012
エイザから色々と教わった俺は漸くどう動けばいいのか、それを考えるために必要な情報を手に入れる事が出来た。
まず、ここに来た時点で亜人はほぼ終わりのようだ。スヴィニア国家弁務官区はバーレンベルグとの国境も含めてすべての国境を高大な防壁で覆われている。防壁に設置された入り口は一つだけでそこは厳重に出入りが制限されている。もう一つは俺達がここに来たように帝都を含むいくつかの都市に存在する転移の魔道具を使用する方法もあるがそれがこちらに送るだけで行き来はできないようだ。
そうなると俺たちが逃げるのは困難だ。かと言ってこのままでいるのも不味い。確実に亜人の数は減ってきておりいずれ全滅するだろう。もしかしたら三桁あたりまで減ったら殺処分されるかもしれないしな。そう考えると行える手は限られてくる。
一つ目はこのままバーレンベルグが滅びるのを待つ。勝算は低いがこのまま周辺諸国がバーレンベルグの大頭を許すとは思えないからな。
二つ目は反乱を起こす事。失敗すれば全員処刑されるだろうが成功すればこの地獄からは解放され運が良ければ周辺諸国が国家として承認してくれるかもしれない。
三つ目は可能性は低いが人間たちに取り入る事だな。運が良ければ重労働から解放されるかもしれないが……。その場合は十中八九玩具にされて壊れるまで使われる可能性が高い。
……やはり反乱を起こすのが最良の選択かもしれないな。とは言え俺に出来る事はほとんどない。誰を味方に出来るのか?誰なら信頼して話を持ち掛けられるのか?そんなものは俺には分からない。一歩間違えれば売られる可能性だってあるしな。
エイザに頼むしかないが彼女は果たして俺のこの提案を受け入れてくれるだろうか?鼻で笑われるだろうか?それとも売られて終わるだろうか?……ここで考えても仕方ないな。
「エイザ、少しいいか?」
「ん?勿論いいぞ」
「お前から見て信用できる人物は誰だ?」
「うーん、それはどういう意味と意図で言っているんだ?」
信頼していない、というより俺が何をしたいのか分からないと言ったところか。だがそれも仕方のない事だ。誰だってこんな小僧の思惑なんて察するのは難しいだろうからな。
「簡単な話だ。俺がやろうとしている事は反乱だ。反乱というものは常に危険がつきものだ。もし、反乱に加わった者がうっかり第三者に話してしまったり、裏切る可能性だって否定は出来ないだろう?」
「確かにその通りだ。つまり、お前の願いに最後まで付き合ってくれるような奴って事だな」
「違う。それは違う」
エイザの言葉を俺は否定する。……自分でも不思議な事だが俺はあふれ出る感情のままに話していた。
「これは俺がやりたいからしようとしているわけではない。全ての亜人が、人間に虐げられた者達が自分たちの手でつかみ取る為に行うものだ。だが、そんな願いを本気で思っている奴なんていない。俺が言いたいのは俺を裏切らない者ではない。未来のためなら命を懸けて共に戦ってくれるような奴という事だ」
「……なるほど、ね。そういう事なら早速一人紹介しよう。恐らく俺が知っている奴の中で最も帝国に恨みを持ち、反乱を起こしてやろうと考えている奴さ」
「それは誰だ?」
俺がそう問えばエイザは何処か面白げに笑みを浮かべながら言った。
「そいつの名はアイルゼン。かつて帝国に滅ぼされたドワーフの国の王族の最後の生き残りさ」




