第9話〜圧倒的な力の差と強者の参上〜
アルスたちの前に現れた獅子の姿をした守護獣。
その守護獣は風を操る獣でありあらゆる方法で突風や竜巻を起こし攻撃してくる。
さすがと言わざるを得ない威圧感と圧倒的な攻撃力。
勝ち目はないと思われる。
しかしアルスは戦いを諦める選択をせず戦い続けるという選択をした。
テストの問題の解答欄を白紙にすればその分の得点は入らない。
しかしやるだけやってみれば部分点を取れるかもしれない。
それと同じように諦めずにやるだけやってみて部分的に守護獣を削ることが出来ればいいとアルスは考えた。
獅子の守護獣がアルス目掛けて左足を振り下ろす。
アルスはあまりの威圧感に恐怖を煽られ足が動かない。
すると左半身に衝撃が走る。
アルスは突き飛ばされ獅子の攻撃を免れることが出来た。
何かに運良く押されたのかと思いながら顔を上げるとそこには足に深い傷を負っているグレアスがいた。
どうやらアルスを庇いその際に攻撃をもろに喰らってしまったらしい。
すぐにアルスはグレアスを抱え近くの建物の影へと身を隠した。
「ごめん、じいちゃん…オレ…」
「孫を…守るが爺の務めじゃよ…。ハハッ現役なら庇ったあとでもあのくらいの攻撃、簡単に避けれたじゃろうに。これも老けたせいかのぅ。」
と弱った声でグレアスが呟く。
するとグレアスは腰につけていた刀を左手でとりその手をアルスに伸ばした。
「これは…『千雷駆走』!?光雲はもう見つかったんだ!刀を借りる必要は…」
「いいんじゃ…。こんな傷を負った老いぼれが名刀を使っても、なまくら同然。この刀を上手く使え…!」
アルスが真剣な表情で頷き、千雷駆走を手に取る。
アルスが柄を握った瞬間、まるで雷が落ちたかのような衝動が走る。
アルスに力がみなぎりみるみるうちに魔力が高まっていくのが分かる。
千雷駆走には呪いがかかっていないため本来の力が出せる上に閃光流の剣士たちが代々受け継いできた業物。
これほどまでにアルスに合う武器は他にないと言っても過言では無い。
アルスは深呼吸をし刀を構える。
すぐさま獅子の攻撃が来る。
爪が生まれた突風が地面をえぐりながら3つの突風がアルス目掛けて飛んでくる。
突風の隙間を避け間合いを詰める。
いつもより早い速度で少し驚いたが案外すぐに慣れた。
間合いを詰めていくうちに腕に痛みが走る。
腕に複数の傷を負っている。
確実に避けたはずの攻撃が当たっている。
しかも複数の傷。
このことで分かったことが1つある。
3つに見えたあの突風。
突風は3つではなく細やかな斬撃が重なって3つに見えているという事にアルスは気がついた。
そのためチェレーンは真っ二つではなくバラバラにされてしまったのだろう。
その細やかな斬撃が少しアルスにかすったのだろう。
だがしかし痛みに怯まず獅子に近づき集中する。
「まずは足を削る。一太刀のみの威力がじゃダメだ。
数で押し切る!!」
雷の力がアルスと千雷駆走に蓄積されていく。
「構え刃"不曲有陣"雷龍鱗!!」
この技は網の目状に対象を複数回斬りつける技。
獅子の体が大きい分当てやすく最善の技であるが全くもって効いていないようだ。
想像を遥かに上回る装甲の硬さに動揺を隠せない。
獅子は跳躍し半回転し、着地した衝撃でアルスは吹き飛ばされる。
宙に飛ばされているアルスの後ろ足で蹴りあげようとしているが「やられっぱなしでいられるかよ」と言わんばかりの表情で力を入れ直し体を回転させ技を放つ。
「閃光流構え刃"空空放雷"雷旋!!」
互いの攻撃がぶつかるが押し合いになったのはほんの一瞬。
あっという間にアルスは蹴飛ばされ地面に落下していく。
(強すぎる…)
ただただアルスはそう思うだけだった。
すると誰かがアルスのことを空中で受け止めた。
ゆっくりと降下しそっと地面に置かれた。
「よく頑張ったね、あんな怪物と戦おうと思ってる時点で君はとっっても強いよ!あとは…アタシに任せな!」
「助けてくれてありがとう。ところで君は?」
アルスはそう言いながら顔を上げる。
そこには茶色のフードを被り、槍を背中に携えている女性が立っていた。
「アタシの名前はラウシー・クレット!あんたと同じ守護獣を持つ人間さ!」
第9話〜圧倒的な力の差と強者の参上〜[完]