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儚国の復讐者《デリーター》  作者: クマだクマお
儚国の勇者
13/13

美慈麗妃

 日が暮れて城に戻る時間になった。

 リオとエリアスは手をつなぎポラリス城へ戻ろうとしていた。


 時計塔の展望台から階段で下に降りた時は、子供たちに散々からかわれる事になった。

 だがリオにとって久しぶりににぎやかで幸せな時間だった。


「リオ様…あの時計台にいる子供たちは、皆親を戦争で亡くした孤児達です。現在の緊急事態下では優先順位が低い子達なんです…」

 エリアスは心苦しそうにリオに説明する。


「だから有事の際に、私はあの子達を助けに行きます。例えそれで死ぬとしても本望です。全ての民を守るのが王女としての使命ですから。」

 エリアスはにこやかに微笑みかけた。


「安心しろよ。俺が全員守るから。ジンクとも約束したしな。」

 リオは勇者として自分を守ってくれた戦友の事を心に浮かべる。


「メルク家のジンクですか。彼はいつもポラリス城で鍛錬をしていましたね…遊びに誘っても、『騎士として民を守る為』と言っていつも断られていましたね…」

 エリアスはジンクを思い出し涙を浮かべた。


「立派な勇者だったよ…だから俺もあいつみたいな立派な騎士になる。お前と民を護ってみせる。だから応援してくれ!!」

 リオは真剣な目でエリアスに宣言した。


 話に夢中になるうちに、いつの間にか裏通りに入っていたようだ。普段より暗めの路地裏に入ってしまった。


-やばい…王女を少し危険なところに連れて来てしまった。

 リオが表通りに戻ろうとすると、何やら鈍器で何かを殴る音が聞こえた。それと同時に呻き声が聞こえた。


「様子を見て来る。エリアスは表通りにいてくれ。」

 そう言ってリオは音のする方角へと走り出す。



「てめぇ、兄貴にぶつかって服を汚しやがって!!金を出しやがれぇ。」

 3人のチンピラがうずくまる男を蹴りつけ、恐喝していた。


「うぅぅ」

 うずくまる男は声が出せないようだった。


 リオはチンピラを仲裁する為に、声をかける。

「止めてやれ。1人の人間に3人で寄ってたかっては卑怯だぞ!!」


「あぁん?てめぇガキの分際で何をほざいてやがる!!」

男は煙幕玉を地面に投げて、リオの視界を遮断する。日が暮れ暗闇になった為、煙幕を使った事で更に視界が悪くなる。


 チンピラの1人がリオに殴りつけようとした時だった。リオは完全に油断していた為、両手で顔を覆いガードしようとする。


<バキッ>


 リオを殴ろうとしたチンピラが殴られて吹き飛ばされた。


-えっ

 リオは驚いた。チンピラを殴り飛ばしたのはエリアス姫だった。


「よくもリオ様を…あなた方をポラリスの僻地に一族ごと吹き飛ばして差し上げましょうか?」

 暗闇で良く顔が見えないが、エリアスはチンピラ達に屈託のない笑顔を浮かべている。


-あ、これはエリアスが完全にブチ切れている…

 エリアスは怒るにつれて、顔が笑顔になっていく。完全に切れた際には天使の様な笑顔を浮かべる為、笑っているか怒っているかは殺気で判断する必要がある。


 しかしチンピラは煙幕を使っている為に、油断しているのかエリアスに向かって殴りかかって来た。


〈シュッ〉


 エリアスはリオの視界から消えた。次の瞬間、チンピラ2人はエリアスのパンチにより倒されていた。


 エリアスはポラリスで一番の徒手空拳の使い手である。近接戦は彼女の十八番(おはこ)である。相手の呼吸、足音、視線から相手の行動を予知出来る達人である。


 だからこそ煙幕を使ったチンピラごときが彼女に勝てる訳がない。


「次リオ様に怪我をさせようとしたら…」

「コロス」

 エリアスは小さな声で呟いた。


「大丈夫ですか?」

 エリアスとリオは男に手を差し伸べた。男はその手を取り、立ち上がる。


 男は白髪でみっともない服装をしていたが、顔立ちは整っておりどこか品を感じさせる不思議な人間だった。

「いやァ、ありがとうネェ…危うく見知らぬ土地で死ぬところでしたヨォ。」

 男はポラリスの出身では無いのか、どこか語尾がおかしかった。


「お怪我はございませんか?もし怪我をされているなら治療を…」

 エリアスは心配そうに男に声を掛けた。


「大丈夫デスよぉ。それに今日はやる事がアルので、明日以降チリョウをシマスネェ。」


-さっきまでうずくまっていたのに、今は大丈夫そうにヘラヘラしてる。

 リオは男が、さも怪我が無いように振舞っていたので、少し不思議に思った。


「なら良かった。あと今王都が少し危ないかもしれないから、避難の準備をしておいてくれよ。」

 リオは男にそう警告した。例えポラリスの民でなかろうと、リオにとっては守る対象だからだ。


「ハイ、ご親切にありがとうゴザイマス。親切な貴方がたも、気を付けてクダサイネェ。ハヤク安全な場所に逃げてクダサイネェ。」

 そう言って男は去っていった。


-不思議な人間だったな…ああいう奴もいるんだな…



 少し寄り道したがリオとエリアスはポラリス城に戻ろうと表通りに戻る。ポラリスの城下街では色々な家から夕飯の良い匂いがしてくる。


「お腹空いたな。早く城に戻ろう!!」

 そう言って、リオはエリアスをお姫様抱っこをして、ダッシュで城に戻る事にした。

 城に戻る頃には興奮によって、エリアスが気を失っていた。




 一方先程のチンピラは姫に殴られて気絶していた。

 しかしチンピラ達は、気を失いながらもがき始めた。

「うぅぅ…苦しいよお…」


 そうして彼らは誰にも気づかれる事無く息を引き取った。

 だが彼らは起き上がる。アンデッドとして…



 先程リオ達に助けられた男はご機嫌な様子で路地裏をふらふらと徘徊していた。

「ンフフフフフフフ…タノシミですネェ。今夜の宴が…」


 男の首元にはアクセサリーの勾玉が揺れていた。

 勾玉は月の光を反射させ、怪しく輝いていた…

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