第6話〜出会い〜
更新遅くなりました。すみませんm(*_ _)m
(真っ暗だ。なんで?)
あの風景が頭をよぎる。
(そうだ、あの婆さんにいきなり切りつけられたんだっけ。)
アマティアスの襲撃の際アルスは助けた老婆に切られたのだ。
アルスは目を開いても文字通り真っ暗で何も見えない。
その暗闇を進んでいると大きな物が動く気配を感じた。
その方向に進むとそこには大きな龍がいた。
体の色は漆黒で周りと同化し大きさはよく分からなかった。
龍もこちらの気配に気がついたようだ。
「おぉここに来たのか、アルス。」
龍はどうやらアルスのことを知っているようだ。
「オレを知ってる?」
「いかにも。ここ最近からお前の中にいるからな。」
「オレの中にいる?分からないことが多すぎるぜ…」
「そうか。なら分かった、分かりやすく教えよう。怖がらないでいいぞ。味方だからな。」
そう言い龍は説明を始めた。
この世には守護獣と呼ばれる人を守ったり、手助けしてくれる獣がいるらしい。
守護獣は夢を叶えるためなら努力を惜しまない人などの強き思想を持つものに宿るらしい。
アルスの場合はアマティアスをぶっ壊すという強い想いと剣術の修行を一生懸命に頑張った所だろう。
だがしかし宿っているだけではほとんど何の効果も得ない。
何かがきっかけで心の中の守護獣に会って契約を交わさなければならない。
だから守護獣はそのきっかけを作るために自分の存在を知らせようとする。
それがアルスにとっての幻聴や魔力の暴発だったという訳だ。
「という訳だ。分かったか?」
「あぁ、大体は分かった。つまりはこれを機会に契約をかわそうって言うわけか。」
「うむ。その通りだ。アマティアスをぶっ壊すという強い気持ち。飛び抜けて心が光っておったからつい乗り移ってしまったぞ。」
「へへっ!ちょっと嬉しいな。」
「契約するとなると『雷』の魔力は消えてしまうが。」
「え!?消えるのかよ!」
「すまないな。魔力を2つ宿すことは我ら守護獣でも出来んのだよ。だが安心しろ。我が司る魔力は『闇』だ。
五大魔力の中でも『引き出す力』を司っている。
闇とは暗闇。自分ですら知らない体の奥深くに力を秘めている。それを引き出し戦う。」
「なるほどな。でも使い方を知ってる雷を残しておいた方が強くアマティアスと戦える気がするけど。」
「あぁその点は安心しろ。何故かは言わんが我と居れば少なくともアルスの剣術が全て無駄になることはなくなる。他のヤツだとダメだったがな」
「なんで言わないんだよ。」
「今ここで言ってしまったらお前の努力を奪うことになる。知る機会は必ず訪れる。」
アルスは腕を組み考えた。
今まで培った雷の魔力を手放すのは少し難しい。
しかし、闇の魔力を手にすればどうしてかは分からないけど今までの剣術は無駄にならないらしい…。
しかも守護獣いれば今後の戦いに置いても知らない知識はコイツが教えてくれそうだし。
そしてアルスは結論を出した。
一生に1度並の賭けだ。アルスは契約を交わすことにした。
だがしかしこの襲撃の戦いだけは雷の魔力で戦いたい。
その旨を龍に伝えた。
「出会いのきっかけは作れた訳だしこれからは何時でも会えるからな。それに今、契約するのは無理だ。魔力の上書きはとても大変なんだ。特に16歳にもなろう人間はな。仮に今ここで契約しても殺されるだろう。現実世界ではお前は今気絶しているのだからな。」
アルスは一気に血の気が引いていくのが分かった。
なぜならあの婆さんに切りつけられているからだ。
もし大ケガをして動けなくなっていたらどうしようなどと嫌なことばかり想像してしまう。
「安心しろ、アルス。切りつけられそうになった時守護獣の魔力は覚醒している。その際ヤツは殺しておいた。現に守護獣の魔力が覚醒しているからこそ我はこの体を手にしお前と話せているのだからな。」
アルスはため息をつき安心した表情を見せた。
少し間を置き守護龍が口を動かした。
「それじゃ名前、決めてもらおうか。」
「名前かあ。」
顎に手を当てこの見た目にピッタリな名前を考えたがイマイチパッと思い浮かばない。
しばらく考えると守護龍が言語を変えて考えるのも一つの手だと教えてくれた。
「異国では黒色のことをネクロって言うってのを子供の頃本で見たのを覚えてる。でもそのまま使うのは安直だし…。あっ!!」
アルスの頭上に電球が出てきたかのような気がした。
どうやら思いついたようだ。
「ドラゴ・ネグロークなんてどうだ!」
「ドラゴ…『ン』は付けないんだな。まあ良いいい名では無いか。」
「オレなりのこだわりってやつかな。」
とアルスが得意気に話す。
「うむ、命名まで終わったことだしこれから本格的にスウェイン救出作戦開始だ!」
なんだか無視された気分になり少し落ち込んだがもたもたしている暇はない。
アルスはネグロークの力で地上へ戻っていく。
また、戻ってきた。
起き上がったアルスの横には自分を切りつけてきた老婆が横たわっていた。
「ネグロークがやったやつか。騙されてたのか…。ん?ちびっ子はどこいったんだ?そんなことより…」
老婆が手に持っていた光雲を取り力強く握りしめた。
そしてアルスは自分の頬を叩き気合いを入れ戦線に突入していくのであった。
第6話〜出会い〜[完]