip

 わたしのいう家族は、おじさんおばさんたちだ。

 わたしの生まれは神崎家本家。でも、小さいころにお母さんが入院しちゃって、分家の彼らに引き取られた。おばさんがお母さんの妹で、お母さんは信用して、わたしを引き取ってもらった。

 なのに、おじさんおばさんたちは、魔族にのめり込み、大金を持って行かれ、本家と縁を切られた。

そのせいでわたしは、本家にいるお母さんの元へ帰れなくなった。


 わたしは当然ながら分家の人達を嫌っていた。きっと皆もわたしを嫌っていただろう。


「おばさん、外出許可を頂けないでしょうか」

「はあ? わたしがここまでしてあげてるっていうのに、まだ足りないわけ? 流石姉さんの出来損ないね。あなたがここに来たのは捨てられたからよ」

「すみませ……」

「おい、お前。俺のライター知らないか。ん? 聖華もいるのか」

「あ、あの、お、おじさん。明日一日の外出を許可してくれないでしょうか」

「何をするんだ。一日も」

「友達と遊びに……すみません」


 叔母さんはわたしに会うと嫌味を並べ、叔父さんはわたしが気に入らないとすぐ手をあげる。


 最後にお母さんに会ったのは冬。

 大学の合格を知らせに、本家の屋敷に行ったとき。お母さんの部屋は病室のようになっていて、ベッドを少し上げて、当主のおじいちゃんと一緒にわたしの話を聞いてくれた。そのとき母は涙目になりながらわたしを抱きしめてくれた。嬉しくて泣いているのか、悲しくて泣いているのか分からなかったけど、わたしのことを思ってくれているのは分かった。




「……という感じです。わかりました?」


 わたしは向かいに座るお父様、ザックに向き直る。

 お父様がわたしの言った『お母さん』に疑問があるらしく、人払いされて喋らされた。だからいつもは助けてくれる、お母様、アール、ジーはいない。


「んー、なるほど?」


 分かっていなさそうな声で返事をするザックは目を閉じてなにかを考えている。


「あの、メルって、死んでしまったんですよね? じゃあ、顔が似てるだけで、わたしのお母さんではないのでは? セイカのお母さん生きていますし」


 わたしはザックの手からメルの写真を取る。彼は眉間にしわを寄せて、わたしを睨む。


「でも異常なほどに似てますねー。ただのそっくりさんならいいのですが」

「『そっくりさん』って……。ん、じゃあ、エスとセイカも似てるんじゃないか?」


 ザックはわたしから写真を奪い取り見ている。


 ……セイカとエスが似てる?


 たしかに、母親が同じならば血がつながっているということだ。でも父親が……


「セイカの父は亡くなったのか?」


 お父様はわたしの様子を窺うように質問してきた。気を使っているのだろうか。わたしも彼と同じことを考えていた。


「いえ、生きています。たぶん」


 わたしは目を逸らす。お父様は不審に思ったのか、わたしの向かいから隣に座る。


「たぶんとはなんだ?」

「……わたしが生まれる前、蒸発しました。今どこにいて、何をしているのかも、生きているのかも分かりません」


 わたしが話し終わり、彼の方を見ると、彼もまたわたしの方を見て固まっていた。


「どうしたんですか? 幽霊でも見た顔して」


 わたしは彼の目線が自分ではないことに気付き、頭を動かしてみる。ザックは一点を集中して見ていた。


 ……なに? わたしのうしろに誰かいるっていうの?


 わたしは視線を感じ、後ろを振り返る。


「キャッ!」


 目の前が真っ暗になりつつ、わたしは眠りについた。




 久しぶりの日本。久しぶりの言葉。豪華な館。

 エスは日本に戻って来てから感動ばかりだった。元の自分の家に戻るんじゃなく、神崎家に留まっているのはこの環境が最高だからだろう。


 ……セイカとかいう女の体だということ以外は。


 魔界と比べて水道水がおいしいと思ったのに、ウォーターサーバーの水しか手に入らず、教育の質に驚こうと学校に行ってみようとするものの、毎日休暇だの、記念日だの、休みとばかり嘘を吐かれる。

 だが、それを通り越すぐらい神崎家の環境が整っている。

 放任主義で、挨拶もしない親。自室にパソコン。(サブスク入り放題)自室付きのバスルーム。(トイレも)そして、バルコニーがエスのお気に入りスポットになっていた。


「やっぱ、日本、最高だなー」


 エス、いや、セイカは今日もバルコニーに椅子を持ってきて、ひなたぼっこをしていた。


「なにしてるんです! エス様!」


 天気のいい昼に、眠りに落ちそうだったセイカを起こしたのはお世話係の花だった。


「うるっせーよ。ハーリー」


 人間界の『花』こと、魔族のハーリーはエスの元、お付だ。そのため、魔界に戻らず、ここ日本でエスのお世話を続けている。


「日焼けしますよ? 早く中に入ってください」

「エスの体じゃあ、外に出ることもできなかったんだぜ? こんぐらい許せよー」


 椅子にしがみつくエスにハーリーはため息を吐く。

 ……お、これは許してくれそうだな。


「俺―、エスの時はなーんにもできなかったしー、ね? こんくらい、許して?」


 エスはセイカの美貌(そこそこ)を使って上目遣いをする。ハーリーは迷っているのか、目を閉じている。


「わかり、ました。いいでしょう。……でも、お昼はちゃんと中で食べましょうね」

「はいはい」


 心の中でガッツポーズをするエス。綺麗な飛行機雲が目に入ったのと同時になにか嫌な予感がした。


 ……いまなにしってかな、お父様。




拝啓 入院中のお母さん 蒸発してどこにいるか分からないお父さん


 わたしは、今、監禁されています。

次回 監禁されてパーリナイ/顔も分からない救世主を

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ