再び来店、そして受け取り
自宅へ戻った俺たちは昼食後、さっそくポーション作りに取りかかる。
先日より大きな鍋をふたつ用意、片方でヒールポーション、もう片方でマナポーションを作成。
材料を入れて煮込み、成分が十分に抽出されたころを見計らって魔石のけずり粉を投入。
完成後は空きビン――俺が魔王討伐の旅のさなか収納魔術内に回収していたものや、工房にあったものへと入れていく。
そして翌日の朝。
「――よお。できてるか?」
約束通りシャノンが来店した。大きなリュックサックを背負い、カバンを肩から下げた姿だった。
「はい。この通りです」
俺は彼女の予約分、ヒールポーションとマナポーションそれぞれ六本ずつをカウンターに置いた。
「……おう。確かに受け取ったぜ。サンキューな」
彼女はそう言ってカバンの中へポーションを入れていった。
……それにしても、ずいぶんと動きづらそうな大荷物だ。
確かに魔術師は基本後衛であり、前衛に比べれば激しく動く機会も少ないが……それでも戦闘面でも移動面でも苦労するだろう。パーティーを組んでいるらしい
が、荷物持ちはいないのだろうか。
……いや。
あの大きなリュックは自分のものだけでなく、仲間のものやパーティー共同で使うものを入れるために用意したものではないか。
そして、それとは別にわざわざ肩かけカバンも用意している。すぐには使わないものをリュックに、いざという時すぐに取り出したいものをカバンに、と使い分けるためだろう。
ひょっとして、彼女こそがポーターなのではないか――
「これからクエストへ出かけるんでしたね。どんなクエスト受けたのですか?」
「まだ決めてないな。ギルドで確認してからだ」
俺がもの思いにふけっているのをよそに、リサはのんびりと言った。
「くれぐれも気をつけてくださいね〜」
「分かってるって。ヘマなんてしねーよ。そんじゃあな」
「ありがとうございました〜」
店を後にするシャノンの背中へリサは手を振り見送った。
「……彼女、ずいぶんな大荷物でしたね〜」
表情には出さなかっただけで、やはりリサも疑問に思っていたか。
「てっきり魔術師だと思っていたのですが……彼女、ポーターなのでしょうか?」
「かもな」
……まあ、たとえそうであるとしても『だからどうした』という話でしかない。
誰がポーターを務めようがそのパーティーの自由である。それにポーターは仲間たちを支える、誇るべき大事な役割だ。彼女が望んでやっているのであればそれで結構ではないか。
「……さて」
多少気になったものの、それ以上首を突っ込む理由もない。さっさと意識を切り替える。
「それより開店準備を進めるぞ。今日は店舗の棚移動と掃除だ」
「はーい」
俺たちは倉庫から掃除用具一式を取りに行く。それからエプロンや頭巾などを身に着ける。
いざ準備万端、さっそく始めようとした時、
「……あれ?」
リサがなにかに気づいたように声を上げた。
「どうした?」
「これ、エミルさん……のものじゃありませんよね」
リサは床から一枚のハンカチを拾い上げた。
可愛らしいデフォルメ調で猫が刺繍されているものだ。確かに俺のものではな
い。趣味から大幅に外れている。
「ああ」
「私のでもないし……きっとシャノンさんが落としたのでしょうね」
「だろうな」
心当たりがあるのは彼女だけだ。
店で保管しておけば、いずれは取りに来るだろうが……彼女が店を後にしてまだ十分ほどしか経っていない。
いまから追いかければクエストへ出る前に届けられるだろう。そして場所も分かる。シャノンの話しぶりから、冒険者ギルドへ立ち寄る事はほぼ間違いない。
「……せっかくだ。届けに行ってくる」
「分かりました。ギルドの場所は覚えてますか?」
「ああ」
冒険者ギルドへはファルマシアへ来た初日に立ち寄った事がある。建物も大きくて目立つし、案内は不要だ。
「では行ってくる。留守番はまかせたぞ」
「はーい。いってらっしゃーい」
俺はハンカチを手に、冒険者ギルドへと向かった。
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