002
気が付くと目の前には炎が広がっていた。
俺には一体何が起きているのかはわからなかったが少なくとも転生に成功しこのままだと炎に包まれて焼け死ぬ事だけは分かった。俺は周りを確認する、前に自分を確認する。
今の俺は地面に仰向けで倒れている。別に赤ん坊と言う訳では無いようで生前の俺よりは小さいが手を動かす事が出来た。転生前にゼウスが鬼人族の村に送ると言っていたがその村が燃えているようだ。耳を澄ませば遠くの方から悲鳴や叫び声が聞こえてくる。恐らくこの村は襲撃を受けていて今まさに滅亡を迎えようとしているのだろう。という事はいずれここにも襲撃者がやって来るだろう。
俺は力を込めて体を起こす。力がないのか体を持ち上げるのにも一苦労する。それでも何とか立ち上がると俺の身長が低いことが分かる。転生前の俺の視線より顔一つ分は確実に低い。周りの建物が少し大きく見えるのもそのせいだろう。隠れるにはもってこいの体だがそもそも周囲は炎だ。こんなところで隠れていても焼け死ぬだけだ。
「っ!いたぞ!鬼族の餓鬼だ!」
「え?」
炎が無い村の外へ歩き出そうとした時その方向から鎧を着た人が現れた。そいつは俺を見ると声を上げる。どうやら近くの仲間に報告したようだ。実際そいつの隣と後ろからぞろぞろと鎧を着こんだ人が出てくる。数は10人。分隊程度の規模だ。それでも相手は重装甲に武器の装備ありで数は圧倒的だ。対するこちらは少なくとも服は質素と言えるボロ着と素手で数は一人だ。
よほどの事が無い限り武器を手に持ちながらゆっくりと近づいてくるアイツらに勝てるわけがない。実際俺は10人もの殺気を浴びて恐怖で体が動かなくなりその場に立ちすくんでいる。体は動かないが頭だけは休む間もなく思考を続けている。多分発狂しないようにしているんだろうな。
「こいつ……。逃げないな」
「そりゃそうだろ。こいつの顔を見てみろよ。恐怖ですげぇ事になってるぜ」
「若すぎる気もするが将来性があると考えれば国家弁務官区行きが妥当だろうな」
「捕まえても殺しても褒美は貰えるしな」
鎧を着たこいつらはそんな話をしながら俺を縛り逃亡防止用なのだろう。周囲を取り囲みながら歩かせてくる。首には縄が付けられ手綱を付けられた犬の如き惨めな気持ちになる。とは言え相手が強く引っ張れば俺の首は絞まってしまうがな。
さて、転生してすぐに捕まってしまったが取り敢えず俺はどうされるのだろうか。そもそもこの世界の情報が全くない。逃げるべきなんだろうけど情報少なすぎて行動が移せねぇな。